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「オレたち花のバブル組 / 半沢直樹2」 池井戸潤

「前を見よう。歩き出せ。どこかに解決策はあるはずだ。それを信じて進め。それが人生だ。」



「オレたち花のバブル組 / 半沢直樹2」 池井戸潤


東京中央銀行本店・営業第二部次長へと栄転した半沢直樹。


その半沢直樹に、またもや頭が痛くなるような難題がもたらされました。


中野渡(なかのわたり)頭取から直々に命令があったのです。


運用失敗で120億円の損失を出した「伊勢島ホテル」の担当をするようにと。


じつは


東京中央銀行は、伊勢島ホテルへ黒字化を前提として「200億円」の融資を実行したばかりであったのです。


もしも


近く行われる金融庁検査において、悪化した業績に対する融資の回収懸念があると判断された場合、巨額の「引当金」を積まなければなりません。


これは何としてでも回避しなければ、中野渡頭取のクビが危ない。


東京中央銀行は伊勢島ホテル側に、一旦返済してほしいとの申し出をしましたが伊勢島ホテルの羽根専務は、東京中央銀行にも責任があると返済を拒むのでした。


金融庁検査が入ります。


伊勢島ホテルを再建できるかどうかが、金融庁検査の焦点。


金融庁検査は、東京中央銀行・半沢直樹にとって絶対に負けられない戦いでした。


金融庁の主任検査官・黒崎は、超エリート。
オネエ言葉で半沢に牙をむきます。


黒崎は、不思議なことに半沢サイドが不利となる情報をよく知っていました。黒崎は、銀行側が不都合な書類を検査前に隠していることを認識していたのです。徹底的にそれらを探すように部下に命令しました。


「必ず探し出してやるから覚悟をし」
「そのときが半沢、あなたの最期よ」


半沢には、疑問がありました。


元々、東京中央銀行・京橋支店が伊勢島ホテルの管轄でしたが、なぜか管轄が東京中央銀行・法人営業部に移管され、その後に運用損失が明らかになったからです。


当時、伊勢島ホテルの経理部にいた戸越は、東京中央銀行・京橋支店に多大な損失が出ることをリークしました。


京橋支店はその報告を隠蔽し、損失が出るとわかっていながら、法人営業部に業務を移管。その後、融資が実行されました。


リークした伊勢島ホテルの戸越は、子会社への出向を命じられました。


「伊勢島ホテルと当行は繋がっている」
そう半沢は理解しました。


半沢は、京橋支店が運用損失を知っていながら、それを隠蔽していた証拠を掴みます。


そして


東京中央銀行の中に、糸を引いている人間がいることも。


すべては


常務・大和田の企み


でありました。


大和田は、頭取の中野渡の失脚を企み、伊勢島ホテルの羽根専務は、湯浅社長の退陣が目的でありました。


それに加えて


大和田常務は妻の会社の負債のため、迂回融資を部下に指示していました。


このことに関連して、半沢の同期である近藤が、出向先のタミヤ電機で「不正」が行われていることに気づきます。


タミヤ電機に融資されたお金が、大和田常務の妻の会社に転貸されていたのです。(迂回融資)


この迂回融資は、大和田常務の指示でありました。


そのために、本当に必要な融資をタミヤ電機が受けられない状況になっていました。


大和田常務の欲望と、その妻の会社の損失のために、銀行を信頼しているお客様や部下を欺き、翻弄し、不幸にしたわけです。


大和田は、銀行という組織のダークサイドに陥り、その周辺の彼に関わる人たちを暗黒面に引きずり込みました。


半沢直樹の怒りは頂点に達します。


半沢は、銀行員の矜持という刃を大和田へと、そして、腐敗した銀行という組織へ突きつけます。


やられたら倍にしてやり返す。

その信条にしたがって頭取宛てに上奏した報告書は、まさに半沢の信念に基づくものだった。

結果を恐れて何もしないという選択肢は、半沢の中には存在しない。同時に、半沢の報告書は、いわば東京中央銀行という銀行に差し出す、一枚の踏み絵でもあった。

誰もが内面で「黒」と思うものを、詭弁を弄して「白」にすれば、おそらく消えない後味の悪さが残るだろう。それには、バンカーとしてのプライドとモラルがかかっている。


金融庁検査が大詰めを迎えました。


「過去、同社の経営計画がどの程度達成されてきたかを見ればわかるでしょう、半沢次長、売上、収益。すべてに甘い。すべてによ!」


黒崎は半沢を窮地に追い詰めますが、半沢は反撃します。


経営改善策を見事にまとめて、黒崎に有無を言わせぬ結果を見せつけたのです。


すると


黒崎は、最終手段に打って出ます。


「もし、隠蔽資料があれば、いま申し出なさい。これが最後のチャンス。どうなの、半沢次長」


黒崎は銀行の地下二階をすでに封鎖していました。ボイラー室に資料があるとの情報を、銀行の誰かから得ていました。


「さあて、中味を見せてもらいましょうか。
何が出てくるかお楽しみだわ」


しかし


箱から出てきたのは、宴会グッズばかり。


「う、うそよ!」


これを見ていた半沢の同期・渡真利は、ガッツポーズ!半沢も親指を立てて応えます。厳しい金融庁検査をうまく乗り越えたのでした。


そして


大和田との直接対決である取締役会で半沢直樹は、敢然として巨大な権力にたった一人で立ち向かいました。


「このような事態は、コンプライアンス、ならびに金融機関役員としての信義則に違反する事実であり、公になれば当行の社会的信用を毀損するでしょう。本件の対応について、取締役会の判断を仰ぎたいと存じます。」


白熱した緊張感が、ページを捲る手を震わせました。


あなたも


このような組織の圧力や権力や、あるいは組織の不信を感じたことがありませんか?


テレビや新聞を見ていても、あらゆる不正や権力による犠牲が出ています。


また


権力や圧力や忖度によって隠蔽される「異常」を感じていることでしょう。


この物語の半沢直樹のように、四面楚歌の状況でも不正に対し、反撃し、倍返しする場面に


「真っ当な人間は必ず勝つ!」


そんなメッセージを受けとりました。


肩書がつくと、勘違いする人が多いのです。
肩書は機能であり権威ではないのです。


その勘違いが、会社や組織を腐敗させるのです。


働いていると絶対に捨てられない誇りがあります。


その矜持と勇気とともに、私たち働く人たちにエールを半沢直樹は送ってくれました。


人生は一度しかない。
ふて腐れているだけ、時間の無駄だ。
前を見よう。
歩き出せ。
どこかに解決策はあるはずだ。
それを信じて進め。
それが人生だ。



【出典】

「オレたち花のバブル組 / 半沢直樹2」 池井戸潤 文藝春秋


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