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散文詩

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2022年10月の記事一覧

魔法の薬 《詩》

魔法の薬 《詩》

「魔法の薬」

この世界で一番綺麗な水と
悲しみの涙と枯れない花を
混ぜて浄化させたら
魔法の薬が出来るんだって

そいつを飲めば苦しみの
無い世界に行けるって噂だ

小さな瓶に入ったその魔法の薬を
今夜 街外れの教会で配るらしい
もう通りには行列が出来ている

僕も汚れた服で汚れた髪を
撫で付けながら
その弱者の列に並んだ

高そうな毛皮のコートを着た
牧師が現れ

魔法の薬はもう残り少ない 

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独りぼっちのシンデレラ 《詩》

独りぼっちのシンデレラ 《詩》

「独りぼっちのシンデレラ」

独りぼっちのシンデレラ
この街の中
私の居場所なんて何処にも無いの
魔法もとっくに消えちゃった

ガラスの靴はスニーカーに
華やかなドレスはジーンズに
白馬の馬車は安物の軽自動車に
寂しげな月の光が
車の窓から差し込む

独りぼっちの王子様
この街の中
僕の居場所なんて何処にも無いんだ
シンデレラをずっと探してる

頭には白髪が混じり無精髭
汚れた作業服にワークブーツ

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Kiss Me Deadly 《詩》

Kiss Me Deadly 《詩》

「Kiss Me Deadly」

ブラックスリムのジーンズ
ラバーソールシューズ
U.K.ビンテージのロカビリージャケット
リーゼントが決まらない
不機嫌なTeddy Boy
バタフライナイフを
ポケットに隠し持つ

地下鉄のホーム
凄いスピードで
シルバーメタリックの
ピカピカの電車が通り過ぎる
巻き起こる風 
リーゼントが崩れちまう

テッズはお断り
そう言わんばかりに電車は
ぶっ飛んで行っ

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目に見えない障害 《詩》

目に見えない障害 《詩》

「目に見えない障害」

理解してもらえない だけでも
キツイけど

誤解される
普通じゃないと言われる
変だと言われる
怠け者だと言われる
ダメな奴だと言われる
頭がおかしいと言われる
虚言だと思われる

人の何倍も努力しなければ
ならない事が多すぎるのに
やっているのに
まだ覚えないのと言われる

全ての音を捨て去ってしまって
パニックになりそうになるといえば 神経質といわれる
絶対音感に近

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僕の普通と君の普通 《詩》

僕の普通と君の普通 《詩》

「僕の普通と君の普通」

君は朝起きて顔洗って歯を磨く
トーストと珈琲
仕事に行って帰宅して
家事を済ませて風呂入ってまた眠る
毎日こんな感じの普通な日々

僕は病院のベッドで目覚める
看護士さんに支えられ車椅子に座る

左手足は僕のものだけど僕の意思では動かない
目もあまり見えない
二重にボヤけた世界が見える
左耳は聞こえなくなった
1日のほとんどをベッドの上で過ごす
許されてる事は
窓から外を

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車椅子の少年 《詩》

車椅子の少年 《詩》

「車椅子の少年」

独りぼっちで死ぬのは怖いから
君が死ぬ時には僕も死ぬよ

息苦しくて目が覚めた
マスクもしてないのに
呼吸するのが苦しいんだ

僕は家の中の酸素が少なく感じ
フラフラしながら外に出る
大きく息を吸い込むけど息苦しくてたまらない

また同じ夢を見た

小学校の時の友達 坂本君だ
僕は思ってる事が上手く言葉にして喋れない
人が普通に出来る事が出来ないんだって

お母さんや学校の先生

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平和の鐘 《詩》

平和の鐘 《詩》

「平和の鐘」

大好きなその顔を見せてくれ
大丈夫だよって抱きしめて

奴等を追い詰め銃を撃つ
狙いを定めるポインター
ためらう気持ちなんて何処にも無い

響く銃声 瓦礫の山に身を隠す
僕が死ぬか奴等が死ぬか

感情なんてものは既に無い
また誰かの悲鳴 震える手 震える足

もうたくさんだ!
逃げ出したい 逃げ出したい

平和の為に此処に送られて来た
此処は何処?奴等は誰?

僕が撃たなきゃ奴等

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ハッピーハート 《詩》

ハッピーハート 《詩》

ハッピーハート」

傷だらけのZippo
小さく僕のイニシャルの刻印
20歳の誕生日に君からのプレゼント

ヘビースモーカーの僕はいつも君を困らせた
君と一緒に居ても煙草

君は服を選ぶのに夢中
どう?似合う?
僕は ごめん煙草行って来るよ

食事中も煙草
歩きながら くわえ煙草

私といる時くらい煙草控えたら
私と煙草とどっちが大事なの
不機嫌な彼女

そんな君からのプレゼント
嬉しいけど 何故

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Disorder 《詩》

Disorder 《詩》

「Disorder」

失望と言う列車 
絶望と言う名の席

僕に送られて来たチケットは
どうやら この席らしい
蛇皮で出来たそのシートに
深く腰掛け
ライ麦畑でつかまえて
を読んでいた

隣に座ったのは長髪の老人
ドクロの首飾り
Dr . Martensのブーツに
HATE • LOVEの文字

Joy DivisionのDisorder
口ずさんでご機嫌だ
僕は魂を手にした
だけど感情を失った

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神様はアスペルガー 《詩》

神様はアスペルガー 《詩》

「神様はアスペルガー」

神様はアスペルガー
毎晩 夜空の星を盗んでは
お気に入りの女の子にプレゼント
空港通りにある店の
ウェイトレスに夢中

女神は鬱病
家出したまま帰って来ない
DESTROYって書いたTシャツ着て
ランブレッタに乗って行っちゃった

妖精は適応障害
魔法の使い方がわからない
何度教わっても上手く出来ない
今年も留年決定だよ

太陽は注意欠陥多動障害
自分の光を調整出来ないん

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奥さんは花泥棒 《詩》

奥さんは花泥棒 《詩》

「奥さんは花泥棒」

小さなガラスの器に入った 
可愛い花が届いた
僕はそれをリビングの出窓に飾った

この場所は奥さんの
お気に入りの場所
ソファーに座り猫を抱いて
窓から外を眺めてた

今度はいつ家に来るのかな…

相変わらず奥さんは
病院と実家を行ったり来たり
難病ゆえ 治療法も無い
副作用の大きな皮下注射はやめて
もっぱらサプリメント漬けの日々

血液データはそれほど悪くはない
一時期40

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Love & Peace 《詩》

Love & Peace 《詩》

人工知能で操られた世界で
全ての者が差別化された
僕は選ばれる事無く居場所を失くした
君の掲げたLove & Peace の旗を見たのは丁度そんな時だった

その旗は風を受け国旗の様に
力強くはためいていた

パラレルワールドの入り口を探す旅
同志は集い物語は始まった

僕等は風に導かれ西へ西へと向かった
峠でテントを張り
焚き木を灯し
フライパン片手に
未来を語り夢を見続けた

シンギュラリ

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