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【徹底解説】100人に1人が発症?「見えるのに、わからない」病気「相貌失認」

月曜21時から放送されている『ラジエーションハウスII~放射線科の診断レポート~』の三話見ましたか?

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そこで堀田真由さん演じる宮本すみれさんが、人の顔を覚えることができない病気「相貌失認」の患者として登場しました。

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実は「相貌失認」は100人に1人が発症していると言われる身近な病気であり、理解しておきたい病気の一つです。
2013年には俳優のブラットピットさんが相貌失認の症状があると明かしたことでも有名になりました。


そこで今回は「相貌失認」をはじめとして、視覚に関わる脳の認識障害である「視覚性失認」について詳しく解説していきます。

ラジエーションハウスIIの公式あらすじはこちら👇


「失認」とは?

そもそも失認とは、

「ある感覚を介して対象物を認知することの障害」

と定義されています。

例えば、視覚失認においては、目で対象物を見ることはできるが、それが「何であるかがわからない」という症状であり、視野が狭くなってしまったりする「目で見ること」そのものの機能障害とは異なります。
また、他の感覚は正常であるため、物を触ったり、音を聞いたり、食べたりすると認識することができます。

知覚機能に問題はないことから、「見えるのにわからない」という特殊な症状から、症状自体に気づかなかったり、病院に行くほどでもないと思い、放置してしまう人も少なくありません。

人間の「認識」は感覚によって行われるため、失認も感覚によって「視覚失認」・「聴覚失認」・「触覚失認」という名前が付きます。


視覚経路

視覚に関わる失認は、見えてるものを認識できない症状があります。
まずは、人間がものや人を目で認識する仕組みについてみてみます。

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網膜に投影された情報は、中脳の視神経を通り、外側膝状体(がいそくしつじょうたい)と呼ばれる神経細胞が集まる神経核に到達します。そこから脳に入り、視放線を伝わって後頭葉まで行きます。

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後頭葉は第一視覚野と呼ばれ、その後、モノの形や色を認識するため側頭葉へ向かう腹側視覚路と、空間におけるモノの位置や動きを認識するため頭頂葉へ向かう背側視覚路に分かれていきます。


視覚性失認

視覚性失認は、視覚情報を認識する脳の経路(後頭葉、側頭葉、頭頂葉)のいずれかに損傷した場合に起こります。

その原因は、事故による頭部外傷、脳の血管が詰まったり破れたりする脳卒中、細胞が増殖する腫瘍(しゅよう)や、膿がたまる膿瘍(のうよう)、神経細胞が減少するアルツハイマー病などです。

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視覚(対象)失認
視覚失認は、見えている物品が何であるかわからないという症状です。その中には、視界のものを一つの物体として認識できない「統覚型」と、物体として認識できても、それが記憶の中の意味と結びつかない「連合型」があります。

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損傷部位としては後頭葉の「第一視覚野」、または後頭葉から側頭葉へ情報を送る連合線維の一つである「下縦束(かじょうそく)」とされています。

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相貌失認
人の顔を認識できない失認です。人間が人の顔から特徴を抽出し、区別するという認識機能は、物体を認識する機能とは異なる仕組みとされており、相貌失認の場合、物は認識できても、人の顔がわからないという症状が起きます。

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損傷部位は、色や顔、単語を認知する「紡錘状回(ぼうすいじょうかい)」や夢や単語の認知に関わる「舌状回(ぜつじょうかい)」とされています。


街並失認
熟知しているはずの街並(建物・風景)を見ても、何の建物か、どこの風景かわからない症状です。それゆえ目印の建物が分からず道に迷ってしまいます。

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損傷部位は、記憶の符号化及び検索に関わる「海馬傍回後部」や「舌状回前部」とこれに隣接する「紡錘状回」とされています。


色彩失認
色名の知識はあるのに色を見てその色名を答えることができず、色名を聞いて該当する色を示すことができない状態です。

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失認性失読
純粋失読とも呼ばれ、文字を見て理解することができなくなる症状です。指でなぞったり、音として聞くことで理解できます。また、自分で字を書くことはできますが、書いた字を理解することはできません。

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損傷部位は、「紡錘状回」や側頭葉の下にあり、色や形状を認知する「下側頭回後部」とされています。


同時失認
個々の情報は認識できますが、全体でどのような状態であるかを認識できない症状です。

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損傷部位は、左「後頭葉前方部」、「後頭側頭葉」、もしくは両側「後頭葉外側部」とされています。



おわりに

今回は視覚に関わる「失認」について触れていきましたが、他にも聴覚、味覚、嗅覚、触覚、とそれぞれ失認はあり、思うように生活ができず苦しんでいる方々がいます。

地球をそのような方が生活しやすい環境にするには、まず多くの人々が「失認」という症状を理解すること、そしてありふれた病気であることを知ることが大切です。
そして、脳の病気は最悪の場合、死に直結します。自身に少しでも症状が疑われる場合はお近くの病院へ診てもらってみてください。


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