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短歌・詩・俳句

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短歌・詩・猫を中心とした川柳などを掲載しています。
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2021年12月の記事一覧

直角ばあさん

直角ばあさん

学生のとき
合宿で泊まった民宿に
おばあさんがいた。
人のいい
世話好きな、
いつもにこにこしている
おばあさんだった。

腰が90度に曲がっていたので
仲間のひとりが
直角ばあさん
と、おばあさんを綽名した。
・・親しみを込めて。

直角ばあさん

昔は今と比べて
栄養状態も悪かったから
そう言われて
思い返してみると
身近にたくさん
いたようにも思う。

僕のおばあちゃんも
直角ばあさん
だっ

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焚き火

焚き火

もう20年も前の話である。

ある時、新しいメールアドレスを作った。脳に余裕のない僕は、たいてい自分のあだ名である「土竜」をアドレスに使うのだが、同じように脳に余裕のない人はたくさんいるようで、土竜も、土竜くんも、土竜さんも、土竜ちゃんも、土竜はんも、みんな既に使われてしまっていて、使えない。数字と組み合わせればいいのだが、それも味気ないので、半分いい加減に「土竜が海を見ている」と打ち込んだら、さ

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ひそかなる燦

ひそかなる燦

身のうちに白銀の蛇棲みしより生きゐることはひそかなる燦

「燦」とは、「燦々と」「燦然と」などと使われる、光り輝くこと。
自分の身に「白銀の蛇」という、不気味?不可思議?神秘?なものが棲むようになってから、生きていることは「燦・きらめき」だという。
その繋がり?飛躍?は何だろうと、自分のことながら自分でもよくわからないまま、できてしまったというような歌。
そんなこともあっていいか、というような歌。

ペップトーク

ペップトーク

風という風をあつめてみたくなり海への丘を駆けのぼりゆく

プラスの衝動みたいなものも、日々の中で、わけもわからないまま沸き起こってくることがあります。

関係ないかもしれませんが、何年か前、学校でペップトークについての講演があり、受験勉強でげんなりしている生徒たちがみんな元気をもらったことがありました。簡単に言えば、ポジティブな言葉を自分や人に語りかけようという話でした。ご興味があれば、こちらをご

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迷子

迷子

こんなにも空が明るく青くてはどこにも僕の居る場所がない

家族と過ごすには
明るい場所がいいが
迷い疲れた時には
ごちゃごちゃした場所がいい
雑踏とか裏路地とか・・
かくれんぼの
鬼に見つからないように
ひとりでいられる
隙間や物陰
そんなところで
迷子になっていたい・・
そんな日もある

夕暮れは深く傷ついている街の淋しき路地に紛れ込みゆく

押し潰される瞬間

押し潰される瞬間

おほはれておしつぶされる瞬間の僕の悲鳴を聞いた気がする

子どもの頃、よく同じ夢を見ました。

ひとつは、何故か銃を持った何人かの男たちに追われて、海岸の岩の陰で見つからないように必死に身をかがめている夢。

もうひとつは、これも洞穴のような中にいて、何故か大きな球?岩?のようなものが後ろから転がってきて、今にも潰されそうになるところを必死で逃げている夢。

少年の夢としてはちょっと悲しすぎる?

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団栗との対話

団栗との対話

「もう楽に生きていいよ」と どんぐりとまつぼっくりに言はれてゐたり

これは多分、前に紹介したことのある無気力短歌だが、こんなふうに短歌には、会話や台詞がそのまま短歌に採り入れられる短歌があって、例えば、俵万智の

この味がいいねと君が言ったから七月六日はサラダ記念日

などは、その典型かもしれない。

真似して、すこし遊んでみると、

男は所詮ATMってことなのさ そう団栗に言いていたりき

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第32話:命の摂理

第32話:命の摂理

退職者を祝う宴のたけなわ。

退職者の一人である老教師が
「皆さん、聞いて下さい」
と、突然席を立って大きな声で言った。

一同、静まりそちらに注目すると、

皆さん、私は長年かかって人間が癌に冒される仕組みを解明しました。
それをご披露したいと思います。

そう、老教師は言った。

物理を専門とする教師だった。
どちらかと言えば目立つところのない、
風変わりなところのある人で、
それゆえ一部の若

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