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詩にまつわる

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2023年3月の記事一覧

現代詩を読む会を開催します

現代詩を読む会を開催します

現代詩を読む会(1)
井戸川射子『する、されるユートピア』(第24回中原中也賞受賞作 青土社刊)
2023年5月13日(土)10:15~11:45
西宮市大学交流センター 講義室2
(阪急西宮北口駅直結アクタ西宮東館6階)

参加費:500円(定員20人)
お申込み・問合せ:poetry.hanshin@gmail.com
(Zoom配信も予定しています、お問合せ下さい)

詩を読む会をはじめます

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そこなのに、届かない

そこなのに、届かない

 貞久秀紀 詩集「石はどこから人であるか」(思潮社、2001)。これはタイトルに惹かれて、買うよね。とても哲学的にアプローチするのかと思うと、軽い肩透かしを喰らわせられる。膝カックンというほどではないし、ふざけているわけではないのだし、深読みはどんどん誘ってくる。言葉は平易で、読み過ごしてしまいがちだが、もう一度読まなきゃ、と焦らせる。でも届かない感じがある。詩って、そういうもんだよね、とも思う。

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肉声の強さ、言葉の強さ

肉声の強さ、言葉の強さ

 小池昌代、林浩平、吉田文憲の編著で『やさしい現代詩』2009。各詩人の一編と簡潔かつ適切な紹介と解説。自作朗読のCD…。編者の吉田は、「やさしい」の基準を、「その詩がその人のこころに届くかどうか」に置いている。そこに挙げられた、吉原幸子の詩の言葉の魅力の解説…助詞を抜くことの魔法は、みごととしか言いようがない。で、吉原さんの作品は収められてないというのが…2002年には亡くなっていたものね、惜し

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天性の言葉の艶

天性の言葉の艶

 林浩平『心のどこにもうたが消えたときの哀歌』2010。
 吉増剛造論でも知られる詩人の、第三詩集かな。夢魔を描いた散文詩と行分け詩。語られる夢は、天澤退二郎ばりの奇妙な歪みを持ったもので、夢を扱っていないものも叙述の裂け目に陶然とさせられるタイプの作品が多い。
 「鳩の広場にて」は、彷徨の詩篇と、会田綱雄と会えなかったという注記の関連が、率直に言ってよくわからず、そこに立ち止まらされる面白さがあ

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言葉の力を痛感

言葉の力を痛感

 伊藤比呂美の第一詩集「草木の空」1978。上京した年に買った詩集ということになりますね。おそらく、渋谷PARCOの「ぽるとぱろうる」で買ったんでしょう。「現代詩手帖」の投稿欄で目覚ましい輝きを放っていた新鋭でした。
 冒頭の「水道橋」、大岡信の「地名論」の水道橋とは異なり、3年間の男との関わりをごく個人的に愛着している、切ない作品。四谷の大学に通い始めていたので、「あんたはよつやのあの土手から」

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共感覚を得られる同時代の詩

共感覚を得られる同時代の詩

 最果タヒ詩集「グッドモーニング」2007。中原中也賞を受けた第一詩集。梅田のHEP FIVEで、最果タヒ展開催中でもあり。
 必ずしもわかりやすい詩ではないけれども、時々きゅーんと刺さる行があって、そこから読み広げていくと、最初の印象とは違ってグッと自分に引き寄せて読めたり、あぁわかるわー、となる感じじゃないかと思います。
骨が折れたり、泥まみれになって汚なくなってしまっていたり、攻撃されたりし

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詩はどこにあるのか

詩はどこにあるのか

 1月に亡くなった天澤退二郎さんの『帰りなき者たち』1981。
 「詩はどこにあるか」というテーマについて深く長く考えていた人で、そのベースには常に宮沢賢治があった。だから、散文詩、物語を書くことは必定で、天澤さんにとってその主要なテーマは夢、夢魔だった。
 この詩集は、大学教員であるらしい私らしい人の夢のようなものが多く記述されていて、自ずと東京という都市に対しての眼差しにもなっている。
大学の

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世界を覗き見る

世界を覗き見る

 斉藤倫詩集『オルペウス、オルペウス』2006。一種の奇書かもしれません。オルペウス(オルフェウス)は、ギリシャ神話で有名な、後ろを振り向いちゃった人で、竪琴の名手。オルペウス、エウリュディケらの名を借りつつ、木詰緑平という学生?、その友人?の鮒山善一、木詰の恋人なのか増岡洽子といった人名が出てきて、バンドをやってるようで…と、よくわからないまま微かにオルペウスの物語ともつれ合いながら進んでいく一

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あふれる抒情

あふれる抒情

 コマガネトモオ詩集「背丈ほどあるワレモコウ」2006。タイトルがなんか色っぽくていいですね。
 詩集冒頭の「ヌル」という作品にまず魅かれて、写真2枚目は「子午線通過」という作品の序盤。言葉が少しぎく、しゃく、と、詰屈というほどではないが、あれっと思わせるようなこともあって、でもしばらくすると後の方の行でちゃんと受けられていて着地できる、ことが多い。この一編の終わりの方で「ヴィーナス、私があなたの

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多言語使用者ならではの魅力

多言語使用者ならではの魅力

 第二言語である日本語で詩を書いているアメリカ人の詩人、#ジェフリーアングルス『#わたしの日付変更線』2016。
 「望遠鏡」というタイトルの作品は、稲垣足穂から霊感を受けたという。喪失と失意の提示と、強さの決意に背筋が伸びる感。
 自分の存在の複数性について正面から向き合い、多言語使用者ならではの魅力を存分に発揮した、すばらしい作品集。
 言葉は平易なほうだが、内容は複雑という、言語芸術として理

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吉増剛造のプロセスの魅力

吉増剛造のプロセスの魅力

 2023年1月15日、元町映画館 で 井上春生監督、吉増剛造がジョナス・メカス の一周忌を訪ねるという映画『眩暈』。
 吉増さんの詩の誕生のプロセスを追い、ジョナス・メカスとの交流、ジョナスへの思い、ジョナスの魅力がよくわかることはもちろん、ニューヨークという街の魅力、移民である彼のまなざし、そこで詩が生まれること、そして吉増さんやメカスの表現をめぐる至言。
 この日は井上監督の舞台挨拶があり、

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日常の戸惑いと言葉のきらめき

日常の戸惑いと言葉のきらめき

 本当に久しぶりに手に取った、井坂洋子詩集『朝礼』1979、今日の一冊です。改めて、こんなにすごい作品たちだったのかと! 女子高校生の身体の生理のみずみずしさや戸惑い、それをプロセスとして経てきた詩人自身の現在地が彼女たちに投影される時の淡いスリル、もう40年以上も前の詩集ですが、本当に言葉がキラキラしている。
 有名な「朝礼」という作品、朝の校庭に整列した生徒たちを「濃紺の川」と表したあとで、遅

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詩は悲しいな、と

詩は悲しいな、と

 宿久理花子詩集『からだにやさしい』2015。改行の仕方が、言うならばメチャクチャで、単語の間とかで意味をなしてないんだけど、きっちりと意味や感情の流れの楔になっている作品があって、面白い。言葉の流れ自体は割と饒舌で澱みなく、日常的だったり遠い暗喩の男女の物語だったりして、それらについて闇やわだかまりや窮屈さが与えられてるのは、やはりその改行の変なところからかなと思う。

なので尾てい骨のはじまり

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