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ネズミ講編その1

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ハッタリ2022、からのネズミ講編導入

ハッタリ2022、からのネズミ講編導入

2022年1月2日、酔いに任せて高校時代の恩師にLINEで啖呵を切った。

「今年はエッセイを100本書く」

いままで特に発表する場を意識してまとまった文章を書いたことなどない。(いわゆる文学とか雑誌とか「文章そのものが売り物」という形)が、なんとなく出来るだろうという見切り発車で本日開始する。

記念すべき(かどうかは後年明らかになるかも)第一回一丁目一番地は「ネズミ講シリーズ」への導入。これ

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ネズミ講編 その1の1(出向そして見知らぬ女性からの入電)

ネズミ講編 その1の1(出向そして見知らぬ女性からの入電)

東京への出向を命じられた俺は尻の上に寒さを覚え、すぐに背中を脂汗が流れていくのを実際の触覚より広いであろう範囲で感じていた。

ワ(自分のことを指す南部弁)が東京に住んで仕事するってが?
おめどほんとにしゃんべってらのが。
やいやいや、恐ろしないごどさなったでゃ。

大体において、俺らは秘境グンマーの自社で数年勤務した後に青森工場へ幹部として帰る「そこそこの努力で実現する明るい未来」を獲得する手筈

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ネズミ講編 その1の2(喫茶店で逢引き、みたいな)

ネズミ講編 その1の2(喫茶店で逢引き、みたいな)

件のアポイントメント当日、品川の隣に位置する大崎は快晴だった。

今でこそメガクラスのビル群が立ち並ぶゲートだかなんだかという令和エグゼクティブ好みのラベリングがされているが、当時は「本当に何もない」という陳腐な表現がフィットしている地域だった大崎。
23区内かつ品川というビッグネームシティの隣に位置しながら埼玉郊外のベッドタウンのような静けさが「いかにも私が東京様だが?」という顔をして毎日もった

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ネズミ講編 その1の3(ラッキーパンツ)

ネズミ講編 その1の3(ラッキーパンツ)

喫茶店には休日の昼らしくボサノヴァが流れ(たぶんジョビンだったと思う)、首都独特の湿度をうまく処理できていないためか残暑というには暑く熱く感じる東京の9月のアスファルトから立ち登る蜃気楼を見ながら涼しい店内でゆっくりするのにはこれ以上ない雰囲気だったのだろう。
普通の精神状態の者にとっては。

向かいの席にゆっくりと座った久保女史はふぅと一息をつき、穏やかな笑みで切り出した。

「突然ごめんねぇ〜

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ネズミ講編 その1の4(静かに完結)

ネズミ講編 その1の4(静かに完結)

獲物に向かい滑空する直前の鷹の目で俺を見つめながら、女は言った。

「実印ってわかるかなあ〜!成人したらねぇ、自分だけの印鑑を持たなきゃいけないんだけど」
「はあ、そうなんですか」

「実印っていうのはぁ、ぜったい丈夫じゃなきゃいけないのね!欠けたりしたら無効になっちゃうから」
「なるほど、そりゃあそうですね」

実印を持たなきゃいけないって?ワぁが?
実印ってなんだっきゃして。
普通のハンコだば

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