売れるシナリオの条件

これまでドラマシナリオを書いてみたいと思ったことはなかったのは、これまで心揺さぶられるほど面白い日本のドラマをみたことがなかったから。

90年代前半にニューヨークへ渡って、時々しか日本に帰らなかったので、日本のドラマを見る機会もなかったことが原因である。

それが「大豆田とわこと3人の元夫」を見て衝撃を受けた。


この痛快な会話のテンポとキャラクター作り。半端じゃない。
それもそのはずで、脚本家の坂元裕二氏はこれまで様々な大ヒット作品を生み出した巨匠だったのを全く知らなかったのだ。

外国暮らしで日本のドラマを見たり脚本を読む機会はごく限られている。U-NEXTなども IPアドレスが日本じゃないと、視聴できない仕組みになっている。

それを今回は10話いっぺんに観た上に、「花束のような恋をした」も観た。


タイトルの付け方がうまい

まず第一に「大豆田とわこと3人の元夫」はタイトルの付け方が絶妙にうまい。

タイトルって、本の題名とカバー、広告のキャッチコピーみたいなもので、作品の売れ行きの8割ほど占める(主観)。

映画では「キューティブロンド」というタイトルがあるが、原題は「Legally Blond」つまり「合法的な金髪」。金髪の主人公がハーバード大学の法学大学院(ロースクール)へ行くストーリーだが、成功の多くはこの「Legally Blond(合法的な金髪)」というタイトルに起している。この二つの異質で意外な単語の組み合わせが効いた。

日本語では本当に残念なタイトルになってしまった。


ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』


これもすご腕のタイトル。

軽いタッチで、ユーモアと共感が湧きそうなドラマだとすでにタイトルが語っている。


キャラクター作りがうまい

「大豆田とわこと3人の元夫」はキャラクター作りがうまい。
3人のそれぞれの元夫がみんな違う性格で、セリフもそのキャラクターをしっかり反映。さらにとわ子の親友、綿来かごめのポーッとした、味のあるキャラクターが場面場面を面白くしている。


セリフが泣かせる

SNSで話題になるほどのセリフの数々。会話のセンス絶妙。

「泣きながら、ごはん、食べたことある人は、生きていけます」

「たいがいの犯罪者は、自分を被害者と思うことから始まりますけどね」

100円盗んだら犯罪だけど 100回離婚しても犯罪じゃない。

重厚な映像と骨太のストーリー

第一話からの抜粋は以下の通り。

" ハイツ代々木八幡・大豆田家の部屋(夜)風呂場にいて、浴槽に手を入れているとわ子。冷たくて、ひーっと思いながら部屋に戻る。

唄がパソコンに向かっている。
唄「無理だ、おばあちゃんのメール開けないよ」
とわ子、外れたまま立てかけてある網戸を見て。
とわ子「網戸外れるし、お風呂壊れるし、網戸外れるし、何でこんなひどいことばっかり続くのかな」唄「直してくれる恋人作ればいいんじゃないかな」
とわ子「極論を言いますね」
唄「一般論です」
とわ子「今から?今これ外れた状態で今から誰かと出会って、観覧車とか乗りながら親しくなって、そのかん、ずっと網戸外れっぱなし?仮に交際したとしよう。その後どうすんの。あ、もう網戸直ったんでこの関係解消しますねって言うの?わたし、そんな冷たいこと言えないな。だって一緒に美術館行ったし、長電話もしたし、観覧車乗った思い出もあるんだよ?」

唄「じゃ、業者ですね」
とわ子「業者ですね。網戸の業者とお風呂の業者って一緒かな」
唄「ねえ、おばあちゃんのメール開けないって」棚の上に骨壺と母の遺影がある。とわ子「パスワード変えればいいでしょ」
唄「パスワード変えるにはね、見てごらん」二人、パソコンの画面を見ると、設定画面に『はじめて飼ったペットの名前は?』の質問がある。とわ子「ペットの名前?わたし、設定してないよ」
唄「おばあちゃんにも出来るわけがない。多分元夫が設定したんじゃないかな」とわ子「(顔をしかめ)どの」唄「さあ、三人から直接聞くしかないでしょ ”


坂元裕二 (2106-02-07T08:28:15.000). 大豆田とわ子と三人の元夫 

坂元裕二氏の作品は、映画でもドラマでも、観客を飽きさせない。

こんな素晴らしい脚本を目指すなら、シナリオの勉強もしてみたいなあと思わされる。

今後の彼の作品がすごーく楽しみだ。

#テレビドラマ感想文

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