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2020年9月の記事一覧
小説 ケア・ドリフト⑥
休憩中に、葛西が入院するとの知らせが入った。ちょうど、丹野と一緒に休憩していた東野介護主任の携帯電話に連絡が入ってきたのだ。東野はどうにも不機嫌で、常にムスッとしながら食事を摂っていた。急いで食事を済ませて、喫煙所に逃げ込もうと丹野が画策していたところで電話がかかってきたのだ。
「葛西さん、入院するんだって。家族さんが必要な荷物を取りに来られるから、対応よろしくね」
電話を終えると、東野はそう
小説 ケア・ドリフト①
山に囲まれた特別養護老人ホームやまびこに何台もの車が入ってくる。しかも午前六時三十分に、である。日の出の時間が四時台になるくらいの時期だが、梅雨明け前の空は厚くて黒い雲のせいか、まだ日が出ていないようにも思えた。この時間帯に入ってくる車の主は、そんな天気の影響を受けているからか、一様に眠そうな顔をしている。彼らは早番と言われる職員だ。
「おはようございます」
一人の男が挨拶をしながら、喫煙スペ