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視聴率とプランニング(2)

こちらの記事は 初めてテレビCMをやる前に知っておきたいプランニングノウハウ というシリーズの一つです。

-------記事一覧--------
「初めてテレビCMをやる前に知っておきたいプランニングノウハウ」

・はじめに
【初級編】
・テレビ広告の基礎知識〜市場と視聴率〜
・TVメディアプランニング:視聴率とプランニング(1)
・TVメディアプランニング:視聴率とプランニング(2) (今ココ)
【中級編】
・TVメディアプランニング:エリア戦略
・TVメディアプランニング:投下量規定の方法論
・テレビCMの効果をどう考えるか
・さいごに
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前編の続きです。
メディアプランナーのプランニング思考をなぞっていく回になります。

ターゲットコストを計算してみる

はじめに、、世帯視聴率でのプランニングが悪とも限らないのですが、
「世帯」視聴率というのは前回のクイズでも見ていただいたように、ご家庭でTVを視聴していることを反映したスコアです。
テレビの複数台所有やライフスタイルの変化により、個人がそれぞれの部屋でテレビを見ている、ということも多くなっていると思います。2020年現在、筆者の家にはテレビがありませんが苦笑、そういう家庭も珍しくなくなってきているでしょう、、

したがって、「世帯」視聴率だけでは誰が観ているのか?についての精度が足りないような印象を受けませんでしょうか?

そこでその精度を向上させる中で大事になってくるのは、定義したターゲット(例えばM1)の「個人」視聴率をきっちり把握し、プランニングしていくこと、と個人的には考えています。
(もちろんM1でくくっていいのか、男性20-34歳にも色々な人がいるよね、という議論はあると思いますが、ここでは深追いしません)


さて、ここからターゲットコストというものを計算してみたいと思います。

ターゲットコスト = M1にリーチさせるためのコスト

例えば、電通さん・博報堂さん・ADKさんのような広告代理店さんに見積もりを頼んだとします。
すると、下表のような見積もりをもらいました。(以下の数字はすべてダミーです。また、現実に近づけるために局数を増やしたので前回までの例とは別物と考えてください。)

画像1


この表だけ見ると・・
・この表は視聴率1%分(1GRP)の単価表なので、
局Eの全日型(= ¥9,000)で購入したら少ない金額でたくさん露出できる

ということになると思います。
ですが、この「局Eの全日型」がターゲットであるM1にリーチするのに最もコスト効率が良い、と言えるのでしょうか?

M1のターゲットコストを計算することで検証してみましょう。


ここで、ターゲットコストの計算にあたり、新しい考え方を一つ覚えていただきたいと思います。
広告代理店さんによって言い方が異なるかと思いますがTHR(Target/Household Ratio)という概念です。
日本語にすると「ターゲット視聴率の世帯視聴率に対する指数」となります。


具体例で見てみましょう。

今、広告代理店さんから追加情報として、世帯視聴率平均とM1の個人視聴率平均をもらいました。(こちらもダミーの数字です)

画像2

THRは「ターゲット視聴率の世帯視聴率に対する指数」なので、この2つの情報から計算することができます。

THR = ターゲット視聴率 / 世帯視聴率 

ちなみに、細かい点ですが、THRは1.00を超えることもあります。
母数が世帯視聴率ですが、エッジの立った番組では特定のセグメントの視聴率が世帯視聴率を上回ることもあるためです。


すべての局のすべてのゾーンについて、上の計算式に沿ってTHRを算出してみました。

画像3


「これを何に使うのか?」という点が気になるかと思います。
THRは世帯視聴率とターゲット視聴率の乖離を指数化したものです。
したがって、「THR」と「世帯コスト」を使うことで、ターゲット(M1)1%あたりのコストが算出できます

具体的には下記の計算式です。

ターゲットコスト = 世帯コスト / THR

上記の数字を用いて計算した表が下記です。
実際にM1にリーチするのにいくらかかるのか?を表している数字です。
それぞれの局の最安値を色付けしています。

画像4

こちらをみてお気づきになることはなんでしょうか?

・まず、局Eの全日型で購入したら少ない金額でたくさん露出できる、と思っていたけど、M1に対する露出1%という観点から見ると、
むしろ局Eでは逆L型が効率良さそうだ。(世帯コストでは高く見えるけど)

・局間比較では局Dの全日型(¥28,856)を軸にすると効率の観点からは良さそうだ

・局Aと局Cではヨの字を採用すると効率のよい出稿ができそうだ


と、世帯コストを眺めているだけでは中々わからなかったことが浮かび上がってきました。
実務上はこの5局すべてに出稿するのか、戦略的に選びたい局など、様々な事情があるため、このデータのみでの出稿プラン確定とはなりませんが、少なくとも世帯コストだけでの判断よりは精度の高い意思決定ができると考えております。


2回に分けるほど長くなってしまいましたが、ここまでがTVメディアのプランニングに視聴率がどう影響してくるのか、というお話でした。

次回以降は上記以外にテレビ出稿をする際に検討が求められる論点について、記載していきたいと思います。
それは
・どこのTVエリアに投下すればよいのか?
・どのくらいのGRPを投下すればよいのか?
といった内容をカバーするものになります。


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「初めてテレビCMをやる前に知っておきたいプランニングノウハウ」
・はじめに
【初級編】
・テレビ広告の基礎知識〜市場と視聴率〜
・TVメディアプランニング:視聴率とプランニング(1)
・TVメディアプランニング:視聴率とプランニング(2)
【中級編】
・TVメディアプランニング:エリア戦略
・TVメディアプランニング:投下量規定の方法論
・テレビCMの効果をどう考えるか
・さいごに

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