しゅうと

毎週木曜21時に、新作映画の評論を投稿してます🎦

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映画評 哀れなるものたち🇬🇧

スコットランドの作家アラスター・グレイの同名小説を『ロブスター』『女王陛下のお気に入り』のヨルゴス・ランティモス監督によって映画化。ベネチア国際映画祭で金獅子賞受賞、アカデミー賞で11部門ノミネートなど今年度賞レースを圧巻している注目の一作は、いい意味できつい内容であった。 不幸な若い女性ベラ(エマ・ストーン)は自ら命を絶つが、天才外科医ゴッドウィン・バクスター(ウィレム・デフォー)によって、胎児の脳を移植され、奇跡的に蘇る。「世界を自分の目で見たい」という強い欲望にかられ

    • 映画評 異人たち🇬🇧

      山田太一原作の小説『異人たちとの夏』を『さざなみ』『荒野にて』のアンドリュー・ヘイ監督によってロンドンを舞台に改変し再映画化。監督の性的嗜好を全面的に反映させた結果、原作または大林宣彦監督版が持ち合わせていた面白さの本質からかけ離れた挙句、非常に説教くさい内容に改変された珍作だ。 原作小説及び松竹制作の大林宣彦監督による『異人たちとの夏』から大きく改変された変更点は、主人公がゲイとして描かれていることだ。アンドリュー・ヘイ監督自身がゲイであることが影響しており、アダム(アン

      • 映画評 ソウルフル・ワールド🇺🇸

        『インサイド・ヘッド2』の公開に先立ち、アカデミー賞2部門に輝いた本作が劇場初上映。ジャズミュージシャン志望のジョーと人間として生まれることを拒むソウル”22番”の冒険を描くストーリーは、人生について深く哲学された内容であった。 本作で度々登場する「煌めき」がキーワードとなっており、「生きる意味」として用いられる。ジョーはプロのジャズミュージシャンになり演奏すること。対照的に22番はやりたいことや夢中になれることを見つけられず、コンプレックを抱えている。結論からいえば、「煌

        • 映画評 貴公子🇰🇷

          『新しき世界』『THE WITCH 魔女』シリーズのパク・フンジョン監督による、莫大な遺産を巡る攻防に巻き込まれた青年と自らを”友達”と名乗る謎の男「貴公子」による執拗な追跡を描くアクションノワール。パク・フンジョン監督の作家性が垣間見える一方で、アクションの描き方には疑問符が湧く内容であった。 冒頭、囚われた貴公子が椅子に括られたところを脱出し、『イコライザー』のマッコールのような手際の良さで、敵を斬殺するシーンは、まさにパク・フンジョン監督作品に登場するキャラクターを体

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          映画評 変な家🇯🇵

          2024年、今年一番のサプライズは『変な家』に間違いない。YouTuber雨月氏による、家の間取りを用いて展開されるミステリー小説を原作とする本作は、封切りから4週連続のVを獲得し、興行収入も30億を突破するなどの大ヒットを記録している。だが肝心の内容は「この間取り、なんか変なんです」ならぬ「この映画、なんか変なんです」と言いたくなるような内容であった。 基本的に筆者のスタンスを明確にさせていただくと、酷評よりだ。大ヒットを記録しているということから、どんな内容なのか気にな

          映画評 変な家🇯🇵

          映画評 パスト ライブス/再会🇺🇸

          第96回アカデミー賞にて作品賞と脚本賞にノミネート、第81回ゴールデングローブ賞作品賞含む5部門ノミネートされるなど、賞レースで注目の的となった本作は、運命に惑わされる男女をロマンティックに描いた暖かくも切ない恋愛映画であった。 ノラとヘソンの関係性及び2人が紡ぐ人生を”運命”以外に括ることはできない。12歳で離れ離れになり、24歳でオンラインを通じて再開するもすれ違い、36歳でNYで直接再開する。韓国語でイニョン(인연)和訳すると”縁”や”運命”という言葉が度々、台詞の中

          映画評 パスト ライブス/再会🇺🇸

          映画評 あの夏のルカ🇺🇸

          2021年、パンデミックによって劇場公開が見送られ、ディズニープラスにて配信スルーされていた本作が、『インサイド・ヘッド 2』公開に先立ち、2週間限定で劇場公開が実現。楽しめる要素は多いが、マクガフィンの甘さと現実から離れすぎた理想には一言言いたくなる内容であった。 冒頭、人間とシー・モンスターが、それぞれ互いに恐れ合っていることが示されるシーンは、フランシス・ベーコンが提唱する思い込みを紐解く四つのイドラのうちの一つ「種族のイドラ」を放物とさせられる。人間がシー・モンスタ

          映画評 あの夏のルカ🇺🇸

          映画評 オッペンハイマー🇺🇸

          原子爆弾を発明したアメリカの物理学者ロバート・オッペンハイマーの栄光と没落の生涯を『ダークナイト』『TENET テネット』のクリストファー・ノーラン監督で映画化。第96回アカデミー賞で作品賞を含む計7部門受賞した本作は、クリストファー・ノーラン監督の集大成とも言える作品であった。 第2次世界大戦中、物理学者のロバート・オッペンハイマー(キリアン・マーフィー)は、核開発を急ぐ米政府のマンハッタン計画において、原爆開発プロジェクトの委員長に任命され、優秀な科学者らを率いて世界初

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          映画評 四月になれば彼女は🇯🇵

          川村元気による同名小説を、米津玄師『Lemon』など有名ミュージシャンのMVを手掛けた山田智和による長編映画初監督作品は、映画監督として厳しい船出となってしまった。 精神科医の藤代俊(佐藤健)のもとに、かつての恋人である伊予田春(森七菜)から手紙が届く。ボリビアのウユニ塩湖から出されたその手紙には、10年前の初恋の記憶がつづられていた。その後も春は、プラハやアイスランドなど世界各地から手紙を送ってくる。その一方で藤代は現在の恋人・坂本弥生(長澤まさみ)との結婚の準備を進めて

          映画評 四月になれば彼女は🇯🇵

          映画評 私ときどきレッサーパンダ🇺🇸

          2022年、パンデミックによって劇場公開されず、ディズニープラスにて配信スルーされていた本作が、『インサイド・ヘッド 2』公開に先立ち、2週間限定で劇場初上映。思春期ならではの悩みを描けてる一方で、ラスト主人公の選択に疑問が残る内容であった。 伝統を重んじる家庭に生まれ、両親を敬い、親の期待に応えようと頑張るティーンエイジャーの少女メイ。本当は流行りの音楽やアイドルが大好きで、恋をしたり、友達とハメをはずして遊んだりと、やりたいこともたくさんある。母親の前で本当の自分を隠す

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          映画評 デューン 砂の惑星 PART2🇺🇸

          第94回アカデミー賞で6部門に輝いた『DUNEデューン 砂の惑星』の続編。『メッセージ』『ブレードランナー2049』のドゥニ・ヴィルヌーブ監督が、前作に引き続きメガホンを取った本作は、駆け足で展開されるストーリーに、DUNEの世界観に没入しきれない物足りなさが際立った。 アトレイデス家とハルコネコン家による、制するものが全宇宙を制する砂の惑星”デューン”を巡る両家の戦い。ハルコンネン家の陰謀により一族を滅ぼされたアトレイデス家の後継者ポール(ティモシー・シャラメ)は、ついに

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          映画評 DOGMAN ドッグマン🇫🇷

          『グラン・ブルー』『レオン』のリュック・ベッソン監督による、幼い頃に暴力的な父により犬小屋に監禁され、犬との特別な絆を築いた少年のその後を描くバイオレンスアクションは、良い所もあるだけに、ダメな所も目立つ、惜しい作品であった。 ある夜、1台のトラックが警察に止められる。運転席には負傷した女装男性と、荷台に乗せられた十数匹の犬たち。「ドッグマン」と呼ばれる男ダニエル(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)は、多くの人に傷つけられながらも、犬たちの愛に何度も助けられてきた半生を語る

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          映画評 52ヘルツのクジラたち🇯🇵

          2021年本屋大賞を受賞した町田そのこ原作の同名小説を『八日目の蝉』『ファミリア』の成島出監督で映画化した人間ドラマ。描きたいことが十分に理解できる一方で、ドラマとして描いた方が良かったのではないかと思わざる得ない作品であった。 自分の人生を家族に搾取されて生きてきた女性・三島貴瑚(杉咲花)。ある痛みを抱えて東京から海辺の街の一軒家へ引っ越してきた彼女は、そこで母親から「ムシ」と呼ばれて虐待される、声を発することのできない少年と出会う。貴瑚は少年との交流を通し、かつて自分の

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          映画評 落下の解剖学🇫🇷

          カンヌ国際映画祭で最高賞パルムドールをはじめ、ゴールデングローブ賞で脚本賞と非英語作品賞を受賞、アカデミー賞では作品賞を含む5部門にノミネートされるなど、賞レースを圧巻させている本作は、次々と明らかになる夫婦の姿に釘付けとなった。 人里離れた雪山の山荘で、視覚障がいをもつ11歳の少年が血を流し息絶えた父親を発見する。当初は転落死と思われたが、その死には不審な点も多く、前日に夫婦ゲンカをしていたことなどから、妻であるベストセラー作家のザンドラ(サンドラ・ヒュー)に夫殺しの疑い

          映画評 落下の解剖学🇫🇷

          映画評 DUNE/デューン 砂の惑星🇺🇸 〜IMAX限定リバイバル上映〜

          第94回アカデミー賞で最多6部門受賞を成し遂げた傑作SFが、Part2公開に先立ってIMAX限定で再上映。IMAXスクリーンで見る迫力に加え、改めて見ることによって気付かされる本作の面白さにのめり込むこと間違いない。 全宇宙から命を狙われる、たった一人の青年、ポール・アトレイデス(ティモシー・シャラメ)。彼には未来を見る能力があった。宇宙帝国の皇帝からの命令で一族と共に、抗老化作用を持つ香料メラジンを採掘するべく、アラキスこと「砂の惑星/デューン」へと移住するが、ハルコンネ

          映画評 DUNE/デューン 砂の惑星🇺🇸 〜IMAX限定リバイバル上映〜

          映画評 ボーはおそれている🇺🇸

          『ヘレディタリー/継承』『ミッドサマー』のアリ・アスター監督による、神経症の男が怪死した母のもとへと帰省する帰路で、奇想天外な出来事に巻き込まれていくサイコスリラー。人物描写に掘り下げ甲斐のある一方で、ホラー描写に疑問を覚える内容であった。 日常のささいなことでも不安になってしまう怖がりの男ボー(ホアキン・フェニックス)は、つい先ほどまで電話で会話していた母が突然、怪死したことを知る。母のもとへ駆けつけようとアパートの玄関を出ると、そこはもう“いつもの日常”ではなかった。そ

          映画評 ボーはおそれている🇺🇸