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2024年 映画評

60
2024年観た映画の評論をあげています。
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記事一覧

映画評 十一人の賊軍🇯🇵

映画評 十一人の賊軍🇯🇵

『日本侠客伝』『仁義なき戦い』シリーズなどで知られる脚本家の笠原和夫が残した幻のプロットを『孤狼の血』『碁盤斬り』の白石和彌が監督を務める時代劇アクション。

江戸幕府将軍・徳川慶喜を擁する旧幕府軍と、薩摩藩・長州藩を中心とする新政府軍(官軍)の間で争われた戊辰戦争。そのさなか、新政府軍と対立する奥羽越列藩同盟に加わっていた新発田藩で繰り広げられた、同盟への裏切りのエピソードを基に、捕らえられてい

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映画評 トラップ🇺🇸

映画評 トラップ🇺🇸

『シックス・センス』『サイン』のM・ナイト・シャマランが監督・脚本による、巨大ライブ会場に仕掛けた罠を潜り抜ける警察とライブ会場に訪れた凶悪な殺人鬼による攻防を描くサスペンススリラー。

娘想いの父親でありながら、残忍な殺人鬼の一面を持つクーパー(ジョシュ・ハーネット)は、娘ライリーのためにアリーナライブへと一緒に赴く。しかし、クーパーが訪れたライブは、自身が訪れるというタレコミによって警察が仕掛

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映画評 破墓/パミョ🇰🇷

映画評 破墓/パミョ🇰🇷

2人の巫堂(ムーダン=朝鮮半島のシャーマン)と風水師、葬儀師が掘り返した墓に隠された恐ろしい秘密を描くサスペンススリラー。第60回百想芸術大賞にて監督賞初め4部門受賞。

墓地を見る風水師サンドク(チェ・ミンシク)、改装を仕切る葬儀師ヨングン、お祓いを行いつつ、祈祷を捧げる2人の巫堂ファリムとボンギル。4人は跡継ぎが代々謎の病気にかかるという奇妙な家族の先祖の墓を掘り起こす破墓を行う。しかし、その

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映画評 グラディエーター🇺🇸

映画評 グラディエーター🇺🇸

『エイリアン』『ブレードランナー』の巨匠リドリー・スコット監督による、古代ローマを舞台に復讐に燃える剣闘士の壮絶な闘いを描いた歴史スペクタクル。第73回アカデミー賞で作品賞・主演男優賞など計5部門に輝いた。

古代ローマの皇帝アウレリウスは、将軍マキシマス(ラッセル・クロウ)を次期皇帝の座に譲ろうと考えていた。それを知った野心家の王子コモドゥス(ホアキン・フェニックス)は父を殺して玉座を奪い、マキ

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映画評 ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ🇺🇸

映画評 ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ🇺🇸

第76回ベネチア国際映画祭で金獅子賞、第92回アカデミー賞で主演男優賞を受賞するなど輝かしい功績を収めた『ジョーカー』の続編。前作に引き続き、トッド・フィリップス監督と主演ホアキン・フェニックスがタッグを組む。

理不尽な世の中で社会への反逆者、民衆の代弁者として祭り上げられたジョーカー。そんな彼の前にリー(レディ・ガガ)という謎めいた女性が現れる。リーはジョーカーをカリスマとして神聖化し、アーサ

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映画評 シビル・ウォー アメリカ最後の日🇺🇸

映画評 シビル・ウォー アメリカ最後の日🇺🇸

『エクス・マキナ』『MEN 同じ顔の男たち』のアレックス・ガーランド監督・脚本による、戦前を取材するジャーナリスト視点から、内戦と化したアメリカを映し出す。

連邦政府から19の州が離脱したアメリカでは、テキサス州とカリフォルニア州の同盟からなる「西部勢力」と政府軍の間で内戦が勃発。各地で激しい武力衝突が繰り広げられていたが、ワシントンD.C.の陥落は目前に迫っていた。4人のジャーナリストは、政府

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映画評 ウルフズ🇺🇸

映画評 ウルフズ🇺🇸

ジョージ・クルーニーとブラッド・ピットによる、同じ事件現場で鉢合わせした2人のフィクサーの共闘を描いたクライムアクション。MCUシリーズの『スパイダーマン』を手がけたジョン・ワッツが監督・脚本を務める。

重大事件を隠蔽する裏社会のもみ消し屋のジャック(ジョージ・クルーニー)は、ある男を始末する依頼を受ける。早速現場へ足を運んだものの、そこへもう1人の揉み消し屋であるニック(ブラット・ピット)が現

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映画評 不都合な記憶🇯🇵

映画評 不都合な記憶🇯🇵

『ある男』『蜜蜂と遠雷』の石川慶監督による、理想を追求する夫とアンドロイドの妻の歪んだ愛のかたちを描いた、SFサイコロマンス。

人類の宇宙移住が進んだ西暦2200年。宇宙に浮かぶ高級レジデンスに暮らすナオキ(伊藤英明)とマユミ(新木優子)は、仲睦まじい理想の夫婦のように見えた。しかし、ナオキは自分を愛していた幸せの日々を取り戻すために、理想像を具現化したアンドロイドのマユミを作る研究に没頭してい

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映画評 Cloud クラウド🇯🇵

映画評 Cloud クラウド🇯🇵

『散歩する侵略者』『蛇の道』の黒沢清監督による、憎悪の連鎖から生まれた集団狂気に狙われる男の恐怖を描いたサスペンススリラー。

町工場で働きながら転売屋として日銭を稼ぐ吉井良介(菅田将暉)は、周囲で不審な出来事が相次ぐようになる。吉井が自覚のないままばらまいた憎悪の種はネット社会の闇を吸って急成長を遂げ、どす黒い集団狂気へとエスカレート。得体の知れない集団による“狩りゲーム”の標的となった吉井の日

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映画評 憐れみの3章🇬🇧

映画評 憐れみの3章🇬🇧

『女王陛下のお気に入り』『哀れなるものたち』のヨルゴス・ランティモス監督による、愛と支配をめぐる3つの物語で構成したアンソロジー。第77回カンヌ国際映画祭でジェシー・プレモンスが男優賞を受賞。

選択肢を奪われながらも自分の人生を取り戻そうと奮闘する男、海難事故から生還したものの別人のようになってしまった妻に恐怖心を抱く警察官、卓越した教祖になることが定められた特別な人物を必死で探す女。3つの奇想

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映画評 SONG OF EARTH/ソング・オブ・アース🇳🇴

映画評 SONG OF EARTH/ソング・オブ・アース🇳🇴

ノルウェーの山岳地帯で大自然に囲まれて生きる老夫婦の姿を、娘であるドキュメンタリー作家のマルグレート・オリンがとらえたドキュメンタリー映画。

壮大なフィヨルドや力強く根付いた生い茂る草木など美しい大自然を誇るノルウェー西部の山岳地帯「オルデダーレン」。ドキュメンタリー作家で知られるマルグレート・オリン監督は、オルデダーレンに暮らす両親の姿をカメラに収める。美しくも厳しいノルウェーの大自然とシンプ

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映画評 ジョーカー🇺🇸

映画評 ジョーカー🇺🇸

『バットマン』のヴィランとして名高いジョーカーの誕生秘話をホアキン・フェニックス主演、『ハングオーバー!』シリーズのトッド・フィリップスで映画化。原作DCコミックにはない映画オリジナルストーリーで描かれる。

「どんな時でも笑顔で人々を楽しませなさい」という母の言葉を胸に、大都会で大道芸人として生きるアーサー。しかし、コメディアンとして世界に笑顔を届けようとしていたはずのひとりの男は、やがて狂気あ

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映画評 スオミの話をしよう🇯🇵

映画評 スオミの話をしよう🇯🇵

『ラヂオの時間』『THE 有頂天ホテル』の三谷幸喜が『記憶にございません!』以来5年ぶりの映画監督・脚本作品。突然失踪した女性と、彼女について語り出す5人の男たちを描いたミステリーコメディ。

豪邸に暮らす著名な詩人・寒川(坂東彌十郎)の新妻・スオミ(長澤まさみ)が行方不明となった。元夫で刑事の草野(西島秀俊)をはじめスオミを知る4人の元夫ら(遠藤憲一、松坂桃李、小林隆)が次々と屋敷にやってくる。

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映画評 エイリアン:ロムルス🇺🇸

映画評 エイリアン:ロムルス🇺🇸

リドリー・スコット監督による傑作SFホラー『エイリアン』のその後を舞台に、エイリアンに遭遇した若者たちの運命を描いたサバイバルスリラー。『ドント・プリーズ』のフェデ・アルバレスが監督としてメガホンを取る。

人生の行き場を失った6人の若者たちは、生きる希望を求めて、廃墟と化した宇宙ステーション「ロムルス」に足を踏み入れる。しかしそこで彼らを待ち受けていたのは、人間に寄生して異常な速さで進化する恐怖

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