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映画評 ウルフズ🇺🇸

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ジョージ・クルーニーとブラッド・ピットによる、同じ事件現場で鉢合わせした2人のフィクサーの共闘を描いたクライムアクション。MCUシリーズの『スパイダーマン』を手がけたジョン・ワッツが監督・脚本を務める。

重大事件を隠蔽する裏社会のもみ消し屋のジャック(ジョージ・クルーニー)は、ある男を始末する依頼を受ける。早速現場へ足を運んだものの、そこへもう1人の揉み消し屋であるニック(ブラット・ピット)が現れ、同じ依頼を受けていたことが判明。これまで一匹狼として暗躍してきたジャックとニックは渋々ながらも2人で仕事に取り掛かるが、次第に謎の組織の犯罪に巻き込まれていく事態に陥ってしまう。

正直な所、ジョージ・クルーニーとブラット・ピットのダブル主演で無ければ観るのを止めていたかもしれない。そういう意味では、60代に差し掛かったスターを拝むアイドル映画としてギリギリ成立していた。

映画冒頭、事件現場に駆けつけるジョージ・クルーニーや後から現場に乗り込んできたブラット・ピット、それぞれの登場シーンはイケオジの渋カッコいい雰囲気が醸し出している。幾千錬磨の裏社会を潜り抜けた風格すらもあり、ベテランとしての説得力もありそうではあった。

どのような仕事ぶりを見せてくれるか、はたまたバディムービーとして一匹狼の二人が協力することでどのような化学反応を観れるのか、だが上がった期待値は上映開始約20分くらいで打ち砕かれる。

「俺の方がすごい」マウンティングを出会いから終盤に差し掛かるところまで延々と繰り返される。出会いたてならまだしも、時間がたって成功が近づいてもなおマウンティングする様子は、「大学生じゃないんだから」と呆れさせられる。

いざミッションを遂行しようと動き出したかと思えば、腰痛と体力減衰によって、一瞬ではあるが手と足が止まる。その時の表情から老化が伝わり見ていて辛い。渋カッコ良いクールなオジサンが、実際は普通の60代であることを表したギャグを描こうとする意図は伝わったが、渋い雰囲気かつシリアスな展開で行うギャグとのミスマッチ感は否めない。残るのは老害さだ。

それでも一つ一つのミッションは遂行して行くのだが、ベテランとして見事な手捌きさやスマートさで乗り切ったというよりかは、体力勝負や威嚇といった突拍子の無さ。潜入も失敗しているため、ベテランの風格はもはや感じられない。勿論、死体を運ぶシーンや銃撃戦、カーチェイスなど技量を発揮するシーンはいくつかあったが、ギャグとして描かれているため、クールで重厚なお仕事映画を期待していると肩透かしを喰らう羽目になるだろう。

他にもイライラさせられるピーター・パーカー風のキャラクターや台詞で回収されてなかった謎を説明するラスト、カタルシスのない『明日に向かって撃て』オマージュなど、ツッコミどころを挙げればキリはない。

だが、ハリウッドを代表する世界的スターの共演によって何とか見ていられるものになった。改めて、ジョージ・クルーニーとブラット・ピットのスター性を再確認させられる映画体験であった。


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