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食事性炎症指数。ハイスコアで高い疼痛発生率

📖 文献情報 と 抄録和訳

食事の炎症可能性と痛みの発生率:高齢者におけるコホート研究

📕Carballo-Casla, Adrián, et al. "The inflammatory potential of diet and pain incidence: a cohort study in older adults." The Journals of Gerontology: Series A 78.2 (2023): 267-276. https://doi.org/10.1093/gerona/glac103
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar 🌲MORE⤴ >>> Not applicable

✅ 前提知識①:食事性炎症指数(dietary inflammatory index, DII)とは?
・食事性栄養素を摂った際に、炎症性サイトカインの血中濃度が変化する。
・その結果から慢性疾患の発病に関連する食物の役割を評価するために、2000以上の研究結果から開発された栄養素ごとの炎症指数(📕Shivappa, 2014 >>> doi.)

🌍 参考サイト >>> site.

✅  経験的食事性炎症指数(empirical dietary inflammatory index, EDII)とは?
・EDIIは事後法で、DIIが栄養素ごとの炎症指数であるのに対して、完全に食品群に基づくものである(📕Tabung et al, 2017 >>> doi.)
・EDIIの計算については関連記事を参照されたい。(📕Tabung et al., 2016 >>> doi.)

[背景・目的] その重要性にもかかわらず、痛みの予防に関するエビデンスは不十分である。食事がどのように炎症を制御するかについての知見が高まっていることを活用し、食事の炎症性ポテンシャルの3年間の変化と、その後3年間の疼痛発生率との関連性を検討した。

[方法] 2012年に60歳以上で痛みのない819人のデータを使用した(Spanish Seniors-ENRICA-1 cohortから抽出)。食事による炎症の可能性は、検証された食事履歴と2つの指標(食事性炎症指数(DII)と経験的食事性炎症指数(EDII))により推定された。痛みの発生頻度、重症度、発生部位数は、参加者を痛みなし、中程度の痛み、最高の痛みのいずれかに分類する尺度に統合された。

[結果] 食事がより炎症しやすい方向にシフトすることは、その後、最も高い痛みのリスク(DIIおよびEDIIの1標準偏差増加あたりの完全調整相対リスク比[95%信頼区間]=それぞれ1.45[1.16,1.80]および1.21[0.98,1.49])および中程度の痛み(0.99[0.75,1.31]および1.37[1.05,1.79])と関連していた。痛み尺度の3つの要素は同様の傾向を示し、最も一貫していたのは痛みの重症度であった(中程度から重度の痛み:DII = 1.39 [1.11,1.74]; EDII = 1.35 [1.08,1.70] )DIIが高くなると痛みの程度が高くなるという関連性は、運動量の少ない参加者においてのみ明らかになった(2.08 [1.53,2.83] vs 1.02 [0.76,1.37]; p-interaction = .002)

[結論] 食事の炎症性ポテンシャルの増加は、特に運動不足の参加者において、その後の数年間の疼痛発生率の上昇と関連していた。今後、高齢者を対象とした研究では、食事の炎症性を標的とした疼痛予防策の有効性を評価する必要がある。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

「夜、ドカ食いしちゃうんだよね」
「今日、ストレス大きかったからめっちゃ食べちゃお!」

・・・。
この選択が、身体に良くないことはわかっている。
体重過多、睡眠の質低下、糖尿病リスク増大…。
分かっていても、選んでしまう。
僕たちは、なぜこんな風に非合理な選択をしてしまうのだろうか?

今回の研究も、そんな非合理な選択の1つ「炎症性ポテンシャルの高い食品」と疼痛の関係を明らかにした。
炎症性スコアが高い食品をとると、疼痛発生率が高まるという。
まあ、体内で炎症が起こりやすい食品な訳なので、納得できる結果だ。
だが、繰り返しになるが、僕たちはなぜ、こんな選択をしてしまうのだろう。

その答えの1つが『進化的ミスマッチ』だ。

現代の人間に備わっている代謝系システムの多くは、数万年生き抜いてきた人間の歴史によって構築されてきた。
その数万年の多くの期間、人間は飢餓状態と戦ってきたわけだ。
だからこそ、目の前に炭水化物や、脂質といったエネルギー方法な食材が置かれれば、『食えるだけ食っとけ』と本能は強く指令を出す。
つまり、目の前のミクロな障害(微小な炎症反応など)を差し置いて、重大な生命の危機(死)を避けようとする。
その命令が、強すぎるのだと思う(強くなければ死ぬわけなので当然)。
だが、現代は状況が変わりすぎている、とくに産業革命以降。
こと日本では、飢餓状態に陥る状況は激減し、むしろもの余りの時代だ。
その時代に、古代からの生存戦略である本能からの命令を聞いた結果、死のリスク回避という最大の目的を果たさない(果たす必要性がない)まま、ミクロな障害だけが残されることになる。
これが、進化的ミスマッチだ。

この仕組みをよく理解した上で、本能を諭すように、炎症性ポテンシャルの低い食材に手を伸ばしたい。
・・・。自信はない。
この抄読内容を書き上げた昨日だって、ドカ食いしてるし涙。

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