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日々のエッセイ

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2019年から湖畔暮らし。自然、ヤギ、トリ、仕事、考え事の日々。
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2023年2月の記事一覧

百点満点ではなくとも

百点満点ではなくとも

湖畔に位置するこの町は、風がよく吹く。二つの湖に囲まれた大地にはサツマイモ畑が広がり、畑の砂がサラサラと風にさらわれていく。数日前に洗車したばかりのはずが、もう汚れてしまっている。

ここへやって来てもうすぐ三年半。長いような、短いような、そんな時間だった。家から少し歩けば夕日に照らされた湖岸へとたどり着き、誰もいない風景を独り占めできるのはささやかな贅沢だ。

しかし、来世でもこの町に住みたいで

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家族以外の家族みたいな存在

家族以外の家族みたいな存在

家族ではないのに、時としてまるで本当の家族のように感じる人たちがいる。

ここ数年は、自身の仕事や生活圏などライフスタイル全般の変化が大きかったことから、なんとなくその感情を忘れてしまっていた。むしろ他人は避けるような場面さえもあった。ある種人間不信みたいなものもあったような気がする。

しかし、つい先日久しぶりに「そうだった」と思い出す機会があった。すっかり忘れてしまっていた。

家族ではないけ

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どんどん一人になれる銭湯

どんどん一人になれる銭湯

結婚する前の会社員時代、私は銭湯に惹かれて東京の下町で一人暮らしをしていた。

今思えば若気の至りとしか言いようがないのだけど、その頃母とうまく折り合いがつかず、とにかく実家を早々に出ることを考えていた。現在は実家が大好きであるし、家を継ぐ気持ちもあるし、母ともすっかり仲良くなり関係良好だ。若さの棘とは恐ろしい。

一人暮らしを検討したとき、当時勤めていた会社から近い場所がいいと考えた。付き合って

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食欲みたいに湧く寂しさ

食欲みたいに湧く寂しさ

ふとした時に感じる寂しさは、ご飯を食べたくなったり、トイレに行きたくなったりするのと同じ生理現象であると最近は思っている。特別な理由がなくても勝手に湧く感情なのだ。

生まれた場所なのか、星のめぐりなのか分からないけれど、幼少期から寂しさを感じやすい体質だ。もちろん理由があることもあるけれど、特別な理由なしに「寂しいな」と思うことの方が多い。

学生時代や社会人になりたての頃はこの感情に随分と振り

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