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【スタートアップの組織戦略】納得度のある評価制度に必要なのは「透明性」「多角的」「柔軟さ」

 こんにちは、金子健人です。
 今回のnoteでは「スタートアップにおける評価制度」について考えたいと思います。

 正直、組織経営において最もボトルネックになりやすいのは、僕は人事・評価制度だと思っています!(なので、toridoriでも真っ先にそこの課題解決に着手したし、今も関わり続けています)

 働くメンバーと経営陣が一体となり、一つの目標に対してモチベーション高く走れる環境を作ることが出来るのが理想です。が、そうはいかないのが現実です。
 メンバーのモチベーションに繋がるような評価には、様々なプロセスがあります。
 例えば、目標設定から日々のコミュニケーション、適切なフィードバック、評価制度…どのプロセスをおろそかにしても、メンバーは適切に評価されていないと感じてしまうリスクがあるんじゃないでしょうか。
その中でも特に、評価制度は、成長や昇格にダイレクトに紐づく分、重視しないメンバーなんていないと思っています。
 だからこそ、評価される側(メンバーのことです)に納得してもらえる評価制度作りには本当にこだわるべきだし、toridoriでも、評価制度は常に「もっといい形はないのか?」を考えてこまめにアップデートしていっています。

ここから、僕が考える"評価される側が納得する"柔軟な評価制度の設計とその運用について、具体的な手法と事例を交えてお話していきます。


評価される側の納得度はなぜ大事なのか?

 企業が成長するために必要なバランス感覚として「トップダウンとボトムアップが適切に機能しているか」があります。
トップダウンに偏りすぎて経営陣の決定が一方的であれば、(その決定が仮に全社の最適解であっても)きっとメンバーの納得度はどんどん下がっていきますよね。僕がメンバーだったとしても不満を持つと思います。

 だからといってボトムアップでメンバーの意見ばかりを重視してしまうと、企業全体として効率が悪くなる場合が多いです。何故かというと、メンバーは業務上どうしても日々の短期的なタスクや自分の部署にフォーカスして物を見て考えることが多いため、一人ひとりの要望と全社最適は概ねアンマッチを起こすからです。

 このような課題に対して、”評価制度”は大きな役割を果たせると思っています。
属人的なジャッジメントではなく、全社の一人ひとりをフェアに見られる”評価制度”という明確な基準を経営陣が提示できれば、メンバーはその基準に対して努力の方向を間違えずに頑張れるし、結果としてついてくる評価にも納得できるはずなんです。

 とはいえ、人が人を評価するという構造上、「完璧な評価制度」を作るのはとても難しいです。
だからこそ、「評価される側の納得度をできる限り上げ続けること」に焦点を当てて評価制度を作り続けることが大事だと考えています。

評価される側が納得する評価制度の3つの要素

1. 評価の仕組みに"透明性"があるか

 "透明性"とは、評価基準を、メンバー誰もがわかるように見せることを指しています。透明性は、評価制度の納得度を高めるための基本です。

toridoriの場合、年に二回の半期評価を実施しているんですが、年に二回、必ずこの3つのステップを踏むことにしています。

①期初:「今期の評価の基準」を明示する(toridoriでは毎半期、評価基準を資料化して全メンバーに読んでもらうことにしています)

②期中:「どういうプロセスを踏めば評価される結果がついてくるか」を上長からメンバーに伝える

③期末:評価の結果だけではなく「評価基準に則って、この評価結果に至った理由」を丁寧にコミュニケーションする

この3つのステップにより、メンバーは自分がどのように評価されているのか理解しやすくなります。

 また、僕が関わるメンバーに対して常に言い続けているのが、「メンバー自身が、自分の仕事を透明性高くプレゼンできるスキルを身に着ければ、評価の納得度は更に高まる」ということです。
(よく誤解されがちなんですが)評価って経営陣からの一方的なジャッジではなくて、メンバーが自分の業務の実績をどうプレゼンするかが起点で、そこに評価がついてくるものですよね。

 だから、自分が納得できるような評価を得るためには、評価制度だけではなく、メンバーが自分の業務を透明性高く伝えて、評価する側(経営陣)に納得してもらおうとする姿勢も必要となると思います。
「去年より頑張ったので評価してほしい」と「去年と比べて◎%の実績を出せたから評価してほしい」だと、評価する側の納得度は全然違いますよね。

 評価制度の透明性、そしてメンバーの自己評価の透明性、両者の透明性を上げていくことで評価の納得度はさらに上がっていくと思います。

2. "多角的”な視点でのフィードバックがあるか

 (まだ未成熟なスタートアップやトップダウンの会社にはありがちなのですが…)社長一人の判断で自分の評価が決められているのではないか、とメンバーに思わせてしまうことは、評価の納得度を猛烈に下げる動きだと思います。
そうならないために、「たくさんの目線でフェアに評価を行う」というプロセスが重要になってきます。これを僕は"多角的視点”と呼んでいます。

 toridoriの評価制度にも、多角的視点を担保するため、四つの視点での評価を制度の流れに取り入れています。

①メンバーによる自己評価

②メンバーの同僚によるピアレビュー

③メンバー直属の上長評価

④経営陣を中心とした評価委員会による最終評価

 ピアレビューとは、同僚や部下など「直接一緒に仕事をする仲間」がメンバーを評価する制度です。
勿論、メンバー本人には誰がピアレビューを担当したかは開示されませんので、心理的安全性を保ちながら、フェアなコメントがもらえる制度になっていると思います。
ピアレビューでは、メンバーの自己評価が果たして客観的に見ても正しい物なのか?本人が気づいていない評価すべき点や今後の改善点について、忌憚なく書いてもらっています。

 4つの多角的な視点で評価を行うことで、誰か一人の誤解や偏った感想が評価に大きな影響を与えることを防いでいます。

 何より、多角的視点でのフィードバックは、メンバー自身の自己理解と納得度を上げることにも役立ちます。
「自分がこう考えてやっていた仕事が、同僚から・上長から・会社からどう評価されたか」を各視点から丁寧に伝えられれば、仮にメンバーの自己評価と他者評価が乖離していたとしても、メンバーはちゃんと納得してくれるんですよね。
(逆にメンバーが納得してくれない時は、上長のフィードバックにおけるコミュニケーションが適切ではない場合が多いです)
また、自己評価と他者評価の乖離を埋めようと頑張ってくれれば、結果的にメンバーの成長にも寄与します。

3. 評価基準に"柔軟さ"があるか

 組織には様々な役割・社歴のメンバーが存在する以上、全員を完全に同じ基準で評価することは不可能です。
営業のような売り上げ達成でエンジニアを評価することはできませんし、入社したての新人と事業部長が同じ軸で評価されるのはナンセンスです。
だからこそ、評価基準はフェアさと"柔軟さ”を兼ね備えたものであるべきだと思っています。

 toridoriの評価制度には、3つの軸があります。

所属部署の目標に対する評価
個人で決める目標に対する評価
→個人の意思で決める目標を最大3つまで設定できます。
基本的には部署の目標をブレークダウンして作っていくのが前提ですが、個人のWant(こう言う仕事もやってみたい)やキャリア構築・チーム貢献など、多彩な観点でスキルアップできるよう、メンバーと上長が話し合って決めていきます。
toridoriの行動指針(バリュー)観点での行動評価
→会社の掲げる4つの行動指針「 期待の先へ。」「 自分を更新しよう。」「コストもきちんと。」「部署を超えろ。」を意識して仕事をできたかを改めて自分に問い直して評価してもらいます。

上記のように、②の個人で決める目標では、キャリア形成やチームでの貢献度、スキルの成長などを柔軟に評価できる仕組みを構築しています。

 また、今期で言うと、「目標そのものの難易度」を加味した評価が出来るよう、評価制度のアップデートを行いました。
簡単な目標の達成率100%と難易度の高い目標の達成率100%を同じ100%として評価していては、メンバーの納得度は得られないですし、「簡単な目標で100%達成すればいいや」といメンバーの成長も止まります。
まだ導入したばかりではありますが、目標難易度も評価軸に入れたことで、メンバーがより高い難易度の目標を設定するようになったので、結果的にメンバーの成長角度も上がったように見えています。

 また、スタートアップであればあるほど、日々状況は変化し、目指すべきKPIや事業の方向性も変化しますよね。
半年前に立てた目標の通り走っていたら事業転換により全然的外れなことになっていた…というようなことがないよう、toridoriでは3か月に一度、中間評価と目標の調整を行い、ズレを出来る限り減らすようにしています。

 このように事業の状況や個人の意向に応じて、目標や評価基準をチューニングする柔軟さが、メンバーの納得度を生むと僕は考えています。

短期的KPI形成とFBが、長期的な評価の納得度を高める

 ここまで、「評価される側の納得度をあげる評価制度」に必要な3要素についてお話してきましたが、正直、半年という長い評価対象期間中、常に評価制度を意識して走り続けられるメンバーは体感としてはそう多くはないです。
そして、半期目標を忘れていた期間が長ければ長いほど、半期の評価の納得度は下がります。
そのような事態を避けるため、メンバーとの間で半期の目標を細分化した「クォーター目標」や「月目標」、「週目標」などの短期的なKPIを設定して、達成を意識し続けられる座組を組むことをおすすすします。

 短期KPIを設定し、毎週の定例や1on1で達成状況を確認し続けて、FBをするというサイクルを回すことで、メンバーは目標達成の成功体験を積みやすくなりますし、未達の場合も即時に改善点を把握し、行動に移せるようなマインドに変わっていきます。

 また、短期KPIの積み重ねの先に半期の評価があるという明確な道筋をメンバーに見せられるので、半期経過時点での評価への納得度が本当に変わります!


最後に:納得度のある評価をしてもらうために

 最後に、今までとは逆の視点で「評価をされる側(メンバー)自身が、納得度のある評価をしてもらえるために出来ること」について書こうと思います。

評価への納得度が低い場合、大枠としては要因は下記の3つになるな、と僕は経験上思っています。

①会社から求められている目標と、自分の努力の方向性が違う
②自分の実績を適切にプレゼンできていない
(③評価制度側に問題がある)

①②は、自分のやり方次第なので簡単に改善できる術があると思います。
「きちんと評価されているメンバーに"自分が何故評価されたか”をレクチャーしてもらう」です。

 評価されているメンバーには評価されるだけの理由があります
業務への向き合い方・努力の方向性は勿論、自己評価のシートの書き方や日々のプレゼンの方法も上手です。
そんな評価されるメンバーから評価の要因を素直に学んで、吸収して、自分の物にする。そういうプロセスを積み重ねた先に、納得度の高い評価が待っていると思います。

 だから僕は、toridoriのMVP受賞者に「自分が評価された理由を分析して、メンバーに伝えてほしい」と常々伝えています。
評価する側の目線で言えば、このような「評価されるための動き方を、皆に共有する土壌作り」も、メンバーの評価の納得度をあげる施策として有効だと考えています。


 以上、「スタートアップにおける評価制度」についてお話しました。
今回も、もし気に入って頂けたらSNSシェアやスキ!ボタンでの拡散などをいただければ大変嬉しいです!

 最初に書いた通り、僕は評価制度は組織形成において本当に要だと思っています。
組織の成長が滞ったりメンバーの士気が下がっていたら、まずは評価制度にメスを入れてみることをおすすめしたいです。

 個人的にも人事・評価制度のご相談を承っていますので、お気軽にメールやDMよりご相談ください!
Mail:k_kaneko@toridori.co.jp
Twitter(X):https://twitter.com/kaneko_knt

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