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土竜のひとりごと

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エッセイです。日々考えること、共有したい笑い話、生徒へのメッセージなどを書き綴っています。
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#身体

もやもや考える

もやもや考える

バイク飛ばす国道は雨すぶ濡れの顔が体が闇にめり込む

定年前まで980ccのバイクであちこち走った。何年か前からは日本一周一筆書きを目指し、距離を稼ぐために朝から夜まで海岸線をひたすら走った。いつも片方は海、片方は山、どんなに有名な観光地があっても基本は立ち寄らないみたいな走り方で。
冒頭の短歌はその頃の歌。暗い夜の雨の中、海岸沿いの道を飛ばす。その時の、まるで闇の中に身体が減り込んでいくような感

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陰翳礼讃:目を閉じてみたい

陰翳礼讃:目を閉じてみたい

『陰翳礼讃』は名著である。夏目漱石の「現代日本の開化」もそうだが、明治以降、急速に西洋文物が流入する状況にあって、日本人がその模倣にあくせくし、独自の文化文明を失いつつあることに警鐘を鳴らしている。
漆器(蒔絵)、日本の建築、女性美などさまざまな領域に関して具体的に筆が及ぶ中で、その中心にあるのは「陰翳の喪失」である。翳り、薄明かりの中に生活があってそこに意味や美、奥行きを見出してきた日本的なあり

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脱身体

脱身体

授業で黒崎正男氏の評論を読んでいる。ざっとこんな内容である。

身体は現代にとって大切なテーマであるゆえに高校の国語の授業においても大事なテーマとなっている。それは哲学者が身体について書く評論が教科書や入試問題に採り上げられるからだが、一方で、彼ら彼女らがこれから直面するAIの時代は、また別の意味で「身体」について考えてみなければならない時代でもある。

例えば授業は、「腹を割って話す」「恋に身を

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てざわり:Re

てざわり:Re

手触りの話がしたい。

例えば「お金」。
キャッシュレス決済がスマホという「道具」を利用して一気に進もうとしている。あるいは、仮想通貨が国という単位を飛び越えて市場経済の中で主役に躍り出るかに見える。

昔は例えば、給料は現金支給だった。僕が30歳半ばくらいまでは。給料を袋に入れる事務は神経のいる大変な仕事だっただろうが、もらう方は嬉しかった。給料袋に入れられたお札の厚みを自分の「労働の対価」とし

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身体は人間の特権か?障害か?

身体は人間の特権か?障害か?

日曜日にふとテレビをつけると報道番組(日テレのバンキシャ)で「分身ロボットカフェDAWN」が採り上げられていて、その内容に衝撃を受けた。

「分身ロボットカフェ」とは、株式会社オリィ研究所が主宰・運営する、ALSなどの難病や重度障害で外出困難な人々が、分身ロボット「OriHime」「OriHime-D」を遠隔操作しサービススタッフとして働く実験カフェです。私たちはこのカフェの開催によって「動けない

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