苅萱
昔、高野に西行ありき
庵にていみじうおそろしき蛇いづれば、
母こそ
蜿蜒たるみぐしより火を吐きて御たまはりける、
ちちうへ、
ははうへ、
乞ひしかりけるへ
珠の緒に
攀ぢりて零れる
姥捨の櫻の枝折こそを手向とぞおもふ、
僧都、数珠手繰りつつ寒念佛唱へて払ふ淡雪の、
碑こそ観ゆる
見ゆれども、
ははうへは先立ちたまふなり、
ちちうへいづこ
苧環のしがらみからむわがゆびへ
柄杓星こそかけてはおもへ
星読は告げり
ながかたきこそは
なれ履みし幾月歳の影にこそをりぬ
宿業いづれなるか、
珠影!
刹と払ひき宿痾の御手に
係り纏はるくちなはのかげのあり
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