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なろう作家が分析! 「イリヤの空、UFOの夏」全力レビュー!

今回はこちらの動画のテキスト版になります。

こんにちは、染島です。
1冊の本の出会いで、自分は小説書きになりました。

というわけで、前回に引き続き今回は初の小説レビューです。
もう20年近く前の作品になりますが、自分にとってのバイブル「イリヤの空、UFOの夏」を紹介します。

ただし全てを紹介すると当然ネタバレになりますので、

①概要
②登場人物
③序章「第三種接近遭遇」あらすじ
④見どころ解説

以上4つのパートに分けての解説を極力ネタバレ成分なしでお届けします。
よろしくお願いします。

①概要

まずは作品の概要について簡単に説明していきますと、こちらは2000年代初頭に発売された全4巻のライトノベルです。

著者である秋山瑞人先生の中でも代表作の呼び声が高く、同時期に発表された新海誠監督「ほしのこえ」高橋しん先生「最終兵器彼女」と並んでゼロ年代の「三大セカイ系」の1つとも呼ばれている作品です。
(セカイ系については今後別の動画やnoteで触れていきたいと思います)

作品の内容としては、本来全く接点のなかった主人公の少年少女がひょんなことから出会い、そこから大きく物語が動く、という流れのいわゆる「ボーイ・ミーツ・ガール」の作品になります。
この後、まずは登場人物から詳しく紹介していきます。

②登場人物

最初に登場人物の紹介です。チョイ役を含めると大体20〜30人ほど登場しますが、今回はその中でも主役級の6人に絞って紹介していきます。

・浅羽直之(あさば なおゆき)
本作の主人公である園原中学校2年生の14歳。
後述する先輩、水前寺邦博が作った新聞部に所属しています。特筆すべき能力のない普通の男子中学生で、よく周囲に流されたり振り回されたりしています。特に、後述する新聞部部長の水前寺からは無茶振りされることが多いようですがまんざらでもないようで、彼の無茶振りを楽しんでいるふしがあります。
一方、作品中ではたまに流されない浅羽もいて、読んでて彼を見直すような一面もあります。

・伊里野加奈(いりや かな)
2学期の始まりとともに浅羽のクラスへやってきた転校生で、本作のメインヒロインです。浅羽と彼女が夏休み最終日のプールで出会うところから、物語は始まります。
近くの空軍基地に住んでいるらしいとか、病弱で沢山の薬を飲んでいるらしいとか、作中の序盤から何やら怪しげな情報が読み取れますが、それらの真相は不明なまま、物語は進んでいきます。謎だらけの少女です。

・水前寺邦博(すいぜんじ くにひろ)
将来の夢はCIAの完璧超人な中学3年生。
運動神経抜群で天才的な頭脳の持ち主ですが、重度のオカルトマニアなため、校内では知らない人のいない変人です。
彼は校内に非公式の新聞部を作り、主にオカルトネタの記事を発信していましたが、6/24のUFOの日を境に浅羽を巻き込んでUFOの調査へ乗り出します。
ある意味では物語最初のきっかけを作った人物です。

・須藤晶穂(すどう あきほ)
浅羽のクラスメイトでサブヒロイン。物語における貴重な常識人枠です。
そんな彼女も新聞部の所属ですが、オカルトに偏った方針には反対していて、よく水前寺と対立しています。
実は浅羽に好意を寄せているのですが、伝えられないし伝わっていないというもどかしい現状がありました。そんなこともあって、いきなり浅羽を頼ってきた伊里野に対しては当初ライバル視していましたが、物語中盤のある事件をきっかけにしてその関係性に変化が起こります。

・椎名真由美&榎本(しいな まゆみ & えのもと)
主に中学生の視点で物語が進む中、伊里野の秘密やUFOと軍の関係など「大人の事情」を知る人物として登場するのがこの2人です。
椎名は学校に臨時で赴任した養護教諭として、榎本は伊里野の保護者代わりとして浅羽の前に現れて動向を観察する、という役回りです。

③序章「第三種接近遭遇」あらすじ

登場人物をざっくり紹介しましたので、次は物語のプロローグとも言える第1章「第三種接近遭遇」のあらすじを凝縮して解説していきます。

まず舞台は現代日本ですが、実質的な軍隊として「自衛隊」ならぬ「自衛軍」が存在しているというパラレルワールドです。その自衛軍と米軍の活動拠点「園原基地」がある園原市という地方都市が主な舞台になります。

主人公は、園原市に住む中学生の浅羽直之。彼は夏休みの間、新聞部の活動として基地周辺で目撃されるUFOの張り込み調査を行なっていました。基地の裏山に籠っての調査だったため、裏山以外にはどこにも出かけず、さらに宿題も手つかずの状態でした。
そんな彼は調査を終えた8月31日夜、夏休み最後の思い出にと単独で学校のプールに忍び込む計画を立てます。

計画は成功しましたが、唯一の、しかし大きな誤算がありました。
そのプールには、先客がいました。
その先客こそが、伊里野加奈でした。

初めて出会った彼女とぎこちなくコミュニケーションを取る中で、どうも彼女は病弱らしいということ、それからプールに来てみたはいいが泳ぎ方を知らないということがわかってきます。
そこで、浅羽は伊里野に泳ぎ方を教える提案をしました。
すると、最初は泳ぐことに抵抗のあった伊里野ですが、コツを掴むとあっという間に上達していきました。

プールで楽しいひとときを過ごした2人でしたが、そこにある男がやってきます。男は榎本と名乗りました。
彼は自分を「伊里野の兄貴みたいなもの」だと言い、ここで伊里野とは一度別れてシーンが切り替わります。

間に全てのきっかけになった6月24日のエピソードが挟まれて、舞台は9月1日の学校に移ります。
何事もなく新学期が始まり、宿題をやっていなかったことを予想通り怒られた浅羽ですが、これで再びいつも通りの日常が始まったと思ったところで、担任から転校生が紹介されます。
その転校生は、昨日プールで出会った伊里野加奈でした。

以上が、第1章の流れです。
ここから、2人の物語が大きく動き出します。

④見どころ解説

それではここから先、物語のどこが面白いのか、極力ネタバレを避ける形で見所を解説しようと思います。

・濃密な夏の空気+少年のロマン
まず物語全体の魅力として、描写の中に流れる夏の空気と、少年の心をくすぐるようなロマンあふれる展開があります。

実はこの物語の時期、夏真っ盛りな7〜8月ではなく暦の上では秋の9〜10月頃になります。つまり、夏の終わりを描いた作品なんです。
しかし、この夏が終わっていく雰囲気が、徐々に暗い影を見せていく物語の展開とリンクしていきます。

そしてこの物語の展開がまた面白い。夏休みに似たワクワク感を蘇らせてくれます。
例えば、最初のプールに潜入する話もそうですが、他にも浅羽が伊里野とともに秘密のシェルターへ逃げ込む話や、伊里野と浅羽の初デートを追跡する水前寺の話など、とにかく「夏休みに男の子がやってみたい事」を濃縮したようなストーリーが続きます。
そして、そのピークが前半のクライマックスである「文化祭」です。

・前半クライマックス「文化祭」
この文化祭の話ですが、第2巻の3分の2を占めています。全4巻しかない中でかなりボリュームのあるエピソードなんですが、そのボリュームに合った面白さがあります。

文化祭の名前を「旭日祭」と言いますが、まずスケールがすごい。旭日祭は地域を上げての一大イベントとされており、言わば中学生が大学の文化祭、あるいはそれ以上の期間限定テーマパークを作り上げるようなレベルです。

だから生徒の力の入りようも尋常ではなく、毎日学校に泊まり込んで展示品を作成する描写は、読んでいるだけでワクワクしてきます。これまでも随所に散りばめられていた少年のロマンは、この文化祭の準備から終了までで一つの集大成を見せます。

こうして、最高に楽しい余韻を残して終わった2巻ですが、3巻から風向きが変わり始めます。

・文化祭からの急転直下な展開
3巻の前半は、まだ文化祭の名残がある愉快な展開が続きますが、3巻の中盤以降、ストーリーの雰囲気ががらりと変わります。
ヒロイン伊里野の秘密が明らかになり、これまでの登場人物が様々な形で次々と物語から退場し、4巻からは浅羽と伊里野、2人きりの孤軍奮闘になります。これがまた、夏の終わりと相まって切ないんです。

では、この2人きりの戦いとは何なのか?
彼らは何と戦ったのか?
ヒロイン伊里野の秘密とは何か?
そして、主人公2人の戦いの結末とは?

これらの答えは、是非本編を読んで確かめてみてください!

ちなみに、「イリヤの空、UFOの夏」は現在カクヨムで2巻の前半まで無料で読むことができます。
これで面白さを感じてくれた方は是非、2巻からでもいいので手に取ってもらえればと思います。



そして、その先には前半のクライマックス「旭日祭」が待っています。

今年の夏を、忘れられないUFOの夏にしましょう。

ではまた!



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