鷹枕可

短歌集団「かばん」に参加、疾病の為退会。 詩誌「金澤詩人」創刊号より第4号迄へと参加。…

鷹枕可

短歌集団「かばん」に参加、疾病の為退会。 詩誌「金澤詩人」創刊号より第4号迄へと参加。 爾後、ネット詩界隈を輾転とし、 自由詩投稿掲示板「文学極道」に西暦2015年より投稿。 摂食障害、精神分裂病を発症後、今に至る。

最近の記事

廻廊遠近法

   カナンへつづく一週間の燔祭を醒めて組せず兵士の主へ やがて絶えなむ旧約へ宣誓す青年きさまこそわが敵 蜂窩蘂青く天使へ棚引きぬ夜には夜の自由律の箱 蜜蜂の屍受く手世界の質量は加へられたり一瞬に死す 戦争眞后テレヴィ写る防衛兵の頬打ちて蘭科植物 滅亡す民族へ清からず聖絶の根絶命令くだせる神に 神に惑ふひとり依代神霊の託宣のもと殺めたまふ隣人 隣家喪家へユダヤびと棄民の果に無花果のごと潰し 畜 戦争経過つなぐ受話器の音信の途絶ゑたり投下さる原子爆弾  カナン

    • 2024/05/01,十首,『チェンソーマン短歌、なのか!?』

      敗戦ゆゑに革まらず事件事故案件治めて警察庁安心と死ね 正義悪しき綺語に外ならざる時をこの正義漢逞しき項 一茎の苗菊切つて泡立ちぬ青年の口吻へ死の正義 拳闘士勝利の新聞紙一面苦苦し 袂雪へわかちぬ昨日 闘牛の不戦敗 闘鶏のみなごろし 舌に垂南天図の苦かれ かつて聖霊ありき緋の窓へ嵌めころす翼廊の十字画 友愛のかなし 今南北戦争に別たる火夫二人頬打ち合ふ 壁白亜混淆岩の打ち放し程なく歩哨影交はし立つ オリンピア失敗つづきて失脚す担当官の耳朶そぎ落せ ベルリンの繁

      • 花畢ぬ

        世界の終極つまりは冬一個の絶滅収容所とし地球ありき 花畢ぬ 名にいみじくも時の華さくらみづうみひてる汝よ 今際の際に哀悼こそは隠さむ 蝶番の扉が開かるる 博覧強記ならざることのうつくしき白痴詩神宿し時終へる か 孤独史を天文に刻み一切を憎しみ ああ、憎んでゐるよ 副葬品目にありつたけの月を盗め 薔薇窓に靴箱 極彩の蝶のしかばね かつてみな始祖鳥に尾羽ありきてふ 鸚鵡貝螺旋階段乳色の骨細緻に編み半球の穹窿も旧るか 百科事典のごとこどもなす犀利叡智を宿すまま永逝し

        • 立冬雪景図

             唐獅子牡丹図屏風たてるそびら正中線へ等分されき 胸像に鳩尾・骨なく背信に嘗て突き咲きぬ唐菖蒲 秋枯葉炸薬匂へり鼻を突く百合科植物ベルの鐘舌 暗殺へ瞋る喝采すもおなじ僭主へ放つ蚊帳吊の花 百年を繰返し日章の印血染めの褐色 死者よ殖やせよ 戦争の瞬く間にも草摺の色流れ弾受く若者のかず 敗戦と戦勝別つ軍ありき今國家へ殉ずことのをろかに 西洋犬種交配図鑑に神ならざる人間の傲り讃へ進化論 チェホフ観劇者並め椅子へ夏咲きの扁桃花散り靑 抒情歌の叙事詩へ代る頃合に殺

        廻廊遠近法

          短歌十首連作,「百人一首殺人事件」

          毒殺眞夜ふかき水銀燈列に青年あぶくくちびるにふき 令和アンソロジイ編纂の主宰稠密推理など展開せしことを知り 探偵肘掛椅子ゆたちあがり百里千里眼もて見むに犯人 密室劇退行現象の過去へ帰らなく百人一首殺人事件 歌人一人ごとことごとに当て嵌む被害者死者百人をかぞへり 探偵曰「洞察は霊、推理は舌に宿る被疑者は外にゐる!」 運行表秒刻みに特急列車こだまに乗りあはず正確の死は 意外なる犯人 意外なる犯行 復讐に銃痕のくちづけを 真犯人は皆殺しき理由を告げき或る医学

          短歌十首連作,「百人一首殺人事件」

          聖霊序論

          眞夜眞青少年のみぞおちに陰る肋骨襯衣につつめど冷めず  日時計に楯る一人影差しきに持つ枯無花果の襤褸翻翻 青紫陽花一枝を精霊泛ばれずに受く水中鍾乳洞に       鐡の向日葵繊毛なせる針植物園にベル悲鳴せり死生学 受難黒き六つの十字架に円形舞踏図譜足摺踏みき 鳥羽搏羽墨染の草花図つゆくさ百の苞つづめやすらへ 国家遠近法内閣議事室へ時計刻みに黒き舌・蘭科 軍歌くちびるに中て暗緑の自衛軍死ね、といはずきみら ならず英霊泪かきやり遺書に母子つながりつつましく死ね、と

          聖霊序論

          2024/04/16オンライン発表作品四首,

            少年は展望室に青年は燈臺がいしずゑへたちぬ、岡に岡 叛天使はらめる暁の立葵青く告解の十字架へ斑なるみどり ダンテ・ゲイブリエル・ロセッテ画伯憎しみき群天使、葡萄、鳩尾 水式時計たたふ羽根散る憂慮あさからず正午門・緑橄欖花 

          2024/04/16オンライン発表作品四首,

          2024/04/12オンライン即興作品七首,

          貝殻の塔階段まで三浬みづつかば水没寝臺へ夫人・夫 支那の売人に罌粟の花燃ゆるものは愛・麻酔・飼犬 くしやくしやにひらく水芭蕉枯花より晩冬落雪鳥花図に目 大時計十一時五十分ほどをフォークロアの花束の静まりて眠れ 即現実手に余る地下劇場102階まで想像力の世紀よみがへれ おほよそは自我の固執にとどまりてあつらへらる現実に止まる 箱庭の中へ死にゆきぬ智慧の実も腐りきつたり 食卓のうへ

          2024/04/12オンライン即興作品七首,

          2024/04/08オンライン発表作品二首,

          一オクターヴ元素の螺旋階級説空気壜ゆいづ硫黄の花 金属精製第一天月より銀を第五天金星より銅を創造したまへり

          2024/04/08オンライン発表作品二首,

          ライトヴァース風実験短歌・二首

          丸文字の中の競争 屋外恐怖症のビューティフル・ドリーマー達は 光から目をそらしなさい明日も生きているひとはだまって

          ライトヴァース風実験短歌・二首

          2024/04/04オンライン既発表作2首,

          日時計に影 梶尾舟じりじりと炙れ陽炎階段へ靴躙る釘 春暁落雪図庇はばつらぬきとほるまで槍穂を著けよ聖霊ふたり

          2024/04/04オンライン既発表作2首,

          天使虐殺令

             死を願ふ青年すくよかなる頸筋へ輪光の日蝕円冠 断念の琴瑟の絃指もつれしたがはなば死ね鐡漿の木犀 蘇鉄緑の海百合に肖鉛白の膚婦人爽つ木の間佇ちをり 鐘楼の根あらは鉄骨へ錆ひづみ五臓六腑納む肋 姦淫の指組み諸手差すその神の磔刑像は酢に研かれき ヴェネツィア幻想水夫絞首のかたちに腕巻揚ぐる一本の錨 鞦韆すなり貴婦人画の森に画架・額縁の百の肖像 水浴に潜水鏡の貌さかしまに沈む青年に空間恐怖 絶縁と結縁に塩浮く婚姻指環へ罌粟の香充ちて子午線 遠雷に翅拍つ蝶鉛弾の

          天使虐殺令

          2024/03/29オンライン発表作品二首,

             乱視鏡錯綜す百合海岸にみひらく睫零る烏賊墨・自動車 漆月海遊館につづき辺獄牢をさす白蜉蝣帷子より躑躅   

          2024/03/29オンライン発表作品二首,

          2024/03/25オンライン発表作品二首,

             機関塔より少年少女矮星の終はりに捲る石榑・靴先 サン・ジャック石楼塔に丹色燃ゆ狭間飾の焔の鏤刻あり

          2024/03/25オンライン発表作品二首,

          短歌連作五十首,「聖トマス『蛇』」

             口に噛む剣切先咽喉許を越ゆ舌をもてひと操れる神とは 回る智天使を失楽の園の西へ置くその炎の舌 平和より剣を齎すために地に満ちてよろずびと狼の闘争 存在と資源を巡る論考に怖るる死膨らめり麺麭ほど プロテストには櫓を市民には国家を燈台へふたりの柩工死して 革命のたび築かれし物見櫓に燃え落ちて聖母画の手なる麦 帝政樹立までのながながしテオドシウスの壁囲ふ主教座 漁夫牧夫共に厭はし兄弟の木箱に壜詰の歯朶がそよそよ 皇統譜父のみしるし旧陛下幼少より離乳期へ到るに

          短歌連作五十首,「聖トマス『蛇』」

          十二月・三月・八月

          或る構図  隣人は薔薇園へ 学徒は鈍行列車へと 夫人は洋裁教室へゆき 皆悉く焼かれき、日にて         :   立日差 鼠の死骸の干乾び 舗装路に 轢き躙る 自動車の列なりて町    黒死病の町 橋梁の足 月曜の銀行 暗室 藍青の鶏冠もて通るナチズム    戦勝の化粧して けばけばしき母へ 白燐弾は 焼夷弾ならざるか 瞠れセム・ヤペテの仔等を    敗戦の前夜 母焼く 姉焼く 妹に 奔馬性結核のおとうとと鳥      :    喀血の容にひろごりやまず点々とうろくづの

          十二月・三月・八月