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言葉の力を痛感

 伊藤比呂美の第一詩集「草木の空」1978。上京した年に買った詩集ということになりますね。おそらく、渋谷PARCOの「ぽるとぱろうる」で買ったんでしょう。「現代詩手帖」の投稿欄で目覚ましい輝きを放っていた新鋭でした。
 冒頭の「水道橋」、大岡信の「地名論」の水道橋とは異なり、3年間の男との関わりをごく個人的に愛着している、切ない作品。四谷の大学に通い始めていたので、「あんたはよつやのあの土手から」なんていう一行に目も眩んだりしていたものでした。
 「ガ行鼻濁音のイメージ」を読んでしまうと、普段の言葉に対する神経がやけに鋭くなってしまって困る。
 ことばによって、自分のこの空間がパーっと広がったり、全く別の色相になったりという、言葉の力を痛感させてくれる詩人。生や性の生々しさにも溺れる。

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