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トウモロコシと夏の記憶たち

夏生まれなのに夏が昔から嫌いなのは単純に暑さに弱いからだ。そんな私でも夏の時期の食べ物は好きで、特にトウモロコシが好きだ。昔「となりのトトロ」に出てくるメイちゃんの真似をして「トウモコロシ、トウモコロシ」と大声をあげ歩き回るご機嫌な私を見て母は呆れながらも笑っていたけれど、今でも心の中では連呼してしまう。


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栃木県にある祖父母の家は田畑に囲まれ言葉通りの田舎だ。隣の家まで約150mほど離れていて子供の足では果てしなく遠く、祖父母の家は「城の様だ」と小さい頃はずっと思っていた。畑では多くの野菜を栽培していて中でも好きだったのがトウモロコシだった。大きくずっしりと重いトウモロコシを懸命にかじり、誰が一番綺麗に食べられるかを4人の従兄弟と姉とよく争った。子供は無垢で優勝賞金がなくとも楽しいだけが勝ちだから可愛いものだ。

祖母がお土産として持たせてくれたトウモロコシを母は「トウモロコシご飯」にしてくれた。甘くてほのかに醤油がかおるそれは、私にとっての夏の味であり好きなものを最後に食べたいタイプの私は、どんなに美味しいデザートを食べ終えた後であっても、小さなお椀よそいトウモロコシご飯を食べるのだった。

今日、トウモロコシをスーパーで買った。本当は祖父母の家のトウモロコシを食べたいけれど、去年から一度も足を運べていないのが悲しい。でも黄色の美しいその姿を目にした瞬間、夏のドキドキした思い出がたくさん蘇った。夏休みの一大イベントだった祖父母の家。歳の近い従兄弟達と姉と、大きな家で走り回りかくれんぼをし、庭でバーベキューをして時には喧嘩をし、みんなで輪になり泣きながら夏休みの宿題を。そして必ず夜はトウモロコシを片手に花火をしたものだ。

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いつだって大人たちがそばで見守りながらも自由にさせてくれていた。たくさんの美味しいご飯を作ってくれた。そのありがたみに気がつくのは大人になった今なんだけど、思い出すだけで温かく感じる自分の子供時代を作ってくれたことに感謝している。


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買ってきたトウモロコシで早速「トウモロコシご飯」を作った。到底母の作る味には及ばないけれど、練習して、今度は祖父母の家のトウモロコシで作りたい。


早く会いにいきたい。


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