菊地早秋

エッセイ書いてます|湖畔の古民家で夫、子、ヤギ、ニワトリと生活。ふだんは古い蔵を活用し…

菊地早秋

エッセイ書いてます|湖畔の古民家で夫、子、ヤギ、ニワトリと生活。ふだんは古い蔵を活用した小さな宿を個人経営(宅建士)。ネイチャーガイドも目指して自然環境の分野を学習中。おはぎと桃が好物。

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    2019年から湖畔暮らし。自然、家族、ヤギ、トリ、仕事、そして考え事の日々。

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緑のカーテンと図書館の思い出

「ある場所」を好きになるとき、そこには「ある人」の存在が関係していることがある。 例えばお気に入りのレストランが好きなのは、料理の好みに加えて、実は店員さんとの関係性が心地よくて足を運んでいる可能性がある。 そういう意味で、好きな場所ができるのは人の要素が大きいのではないかと思う。 「あの人と盛り上がった会話が忘れられない」「あの人が対応してくれた気遣いが心に残っている」など、ある場所を好きな背景には、人との思い出が少なからずあるのではないか。 *** 最近、仕事や

    • 産後10カ月の振り返りと世間で議論されたこと

      子が生まれてからもうすぐ10カ月になる。 ここまであっという間だった。つい先日生まれたばかりだと思っていたのに、1歳のお誕生日が目前に迫っている。あっという間であると同時に、一日一日が本当に濃密だった。朝から晩まで(子育てには朝も夜も関係ないが)お母さん業、よくがんばってきた。 今日は、子が生まれてからの生活の変化やリアルタイムで感じていること、この期間に世間で議論されたことに対する意見などを書いてみる。 *** 子が生まれてからライフスタイルはガラッと変化した。端的

      • 風に揺れる柔らかな田んぼに埋もれて

        この記事は本当は、梅雨まっさかりの7月半ばに書いていたものだが今頃の公開となってしまった。本格的な夏が訪れる前にタイムスリップした気分でお読みいただければ。 *** 田んぼがきれいな季節になった。 梅雨前後の田んぼは、何度見ても飽きない。5月の暑くもなく寒くもない気持ちの良い季節に植えられた稲の苗は、最初はひょろひょろっとして、やや頼りない様子だ。それが日に日に姿を変えていって、7月の今やしっかりと根付き、稲穂も見え始めている。 子が生まれたこともあって頻繁にお散歩へ

        • 鳴らなかった風鈴が鳴った日のこと

          今年の夏はまた暑いという。 昨年の地獄のような暑さが再び繰り返されると思うと、それだけで気持ちが滅入りそうだ。 そこで、少しでも気分を明るくする方法はないかと、風鈴を買ってみることにした。選んだのは「津軽びいどろ」のガラス風鈴。 わが家の近くに洒落た雑貨店などはないから、心からかわいいと思うものを選びたいときはネットショッピングを使う。今回もネットを使って取り寄せた。届いた風鈴は写真通りで、清涼感があり、きれいだった。 さっそく窓の近くに引っかけてみた。 するとどう

        緑のカーテンと図書館の思い出

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          「最高や! 全部流れてしまえ!」

          数日前、嫌な気分になることがあった。 頭では「世の中にはいろいろな人が共存しているのだから、いつ何時も望む通りになるとは限らないものだ」と理解していても、心がざらついて仕方がなかった。 その気持ちをあおるように、翌日はかんかん照りの暑い一日だった。 朝7時に縁側の窓を開け放つと、ふだんなら心地よく部屋に入り込んでくる風がない。まるで時が止まったかのような、無風の世界だった。庭を見渡せば草木や車など、あるものすべてに太陽の日差しがじりじりと照りつけている。 *** 夕

          「最高や! 全部流れてしまえ!」

          意味の有無では語り切れないこと

          毎年6~7月になると、生活の合間に梅仕事が入ってくる。体調不良などよほどの事情がない限り、自宅で梅干しを作っているのだ。 正直、梅干しは自分で作るより買った方が安いし、早いし、だいいちおいしいと思う。自分で作るとおいしくないわけではなく、できあがった直後は塩が馴染んでおらずしょっぱいのだ。違和感なく食べられるようになるまで、1~2年もかかる。 「じゃあなんでわざわざ梅干しを作っているのか」と自分に問いたくなる。 いやほんと、なんで私は梅干しを作っているのだろう。 **

          意味の有無では語り切れないこと

          なくても困らないけどあると日々が豊かになる文章

          これは今後、私が書いていきたいと思う文章である。 過去から現在に至るまで、note以外でも書く場をいくつか持ってきた。趣味として無料で書いてきたものもあれば、仕事として有料で書いてきたものもある。紙媒体・Web媒体・エッセイやコラム・SEO記事などひとくちに「文章」といっても、その種類はさまざまだ。 幅広く書いてきて今の私が思っていることは「なくても困らないけどあると日々が豊かになる文章」を今後はたくさん書いていきたい、ということだ。 *** 最近、村上春樹のエッセイ

          なくても困らないけどあると日々が豊かになる文章

          森が織りなす生態系の芸術

          森林浴が好きだ。 今いる地域には田畑を耕す平野はたくさんあるものの、山林が少ない。森林浴を愛する者としては、時折寂しい気持ちになる。 ところが先日、なんと自宅から車で20分のところに素敵な森林浴スポットを見つけた。なんで今まで足を運ばなかったんだろう。後で調べてみると、総面積51.5ヘクタールもある森だったらしい(ディズニーランドのテーマパークエリアとほぼ同じ)。 6月初旬のみずみずしい新緑、森に住まう野鳥の鳴き声、水辺にかかる大きな吊り橋、国蝶オオムラサキが飛ぶ姿。す

          森が織りなす生態系の芸術

          考える余白がたくさんあるガラス小物たち

          ガラス小物が好きで、気ままに集めている。 光を当てるとガラスが反射して、きれいな色が散らばっていくところが気に入っている。 一輪挿しに花を飾ったり、グラスで飲み物を飲んだり、ガラスのプレートでサラダを食べたり。目的があって使うことはもちろんあるけれど、実は見ているだけで気持ちが高まることの方が多い。きれいだな~って。 私のガラス小物のコレクションを少しだけ紹介してみる。 *** 「琉球ガラスのグラス」 ガラスの中に気泡があるのが特徴で、ぷっくりとした泡が時を止めて

          考える余白がたくさんあるガラス小物たち

          新しい自分に出会う瞬間まで

          自分のことについて、知っているようで実は知らないことが多い。 最近「私って意外とこういう性質してたんだ!」と思うことがあった。人には本人もまだ気が付いていない未知の部分がある。 本人が出会っていない自分を「新しい自分」とするならば、いつ会えるのかわからないのだから、可能性を狭めないように生きたい。そして「今が新たな自分に会っている瞬間だ」とすぐに反応できるように、心の扉をオープンにしておきたい。 *** 私の母はとても明るい。一緒にいれば黙っていることがほとんどないし

          新しい自分に出会う瞬間まで

          沼にはまって抜け出せないほど好きな作品

          先日、今まで観てきた映画の中で指折りの作品を見つけてしまった。 私は音楽や映画などで気に入った作品があると、とにかく深く掘り下げるタイプだ。「沼る」という表現がしっくりくる。「沼る」を知らない人向けに解説しておくと「沼にはまって抜け出せなくなった状態のように、何かにどっぷりはまって夢中になること」である。 私の場合、好きな映画を見つけて沼りだすと、キャストや監督のインタビュー記事を読みあさったり、試写会の舞台挨拶の様子をYouTubeで観たりする(ネットニュースだとつまら

          沼にはまって抜け出せないほど好きな作品

          ダメな時に腐らないことめげないこと

          この言葉は、私が尊敬する人から最近もらった言葉である。 といっても、直接的に会話しながらもらったものではなく、質問箱というツールを使って悩みを打ち明けて回答を得たものだ。尊敬する人とは奇跡的にも一度だけお会いしたことがあるが、気軽にチャットをしていいような方ではないと考えているため、質問箱を利用させてもらった。 質問に対する答えが今後の人生でお守りになるような納得感のある内容だったため、私が何を尋ね、どんな回答をもらったのかをここに記録しておく。 *** 私が質問した

          ダメな時に腐らないことめげないこと

          天気と意欲と土いじり

          気が付けば前回の記事を書いてから、約1カ月が経過してしまった。 その間リアルな生活では、嬉しいことや残念なことなどいろいろなことが起きていたし、心で感じることもたくさんあった。ふだんなら一コマずつの様子をnoteに記録していただろうけれど、この1カ月はどうも書くモシベーションが枯渇していた。 単純に忙しくてパソコンに向かう時間が取りにくかったのも大きく関係しているが「何としても書く時間を死守する」という熱意を持てなかったのも事実だ。 *** 書く意欲が戻ってきたのはつ

          天気と意欲と土いじり

          ミモザの花束と春のお告げ

          先日、近所で仲良くしてもらっている素敵なご夫妻から、ミモザの花束をいただいた。この土地へやってきてから、毎年のようにお裾分けしてもらっている。 ご自宅にミモザの木があるそうで、私もお邪魔した際に実物を見させてもらったことがある。それは立派な木で、両手を広げても全然足りないくらいの大きさだった。 ミモザは黄色くて小さな可憐な花と、細かい葉をいくつも付けているのが特徴。毎年ミモザをもらうまでは知らなかったが、ミモザは鮮度によって見た目が全然違う。木から切りたてのときは花が「ふ

          ミモザの花束と春のお告げ

          灯油ストウブの匂いと混沌と

          この2月は、個人事業の季節外れな繁忙期だった。文字どおり目が回る忙しさだった(この感じは3月初まで続く予定のため、まだ終わっていない)。 宿にはお客さんがたくさん入り、執筆ではご縁のあるメディアさんから多数依頼が入り、赤ちゃんもどんどん成長し遊びのレベルが上がっている。特に執筆については、今月は一体何万文字書いたのかわからないほど、タイピングしまくっていた気がする。 そんなわけでとにかく一分一秒が貴重だった。正直、睡眠時間も少なくて、最近はまだ真っ暗な早朝からガザゴソ起き

          灯油ストウブの匂いと混沌と

          散りばめた星々と白の吐息

          冬は星がきれいだ。空気が冷たくて、澄んでいて、星がきれいなのを知っているから、つい顔を上げて夜空を見てしまう。 私が暮らす町は長野県の阿智村みたいに「星の町」として有名なわけではないし、自分で言うのも気が引けるけど、本当に星がきれい。これまで見た中で一番印象的だったのは上高地の星空だったけれど、最近は自宅から見る冬の夜空はそれと同じくらいのインパクトがあると思っている。 夜ちょっと庭に出て、散りばめたような星々を見られるのはありがたいことだ。 昨年、宿に泊まりに来てくれ

          散りばめた星々と白の吐息