悠游自適

一つの場所にとどまれない性格。旅が好き。

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一つの場所にとどまれない性格。旅が好き。

マガジン

  • 猫のつぶやき

    日比是精進…

  • 創作物語集

    短い物語なのですぐ読めます。

  • Japanese Classics into English

    Those were made for you to introduce to Japanese Classic musics. I think those musics are worth known in the world. That's the porpose of this. Any request or any comment welcome. 日本の歌謡曲を世界の人に知ってもらうために英訳をしています。私は最近聞き始めた若輩者ですが、それでもとても奥が深く、すぐに好きになりました。 拙い訳ですが、温かく見守ってもらえると幸いです。

  • 日記

    日記風。

  • 自分のための備忘録

    古今東西の名作からセレクトしました。 思想・寓話が多め。 ※文章はすべて青空文庫からの転載であり、著作権が切れたものに限定しています。 青空文庫へのリンクはこちら↓↓↓ www.aozora.gr.jp

記事一覧

「自由」を軽く見るな【エッセイ】

安倍元総理が凶弾に倒れたのは悲惨極まりないことであった。亡くなった人物を悼むことはその他の諸問題とは切り離して考えるべきだという立場の元、心よりお悔やみ申し上げ…

悠游自適
2年前
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二匹の豚と猪【小説】

♢  豚が猪に向って自慢をしました。 「私ぐらい結構な身分はない。食べる事から寝る事まですっかり人間に世話をして貰って、御馳走はイヤと言う程たべるからこんなにふ…

悠游自適
2年前
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時代遅れ【小説】

♢   懐中時計が箪笥の向う側へ落ちて一人でチクタクと動いておりました。  鼠が見つけて笑いました。 「馬鹿だなあ。誰も見る者はないのに、何だって動いているんだえ」…

悠游自適
2年前

人の相性【小説】

♢  泥棒がケチンボの家へ入ってピストルを見せて、お金を出せと言いました。ケチンボは、 「ただお金を出すのはいやだ。その短銃ピストルを売ってくれるなら千円で買おう…

悠游自適
2年前

【English lyrics×Japanese Classics】Naomi Chiaki『喝采(kassai)』(1972)

[Intro] [Verse] いつものように幕が開き curtain opened as always  恋の歌うたうわたしに to me singing a love song 届いた報らせは 黒いふちどりがありまし…

悠游自適
2年前
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#10(メンタルケアについての雑文)

to me 心のことで who hurt yourself 悩んでる due to mental illnesses 自分へ please don't hesitate どうか迷わずに to take the therapy 治療を受けてほしい goin…

悠游自適
2年前
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自分のための備忘録⑬ー原民喜『気絶人形』ー

 くるくるくるくる、ぐるぐるぐるぐる、そのお人形はさっきから眼がまわって気分がわるくなっているのでした。ぐるぐるぐるぐる、くるくるくるくる、そのお人形のセルロイ…

悠游自適
2年前

#9(カウンセリング)

『なんかこう…カッとなんてしまうんですよね。自分が否定されたような気 がするというか…自分は被害者なんだ!っていう気持ちが根底にあるからな んでしょうか。被害者…

悠游自適
2年前
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#8(初診)

「初めてのご来院ですね。」 「はい。」 「現在の状況を、言える範囲でいいので教えてください。」 「はい。えっとー。今休職していて…一人暮らしなんですけど。週に何…

悠游自適
2年前
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自分のための備忘録⑫ー竹内浩三『人生』ー

映画について むつかしいもの。この上もなくむつかしいもの。映画。こんなにむつかしいとは知らなんだ。知らなんだ。 金について あればあるほどいい。又、なければそれ…

悠游自適
2年前
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自分のための備忘録⑪ー芥川龍之介『英雄の器』ー

「何しろ項羽こううと云う男は、英雄の器うつわじゃないですな。」  漢かんの大将呂馬通りょばつうは、ただでさえ長い顔を、一層長くしながら、疎まばらな髭ひげを撫でて…

悠游自適
2年前
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#7(SF)

恐竜のいる時代、私たちの先祖は現代でいうところのネズミのようだったと聞いたことがある。 地上にいる生物の中でいうまでもなく、貧弱だったと。 上位に君臨する恐竜た…

悠游自適
2年前
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自分のための備忘録⑩ー森鴎外『文芸の主義』ー

 芸術に主義というものは本来ないと思う。芸術そのものが一の大なる主義である。  それを傍から見て、個々別々の主義があるように思うに過ぎない。  Emile Zola(エミー…

悠游自適
2年前
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自分のための備忘録⑨ー古川緑波『ああ東京は食い倒れ』ー

 戦争に負けてから、もう十年になる。戦前と戦後を比較してみると、世相色々と変化の跡があるが、食いものについて考えてみても、随分変った。  ちょいと気がつかないよ…

悠游自適
2年前
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自分のための備忘録⑧ー芥川龍之介『或社会主義者』ー

 彼は若い社会主義者だつた。或小官吏だつた彼の父はそのためにかれを勘当かんだうしようとした。が、彼は屈しなかつた。それは彼の情熱が烈しかつたためでもあり、又一つ…

悠游自適
2年前
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自分のための備忘録⑦ー太宰治『朝』ー

私は遊ぶ事が何よりも好きなので、家で仕事をしていながらも、友あり遠方より来るのをいつもひそかに心待ちにしている状態で、玄関が、がらっとあくと眉まゆをひそめ、口を…

悠游自適
2年前
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「自由」を軽く見るな【エッセイ】

「自由」を軽く見るな【エッセイ】

安倍元総理が凶弾に倒れたのは悲惨極まりないことであった。亡くなった人物を悼むことはその他の諸問題とは切り離して考えるべきだという立場の元、心よりお悔やみ申し上げる。

さて、安倍元総理が倒れたのは凶弾ではなく、”教団”であったのかもしれない。旧統一教会との関係が明るみに出、一部の国会議員達は慌てふためいて対応に追われている。これは立派な政治腐敗だ。長年旧統一教会の霊感商法問題に取り組んできた紀藤弁

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二匹の豚と猪【小説】

二匹の豚と猪【小説】



 豚が猪に向って自慢をしました。
「私ぐらい結構な身分はない。食べる事から寝る事まですっかり人間に世話をして貰って、御馳走はイヤと言う程たべるからこんなにふとっている。ひとと喧嘩をしなくてもいいから牙なんぞは入り用がない。私とお前さんとは親類だそうだが、おなじ親類でもこんなに身分が違うものか」
 猪はこれを聞くと笑いました。
「人間と言うものはただでいつまでも御馳走を食わせて置くような親切な

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時代遅れ【小説】

時代遅れ【小説】


 
懐中時計が箪笥の向う側へ落ちて一人でチクタクと動いておりました。
 鼠が見つけて笑いました。
「馬鹿だなあ。誰も見る者はないのに、何だって動いているんだえ」
「人の見ない時でも動いているから、いつ見られても役に立つのさ」
 と懐中時計は答えました。
「人の見ない時だけか、又は人が見ている時だけに働いているものはどちらも泥棒だよ」
 鼠は恥かしくなってコソコソと逃げて行きました。



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人の相性【小説】

人の相性【小説】


 泥棒がケチンボの家へ入ってピストルを見せて、お金を出せと言いました。ケチンボは、
「ただお金を出すのはいやだ。その短銃ピストルを売ってくれるなら千円で買おう。お前は私からお金さえ貰えばそんなピストルは要らないだろう」
 泥棒は考えておりましたが、とうとうそのピストルを千円でケチンボに売りました。ケチンボは泥棒からピストルを受け取ると、すぐにも泥棒を撃ちそうにしながら、
「さあ、そのお金ばかり

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【English lyrics×Japanese Classics】Naomi Chiaki『喝采(kassai)』(1972)

【English lyrics×Japanese Classics】Naomi Chiaki『喝采(kassai)』(1972)

[Intro]

[Verse]

いつものように幕が開き
curtain opened as always 

恋の歌うたうわたしに
to me singing a love song

届いた報らせは 黒いふちどりがありました
a letter delivered telling your death

[Chorus]

あれは三年前 止めるアナタ駅に残し
that's 3 years ag

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#10(メンタルケアについての雑文)

#10(メンタルケアについての雑文)

to me
心のことで

who hurt yourself
悩んでる

due to mental illnesses
自分へ

please don't hesitate
どうか迷わずに

to take the therapy
治療を受けてほしい

going to hospital
病院に行くことは

is your right
権利だ

your right
それも

to live l

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自分のための備忘録⑬ー原民喜『気絶人形』ー

自分のための備忘録⑬ー原民喜『気絶人形』ー

 くるくるくるくる、ぐるぐるぐるぐる、そのお人形はさっきから眼がまわって気分がわるくなっているのでした。ぐるぐるぐるぐる、くるくるくるくる、そのお人形のセルロイドのほおは真青になり、眼は美しくふるえています。みんなが、べちゃくちゃ、べちゃくちゃ、すぐ耳もとでしゃべりつづけているのです。暗いボール箱から出してもらい、薄い紙の目かくしをはずしてもらい、ショーウインドに出して並べてもらったのでみんな大は

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#9(カウンセリング)

#9(カウンセリング)

『なんかこう…カッとなんてしまうんですよね。自分が否定されたような気

がするというか…自分は被害者なんだ!っていう気持ちが根底にあるからな

んでしょうか。被害者意識という言葉聞いたことはあったんですが、まさか

体感することになるとは。』

『自分でもどうしようもないんですね。』

『そうなんです。カッとなってしまうんです。自分ではいたって普通の、今

まで通りの思考回路のつもりなんですけど…

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#8(初診)

「初めてのご来院ですね。」

「はい。」

「現在の状況を、言える範囲でいいので教えてください。」

「はい。えっとー。今休職していて…一人暮らしなんですけど。週に何回か日雇いのバイトをしているのと、貯金があるのでそれで生活しています。夜が眠りづらくて、バイトがない日は昼夜逆転というか、朝の6時まで起きていてそれから寝て17時に起きたりとか、そういう生活をしています。」

「そうなんですね。」

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自分のための備忘録⑫ー竹内浩三『人生』ー

自分のための備忘録⑫ー竹内浩三『人生』ー

映画について

むつかしいもの。この上もなくむつかしいもの。映画。こんなにむつかしいとは知らなんだ。知らなんだ。

金について

あればあるほどいい。又、なければそれでもいい。

女について

女のために死ぬ人もいる。そして、僕などその人によくやったと言いたいらしい。

酒について

四次元の空間を創造することができるのみもの。

戦争について

僕だって、戦争へ行けば忠義をつくすだろう。僕の心臓

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自分のための備忘録⑪ー芥川龍之介『英雄の器』ー

自分のための備忘録⑪ー芥川龍之介『英雄の器』ー

「何しろ項羽こううと云う男は、英雄の器うつわじゃないですな。」
 漢かんの大将呂馬通りょばつうは、ただでさえ長い顔を、一層長くしながら、疎まばらな髭ひげを撫でて、こう云った。彼の顔のまわりには、十人あまりの顔が、皆まん中に置いた燈火ともしびの光をうけて、赤く幕営の夜の中にうき上っている。その顔がまた、どれもいつになく微笑を浮べているのは、西楚せいその覇王はおうの首をあげた今日の勝戦かちいくさの喜び

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#7(SF)

#7(SF)

恐竜のいる時代、私たちの先祖は現代でいうところのネズミのようだったと聞いたことがある。

地上にいる生物の中でいうまでもなく、貧弱だったと。

上位に君臨する恐竜たちの陰でひそひそと暮らしていたのだろう。

だがその恐竜が絶滅し、ぽっかりあいたその座に我々が座ることになった。

「次の時代に活躍するものは常に前の時代パッとしなかったやつ」

という話を聞いたことがある。

含蓄ある言葉だ。

次の

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自分のための備忘録⑩ー森鴎外『文芸の主義』ー

自分のための備忘録⑩ー森鴎外『文芸の主義』ー

 芸術に主義というものは本来ないと思う。芸術そのものが一の大なる主義である。
 それを傍から見て、個々別々の主義があるように思うに過ぎない。
 Emile Zola(エミール・ゾラ)なんぞは自家の芸術に自然主義という名をつけていた。そうして書いているうちに、しだいにその主義というものに縛せられてしまって終に出した二、三部の作は、すこぶる窮屈なものになっていた。
 近ごろイタリヤの Fogazzar

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自分のための備忘録⑨ー古川緑波『ああ東京は食い倒れ』ー

自分のための備忘録⑨ー古川緑波『ああ東京は食い倒れ』ー

 戦争に負けてから、もう十年になる。戦前と戦後を比較してみると、世相色々と変化の跡があるが、食いものについて考えてみても、随分変った。
 ちょいと気がつかないようなことで、よく見ると変っているのが、色々ある。
 先ず、戦後はじめて、東京に出来た店に、ギョーザ屋がある。
 以下、話は、東京中心であるから、そのつもりで、きいていただきたい。
 ギョーザ屋とは、餃子(正しくは、鍋貼餃子)を食わせる店。む

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自分のための備忘録⑧ー芥川龍之介『或社会主義者』ー

自分のための備忘録⑧ー芥川龍之介『或社会主義者』ー

 彼は若い社会主義者だつた。或小官吏だつた彼の父はそのためにかれを勘当かんだうしようとした。が、彼は屈しなかつた。それは彼の情熱が烈しかつたためでもあり、又一つには彼の友だちが彼を激励したためでもあつた。
 彼等は或団体をつくり、十ペエジばかりのパンフレツトを出したり、演説会を開いたりしてゐた。彼も勿論彼等の会合へ絶えず顔を出した上、時々そのパンフレツトへ彼の論文を発表した。彼の論文は彼等以外に誰

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自分のための備忘録⑦ー太宰治『朝』ー

自分のための備忘録⑦ー太宰治『朝』ー

私は遊ぶ事が何よりも好きなので、家で仕事をしていながらも、友あり遠方より来るのをいつもひそかに心待ちにしている状態で、玄関が、がらっとあくと眉まゆをひそめ、口をゆがめて、けれども実は胸をおどらせ、書きかけの原稿用紙をさっそく取りかたづけて、その客を迎える。
「あ、これは、お仕事中ですね。」
「いや、なに。」
 そうしてその客と一緒に遊びに出る。
 けれども、それではいつまでも何も仕事が出来ないので

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