鷹枕可

短歌集団「かばん」に参加、疾病の為退会。 詩誌「金澤詩人」創刊号より第4号迄へと参加。…

鷹枕可

短歌集団「かばん」に参加、疾病の為退会。 詩誌「金澤詩人」創刊号より第4号迄へと参加。 爾後、ネット詩界隈を輾転とし、 自由詩投稿掲示板「文学極道」に西暦2015年より投稿。 摂食障害、精神分裂病を発症後、今に至る。

記事一覧

苅萱

昔、高野に西行ありき 庵にていみじうおそろしき蛇いづれば、 母こそ 蜿蜒たるみぐしより火を吐きて御たまはりける、 ちちうへ、 ははうへ、 乞ひしかりけるへ 珠の緒に…

鷹枕可
6時間前
2

水葬人夫

薔薇の刺靑のある右腕が 錨の縄を投げる 少年は 喉元まで癩病に愛されていた 水底に沈む嬰児の様な石達――或はサイレンのこだまたちは 排水路へと續く濁流の中 銅錆色の…

鷹枕可
1日前
1

思想,

今日の、 偽物の自称右翼、保守主義者達を一掃しなければならない。 求められ得る眞の右翼とは―― 恒久的に軍事力を放棄し、非核三原則を再批准し。 一切の侵略能力を保持…

鷹枕可
1日前
1

2024/08/23,文語・口語試験作品十首,

文語: 君孤独なる暗殺者たるべし人力機関銃堤て見む 神ならず 精霊は煉獄へ。修道長は地獄へとひきしぼりをりし両翼 宇宙飛行服の古代劇場の気息未來にはたゆまざるき…

鷹枕可
2日前
1

敗戦忌

自決を遂げた少年の 血が蟠っていた 没落へつづく青年の 愛が充ち渇いていた 夕――死者がさわがしくなる刻限だ 誰も俺の名前を知らない 俺を 捜している輩は五万といる…

鷹枕可
8日前
2

301号室

死の森へと密葬をされた 鏡面反射の双子達へ 繙かれて ほつれ 續けてゆく 後髪の光冠がありましょうか 櫃からは車百合の音が 輾転と燃える車馬のたてがみのように くるめけ…

鷹枕可
9日前
5

暗室より

  むらむらと憎しみ沸きし雲居ゆおとづるは青年か迦陵頻伽か 酒屋燻製肉の受皿へ霜差しぬ、うつくしき小羊の櫛毛 マグノリア属朴の花著しき 歌へはどこで履きたがへる…

鷹枕可
9日前
5

2024/08/15,オンライン発表作品十首,

人草絶ゑて弔鐘へ祷る慰霊碑へ霙 皇帝とは誰なるか 敗戦忌 すめらみことへゆくすゑをしめし若き柩工は死せり 戦犯とは不肖の綽名われいくさに倚らざれども死なず 國民…

鷹枕可
10日前
2

國敗れて

   譲位せし偽花魔王蟷螂の肩さびし。燕子花図のつだつだ 上村松園花筐へ狂れつほほゑむをみなありける。眉墨の面 岩倉村狂人病院。碁を指しき縁側にひろがりし枯山水 …

鷹枕可
2週間前
10

2024/08/06/,オンライン発表作品四首,

原爆忌やけのこりたる更地へところがりまはる蝙蝠傘の骨 群衆はオリンピアへ 競技場円天井のうち暗闇へ松明を見、 焼け焦がる懐中円時計へ分針八時十五分のまま痙攣す …

鷹枕可
2週間前
3

2024/08/02,即興駄歌十首,

断頭台は希望にみちみちてをり命令と国家とその他爆弾に くらきとはいへどあまりに指に数ふ朋あらず赦川凡雄氏 井底へつづく木梯子浅からずうちこぼたれし地下墓へ椿 陰…

鷹枕可
3週間前
2

平和への寓意

  寧ろ遅過ぎたる死なる薬品の壜ゆ硝酸銀泛ぶ汝 憲兵 薔薇屑へ脆き襟紙の咽輪剥ぎ捨てり。窒息のむらさきなすガーゼ  絹の覆布蜘蛛の網目に囲まれて蘇りさへも死なり…

鷹枕可
3週間前
9

2024/07/28,オンライン即興詠草十首,

孤立無援の唄など笑ふみづからを笑ふ 黒きメリヤスの縦糸 ほほゑみの基督画を偸みゆけり銀三角と誤りて呼ぶ亜麻野 煌々と葬りの櫻焼き畳ぬ青年は髪靡きしかたへへと一瞥…

鷹枕可
4週間前
1

偽基督

   洗礼未明に晩餐曲立ててリュートの第一絃がくらすぎる 薔薇唐草琵琶の胴にて漆黒の洞刳りぬかる光ぬめりて 歌はざればたましひかぎる秋蜻蛉四つ翅たてて水の枝にた…

鷹枕可
1か月前
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「主は冥府へと」

目を傷むるとき眩き噴水像の裸婦、かどはかされきつがひの雄鶏 蝶蝶の翅脈四枚ふれあひぬ交合憎しみきは薔薇と王 音樂の嬰ひびくなり教会旋法に渦巻きぬ混声の女男  …

鷹枕可
1か月前
10

鵺・「蒼いマリア」へ

  生ききはらむとせしはいつ布袋葵黒くちぢれり、希臘人の髪 蜜蝋滴らす文へ血文字扼し督子けがれしらずにも領を指しぬ 眞菰闇へだてて河骨しらじらし一度とて屍荷はざ…

鷹枕可
1か月前
14

苅萱

昔、高野に西行ありき

庵にていみじうおそろしき蛇いづれば、
母こそ
蜿蜒たるみぐしより火を吐きて御たまはりける、

ちちうへ、
ははうへ、

乞ひしかりけるへ
珠の緒に
攀ぢりて零れる
姥捨の櫻の枝折こそを手向とぞおもふ、

僧都、数珠手繰りつつ寒念佛唱へて払ふ淡雪の、

碑こそ観ゆる
見ゆれども、
ははうへは先立ちたまふなり、

ちちうへいづこ
苧環のしがらみからむわがゆびへ
柄杓星こそかけて

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水葬人夫

薔薇の刺靑のある右腕が
錨の縄を投げる

少年は
喉元まで癩病に愛されていた

水底に沈む嬰児の様な石達――或はサイレンのこだまたちは
排水路へと續く濁流の中
銅錆色の、
緑靑の涙をしたたらせていた

呼ぶ声――水門へと身を乗り出して狂った女が叫ぶ

――マリオ、マリオ!あなたはどこ、マリオ!!

濁流の底は、
その目を渦巻かせて
叫びさえをもかき消してしまうだろう

――復、復だ、今日も復一人、

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思想,

今日の、
偽物の自称右翼、保守主義者達を一掃しなければならない。
求められ得る眞の右翼とは――
恒久的に軍事力を放棄し、非核三原則を再批准し。
一切の侵略能力を保持しない、
唯一の非武装国家としての矜持を新たにすることに拠ってのみ、
承認され得るだろう。

そして
その恒久‐平和‐宣言の主体とは、
過去の罪科の象徴である天皇であり、われわれ自身である。

時には、上記非武装国家主義を守り遂せる為に

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2024/08/23,文語・口語試験作品十首,

文語:

君孤独なる暗殺者たるべし人力機関銃堤て見む 神ならず

精霊は煉獄へ。修道長は地獄へとひきしぼりをりし両翼

宇宙飛行服の古代劇場の気息未來にはたゆまざるきのふ

誰が昨日を切開くのか暗紅の鞄へ隠し持つ 汝抵抗家

血腥き七月の火事にヴェルサイユ鏡像の間へ立ちて后、君

口語:

機械計算室へ棺はならぶ黒白の点文字を呑み吐き出しては

目的は火星の砂へ鉄の骨の足ひろげて着地する試験塔

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敗戦忌

自決を遂げた少年の
血が蟠っていた

没落へつづく青年の
愛が充ち渇いていた

夕――死者がさわがしくなる刻限だ

誰も俺の名前を知らない
俺を
捜している輩は五万といる

夏草・秋草・冬草・春草
花鳥風月・宿命不在

わが身をいづる闇いづれ
白七草のなきがらとも見ゆ

誓言――汝、刃を打ち交し
われを吾すべし

深間へ到る途上へと転がりいでたる
貴様の貌を

ゆめ忘るべからず、

301号室

死の森へと密葬をされた
鏡面反射の双子達へ
繙かれて
ほつれ
續けてゆく
後髪の光冠がありましょうか
櫃からは車百合の音が
輾転と燃える車馬のたてがみのように
くるめける乱鐘の舌のように
泛び上がってくるのでございましたが
迷子迷宮の手毬唄の三千浬目程へ到りますなら
三等客車の
車掌の掌へ落されました切符鋏から
018号車672号室の扉まで敷かれました
天鵞絨色の絨緞の闇の下には今も
空襲区域がひ

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暗室より

 
むらむらと憎しみ沸きし雲居ゆおとづるは青年か迦陵頻伽か

酒屋燻製肉の受皿へ霜差しぬ、うつくしき小羊の櫛毛

マグノリア属朴の花著しき 歌へはどこで履きたがへるのか

精霊の秋指して煉獄めがけ駈けゆけりうちつけに競争手

はなはだしく熟れたり枇杷の樹の一果たれ指しぬ石庭

弱法師 途方へ散る花はいづくのはなぞかなしみの瞼

白梅の沖へ寄す車輪ひとつ、炭俵担ひし人夫もむかし

擬宝珠華欄干に咲き

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2024/08/15,オンライン発表作品十首,

人草絶ゑて弔鐘へ祷る慰霊碑へ霙 皇帝とは誰なるか

敗戦忌 すめらみことへゆくすゑをしめし若き柩工は死せり

戦犯とは不肖の綽名われいくさに倚らざれども死なず

國民総戦犯ゆゑに絶たれたる昨年へ忠魂碑はたれのはか

われ義しき國民なれば崇拝すクリスティアーノならず 墓を暴かむ

復活祭へにがき蕗煮ていもうとはロザリオなどゆめかけざらむ

父殴てる馴犬哀し。頸枷に「愛われを創れり」彫られて

神神に

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國敗れて

  
譲位せし偽花魔王蟷螂の肩さびし。燕子花図のつだつだ

上村松園花筐へ狂れつほほゑむをみなありける。眉墨の面

岩倉村狂人病院。碁を指しき縁側にひろがりし枯山水

庭梔子の花しらじらと不吉なる係累絶たれ末嗣は 底翳

李夫人が曲舞などわすれたる頃に振り紛る秋紅葉が赤すぎる

いつしらに秋の近江の忘草ふる霜を梅雨といひきたれかは

火蛾図 掛軸のごとはたはたと揺る扇風機風切羽五枚

ポスター展見

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2024/08/06/,オンライン発表作品四首,

原爆忌やけのこりたる更地へところがりまはる蝙蝠傘の骨

群衆はオリンピアへ 競技場円天井のうち暗闇へ松明を見、

焼け焦がる懐中円時計へ分針八時十五分のまま痙攣す

速水御舟「炎舞」へ白き襯衣の袖かかりきつかのまへ靑年 溶け ず 

2024/08/02,即興駄歌十首,

断頭台は希望にみちみちてをり命令と国家とその他爆弾に

くらきとはいへどあまりに指に数ふ朋あらず赦川凡雄氏

井底へつづく木梯子浅からずうちこぼたれし地下墓へ椿

陰画に継母あかき睫を臥せやらで金糸雀愛でり。酸銀の眸

「石鹸売り〼」看板立てきおとうとの踝花樫色に染まりて

あはよくばゆけ古戦場昔刑場今花街へ紀伊國が女男

劇俳優死して常ならずも咽喉潤せり。都忘鳥たつみづ

庶子南方軍司氏へ昨年の

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平和への寓意

 
寧ろ遅過ぎたる死なる薬品の壜ゆ硝酸銀泛ぶ汝 憲兵

薔薇屑へ脆き襟紙の咽輪剥ぎ捨てり。窒息のむらさきなすガーゼ 

絹の覆布蜘蛛の網目に囲まれて蘇りさへも死なり 民よ 

傷痍軍人に欠けたる肩 兵舎ありて菊花へ蜂入りき犇き 

議会院議員の絞首 菊章黒く胸板より吊られをりき

政治家諸君 ひざまづけり宰主へ愛に溢るる蜜の河別つとも 贄 

議会つどへる死者を揃へ壁の競鳩場円筒建築廻れり

苦き

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2024/07/28,オンライン即興詠草十首,

孤立無援の唄など笑ふみづからを笑ふ 黒きメリヤスの縦糸

ほほゑみの基督画を偸みゆけり銀三角と誤りて呼ぶ亜麻野

煌々と葬りの櫻焼き畳ぬ青年は髪靡きしかたへへと一瞥す 

闇の音樂堂へ静りかへる漣のピアノ一臺四つの脚もて

しづやかに國亡びゆき建国記念日へ起つ椅子 喪章

空襲に敗れき焼野なほも生き延ぶるもの 平和はつかのま

祝祭パリ五輪式典のはなやぎにいづれにせよ紛争はつづきゐる

目的を世界

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偽基督

  
洗礼未明に晩餐曲立ててリュートの第一絃がくらすぎる

薔薇唐草琵琶の胴にて漆黒の洞刳りぬかる光ぬめりて

歌はざればたましひかぎる秋蜻蛉四つ翅たてて水の枝にたつ

先づをのづ弑するべきこころ殊玉ゆがまむ閉塞隅角緑内障

たまかぎる夕顔眼科院に茄子紺の歯そめて食事せり秋の医師

寧ろみづからを救はむとして亡びぬ蟻坂綾大四十七歳

團欒に加はるも佳し血の掟釦の針へ拇指捺しき継嗣

虹鱒塩へ漬け贈

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「主は冥府へと」


目を傷むるとき眩き噴水像の裸婦、かどはかされきつがひの雄鶏

蝶蝶の翅脈四枚ふれあひぬ交合憎しみきは薔薇と王

音樂の嬰ひびくなり教会旋法に渦巻きぬ混声の女男 

キリエ 冥府降りぬいもうとゆ預からむ箱の鍵 エリシオン

水渠さざなみ寄するおとうとの肺炎病みき訪れり医は

死体折りかさなりき埋めをりきに加ゆる橄欖の苗も死なめ

平和ゆゑに看做しきは敵優生の母亡き薔薇園を憐れめ

外廊ゆ円庭へ

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鵺・「蒼いマリア」へ

 
生ききはらむとせしはいつ布袋葵黒くちぢれり、希臘人の髪

蜜蝋滴らす文へ血文字扼し督子けがれしらずにも領を指しぬ

眞菰闇へだてて河骨しらじらし一度とて屍荷はざる馬

死霊、あるいは襯衣浸しき塩素酸へ泛ぶ十指の生づめ

仏炎苞のごと襟立てる青年裏見するは硬き靴、蹄鐡

白き薔薇苗の末ささくれて割く死の床にいきわかれのおとうと

法蓮華百草百花曼荼羅図に背むきて聖靈の鐡の髪

青銅の門くぐり遭は

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