菊地早秋

エッセイ書いてます│湖畔の古民家で夫、0歳、ヤギ、ニワトリと生活中。ふだんは夫婦経営の…

菊地早秋

エッセイ書いてます│湖畔の古民家で夫、0歳、ヤギ、ニワトリと生活中。ふだんは夫婦経営の小さなお宿のオーナーです(宅建士)。おはぎと桃が好物。「旅する日本語2018」大塚製薬賞、著書『ヤギと家族になる(Kindle)』

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    2019年から湖畔暮らし。自然、ヤギ、トリ、仕事、考え事の日々。

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ミモザの花束と春のお告げ

先日、近所で仲良くしてもらっている素敵なご夫妻から、ミモザの花束をいただいた。この土地へやってきてから、毎年のようにお裾分けしてもらっている。 ご自宅にミモザの木があるそうで、私もお邪魔した際に実物を見させてもらったことがある。それは立派な木で、両手を広げても全然足りないくらいの大きさだった。 ミモザは黄色くて小さな可憐な花と、細かい葉をいくつも付けているのが特徴。毎年ミモザをもらうまでは知らなかったが、ミモザは鮮度によって見た目が全然違う。木から切りたてのときは花が「ふ

    • 灯油ストウブの匂いと混沌と

      この2月は、個人事業の季節外れな繁忙期だった。文字どおり目が回る忙しさだった(この感じは3月初まで続く予定のため、まだ終わっていない)。 宿にはお客さんがたくさん入り、執筆ではご縁のあるメディアさんから多数依頼が入り、赤ちゃんもどんどん成長し遊びのレベルが上がっている。特に執筆については、今月は一体何万文字書いたのかわからないほど、タイピングしまくっていた気がする。 そんなわけでとにかく一分一秒が貴重だった。正直、睡眠時間も少なくて、最近はまだ真っ暗な早朝からガザゴソ起き

      • 散りばめた星々と白の吐息

        冬は星がきれいだ。空気が冷たくて、澄んでいて、星がきれいなのを知っているから、つい顔を上げて夜空を見てしまう。 私が暮らす町は長野県の阿智村みたいに「星の町」として有名なわけではないし、自分で言うのも気が引けるけど、本当に星がきれい。これまで見た中で一番印象的だったのは上高地の星空だったけれど、最近は自宅から見る冬の夜空はそれと同じくらいのインパクトがあると思っている。 夜ちょっと庭に出て、散りばめたような星々を見られるのはありがたいことだ。 昨年、宿に泊まりに来てくれ

        • 渡り鳥の群れと朝の色

          年が明けてからすぐ、とある作業のために1年以上ぶりにひとりでお気に入りのカフェへ行った。プリペイドカードに残高がいくら残されているのかも忘れていたほど、久しぶりだ。 昨年は一年のうちのほとんどが妊婦生活だったから、前半はつわりで具合が悪いことが多かったし、後半はなるべく自宅で過ごしていたし、赤ちゃんが生まれてからは一日が一秒のような速さで過ぎていったから、とてもカフェに行く余裕はなかった。 それでも夫が赤ちゃんを見ていてくれると言うから、午前中だけカフェで時間を過ごすこと

        ミモザの花束と春のお告げ

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          好きな食べ物と思い出の繋がり

          「好きな食べ物は何ですか?」 食いしん坊でグルメ好きな私は、この質問に簡単に答えられない。もしかすると聞かれて一番困る質問かもしれない。好きな食べ物なんてありすぎて無限大だ(笑) しかし、ひとつだけ特別な食べ物がある。 それは、あんこだ。 煮小豆としてそのまま食べるのも好きだし、お汁粉やおはぎなど和菓子としてあしらわれているのも好き。ヨーグルトやトーストのトッピングにするなど、少し変わった食べ方もウェルカム。 あんこが好きなのは、味や食感など食べ物としての特徴が好み

          好きな食べ物と思い出の繋がり

          庭にはニワトリがいる世界

          今年の春に生まれたニワトリが、ついに卵を産んでくれた。 その日は突然にやってきた。 ある日の明け方、7羽のニワトリたちがものすごい鳴き声を出していたため、事件かと思い急いで小屋へ駆けつけた。するとそこには、水をたくさん飲むメス鶏のいつちゃんと、ひとつの卵があった。 いつちゃんが卵を産んだらしいことは、すぐに分かった。生後173日目のことだった。 *** いつちゃんが卵を産んで思ったことは「おめでとう!」だった。 ニワトリが卵をいつ産むかずっと楽しみにしていたけれど

          庭にはニワトリがいる世界

          魔法の褒め言葉

          誰もがきっと「他者に言われて嬉しい褒め言葉」を持っていると思う。 褒め言葉にはいろいろある。 優しい、気が利く、いつも明るいなど、内面を指したもの。または、かっこいい、かわいいなど、見た目に関するものもあり得そう。あるいは、その人にしか分からないピンポイントな表現という可能性もある。 いずれにしても、他者から特定の褒め言葉をもらえたときは嬉しいものだ。関係性の深い浅いを問わず、たったその一言で、不思議と本当の自分を分かってもらえた気持ちになる。 *** 先日、私と夫

          魔法の褒め言葉

          ニワトリの反抗期と親の気持ち

          飼っている7羽のニワトリのうち、1羽が反抗期を迎えている。 その子は一番に安産で生まれて、一番かわいがってきて、一番なつっこい子だったから大ショック(笑) (笑)なんて言っているけれど、本当は反抗期がきたと飲み込むまでにかなり時間がかかった。涙もぽろぽろ出た。数日は寂しさと、裏切られた気持ちをズルズルひきずった。 ニワトリのお母さんである私は、育児ならぬ「育鶏」に絶賛お悩み中だ。 *** 反抗期を迎えているのはオスのきぬちゃんだ。 きぬちゃんが反抗期だと分かったの

          ニワトリの反抗期と親の気持ち

          ヤギとニワトリと憧れのピクニック

          暑くもなく寒くもない、11月のある日の午後。 いつものように庭に出て、ヤギとニワトリたちと遊んでいた。とても気持ちが良い天気だった。青く澄んだ空は、ずっと見上げていたい色をしている。 この日は少し特別だった。 *** ニワトリは水浴びをしない代わりに、砂浴びをする習性がある。腐葉土のように少し冷たく、しっとりサラサラした土が好きみたいだ。この日もそんな絶妙なスポットを勝手に見つけては楽しそうに砂浴びをしていた。 「気持ちよさそうだねえ」 ニワトリが嬉しそうな姿を見

          ヤギとニワトリと憧れのピクニック

          私たちの分娩記録と今感じていること

          先日、夫の立会いのもと、赤ちゃんを産んだ。 気持ちの良い秋晴れが続く日のことだった。 自分の体から人間が一人出てきたと思うと、未だに信じられない。赤ちゃんを産んでからは、一日もまとまった時間眠っていない。背中が痛かったり、分娩時の記憶が頭の中で永遠と再生され続けたり、赤ちゃんの授乳やオムツ替えがあったりと、心も体も忙しいからだ。 忙しいけれど、すべてが愛しく尊い時間に思える。 私たち夫婦は結婚して丸6年を迎え、現在7年目を過ごしている。 二人とも早く子どもが欲しいタ

          私たちの分娩記録と今感じていること

          エッセイという秘密を晒す理由

          先日知人との会話の中で、「なぜ書いた文章を人目に晒すのか」という話になった。 知人はふだん、Evernoteと呼ばれるツールを使い、自分にしか見えないように日記や日々感じたことを記録しているという。一方私は、ここnoteという不特定多数の人の目につく場所でエッセイを綴り、記事を残している。 エッセイは日記と異なり、出来事よりも書き手の「感情や考え」が如実に反映されるものだ。それはある意味、書き手の「秘密」を晒しているのと同じ気がする。 感情や考えは、人によっては個人の胸

          エッセイという秘密を晒す理由

          一日一柿の収穫

          庭中にキンモクセイの香りが漂う季節になった。 洗濯物を干す朝、ひよこのお散歩が始まる昼過ぎ、ヤギを小屋へ戻す夕方。どの時間帯でもキンモクセイの存在を感じられる。わが家だけでなく、近所の多くのご家庭でキンモクセイの木が橙色をして賑わっている。 そんな秋真っ盛りの最近、毎日とても楽しみにしていることがある。 それが、庭にある柿の木から一日一個の柿を収穫することだ。 *** いま暮らしている古民家には、柿の木が何本か植わっている。甘柿もあれば、渋柿もあるが、品種は不明。以

          一日一柿の収穫

          目覚ましになる果物たち

          朝ごはんに楽しみなものがあると、前夜からわくわくする。 寝る直前に翌日のスケジュールを考えるのと同時に、まずは朝ごはんに食べるものを想像する。そうすると、不思議なことにそれだけで気持ちが明るくなり、良い眠りにつけることがしばしばある。 なんなら寝る直前と言わず、夜ごはんを食べている段階で翌朝のことを考えると、夜の食べ過ぎを防ぐこともできる。朝ごはんが楽しみだといいことがいっぱいだ。 *** 今年は自分を甘やかして、とにかく旬の果物を食べている。 そして果物を食べる時

          目覚ましになる果物たち

          待ちわびた秋とあの店のおはぎ

          誰でも好きなお店のひとつやふたつはすぐに思い浮かぶと思う。 好きなお店があると、頭のどこかにかすかにお店の存在がいつもあって、利用するたびに生活の中の小さな喜びが増えていく。小さな喜びは心に蓄積し再びその店が好きになる、という好循環をもたらしてくれる。 *** 最近とても好きなお店がある。それが「移動販売のお団子屋さん」だ。 このお店を見つけたのは本当に偶然だった。ある日、近所の直売所の出入り口で、テーブルいっぱいにお団子を並べて売っていたのだ。「なんとなく美味しそう

          待ちわびた秋とあの店のおはぎ

          ひよこと暮らした100日間

          今年の春にひよこが生まれてから100日が経過した。 卵を自宅で温めひよこを孵す孵卵器(ふらんき)と呼ばれる機械を使い、合計7羽と一緒に暮らしている。2度孵化させたから、2グループの群れ(3羽+4羽)がいるイメージ。 ひよこを飼うのは今回が初めてで、生まれる前はどんな感じなのか想像もできずにいた。それが今では毎日メロメロの日々を送っている。 夫に、ひよこを可愛がりすぎて自分の体調が疎かにならないよう注意されるほど。それほどまでに私はひよこのことが好きみたいだ。 ***

          ひよこと暮らした100日間

          旅に出たい欲の変化について

          以前と比較して「旅に出たい」という欲がなくなってきている。 これまで旅が大好きで、国内は44県(徳島、愛知、富山以外)、海外は12か国(アメリカ、カナダ、イタリア、タイ、ラオス、カンボジア、スリランカ、ベトナム、インドネシア、マレーシア、韓国、台湾)を訪問した。 特に大学生になると、アルバイトをしてお金を稼ぐことを覚え、暇さえあればシフトを入れては旅に出る、というのを繰り返していた。当時付き合っていた彼や、周りにいた友人も旅好きが多く、旅を共にする人にも困らなかった。

          旅に出たい欲の変化について