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#37 相手のリソースを深掘りする - 解決志向アプローチ -

ここでは、「解決志向アプローチ」の考え方について、一緒に学んでいきたいと思います。ここまで、問題を抱えて悩んでいる人が望む未来を描ける状態になるまでには3つのステップがあり、2つ目のステップまでみてきました。

ネガティブな感情を共感して、「そう感じるのは自分だけじゃない」と思えるようにノーマライズしていくというお話でしたね。今回は、ノーマライズした後の3つ目のステップについて一緒に学んでいきたいと思います。このステップを通して、ネガティブな問題についての話から、ポジティブな解決についての話へと移行していきます。それでは、一緒にみていきましょう。


相手のリソースを深掘りする

前回の記事でもみてきたように、従来の心理学の多くは相手のネガティブな感情を深掘りしていきますが、解決志向アプローチはその感情を深掘りしません。では、解決志向アプローチは何を深掘りしていくかというと、相手がもつ「リソース」を深掘りしていきます。リソースとは、その人が内外にもつプラスの要素で、「心の力」や「強み」「価値(大事にしているもの / 譲れないもの)」「社会的な繋がり」などを指します。人はないものよりも、あるものに目を向けていくと自己効力感が湧いてきます。(詳しくはこちらの記事をご覧ください)

困難な状況であるにもかかわらず、潰れずにいるその人の「強さ」に目を向けていき、自己効力感を高めていく。これがノーマライズした後のステップ3、「リソースに目を向ける」になります。

困難な状況の中、潰れずにいるその人の「心の力」を一緒に深掘りしていく

自分自身のリソースに目を向けるための質問

このステップ3では、相手が自分自身の内外のリソースに目を向けられるように、以下のような質問をしていきます。

  • そんな状況であるにもかかわらず、どうやって対処しているんですか?

  • 何がご自身を支えているんですか?

  • どのようにこれ以上、悪くならないようにしているんですか?

  • 普通だったら投げ出してもおかしくない中、ご自身を駆り立てているものは何なんですか?

  • 何を大事にされているんですか?

上述のようなリソースを掘り起こす質問を「共感 → ノーマライズ」の後に行うことで、ネガティブな問題の会話からポジティブな解決の会話へと移行していきます。因みに、このステップ2 → ステップ3へと移行する上で役立つ言葉が、以前の記事でもみた「にもかかわらず」です。(詳細はこちらをご覧ください)

「ノーマライズ」→「にもかかわらず」→「リソースに目を向けられるような質問」をしていくことで、(相手に気づかれないように?)問題に関するネガティブな会話から、本人の強さに目を向けたプラスの会話へと移行していきます。

基本的な3つのステップの流れ

ここで、少しステップ1~3までのプロセスをまとめてみましょう。

問題を抱えて悩んでいる相手に対して、まずはステップ1~2を通して、ネガティブな感情の強度を緩めていきます。

「それは悩みますよね」(← ①共感)
「同じ状況でしたら、誰でもそのように悩まれますよ」(← ②ノーマライズ)

相手のネガティブな感情が緩まってきたら、マイナスからプラスに移行するためのキラーワード「にもかかわらず」を投入します。

「そんな状況であるにもかかわらず、」

続けて、リソースに目を向けるための質問を投げかけます。(ステップ3)

「ご自身を支えているものは何なんですか?普通だったら、投げ出しちゃってもおかしくないと思うんですど」(←③相手のリソースに目を向ける)

実際はステップ1~3を行ったり来たりという感じですが、基本的にこのような流れで、問題に関するネガティブな会話から解決に向けてのポジティブな会話ができるように移行していきます。

3つのステップの後の流れ

ポジティブ心理学や解決志向アプローチは、未来志向で望む状態を描きながら解決の糸口を見つけていこうというアプローチですが、実際には、この3つのステップを行うことで、未来が描ける状態まで導いていきます。そして、この3つのステップが終わったら、いよいよ、望む未来について伺っていきます。(以下、こんな感じ)

「なるほどですね、強い責任感がご自身を支えているんですね」
「仲間に貢献したいという思いがご自身を駆り立てているんですね」

「因みに、理想的にはどうなっていたらいいんでしょうか?」
「この問題が無くなったとき、今とどんな違いが生まれるんでしょうか?」
「今、何を望まれているんでしょうか?」

このような感じで、問題についてではなく、解決された後の望む状態を一緒に描いていく会話へと移行していきます。(この後のプロセスはこちらの記事と次回の記事をご覧ください!)

ポジティブ心理学や解決志向アプローチは、その名称から、相手がたとえネガティブな状態でも、前向きな話をしていこうという盲目的な楽観主義に勘違いされますが、実際はそうではありませんし、また、マイナスなことを深掘りしていき、過去に起きたネガティブな出来事の被害者にさせるものでもありません。ネガティブな感情を認めながらも心の力に目を向けていき、望む未来を描いていける状態までエンパワーしていくアプローチになります。この点、よく誤解されやすいので、是非、ステップ1~3のプロセスを大切にしていただきたいなと思います。

さて、ここまで、3回に分けて、問題を抱えてネガティブな状態の相手が望む未来を描けるようになるまでの3つのステップをみてきました。次回の記事では望む未来の描き方について、もう少し詳しみていきたいと思います。(つづく)

【参考文献】
De Jong, P. and Berg, I. K. (2012). Interviewing for Solutions. 4nd Edition, Brooks Cole, Pacific Grove, CA, 152.

Warner, R. E. (2013). Solution-focused interviewing: Applying positive psychology: A manual for practitioners. University of Toronto Press.

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