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【書評】自己実現という罠

皆さんは、仕事には何を求めているでしょうか?

大きく分ければ「お金」と「やりがい(自己実現)」ではないでしょうか?
本書ではこの2つを対比させて、なぜ日本では「労働力の搾取」が行われてしまうのかを解説しています。

自己実現のためになら人は頑張れる

実は私も一番最初に入った会社ではいわゆる「労働力の搾取」をされる側にいました。

給与は残業代込みの月額制でした。
また当時は勤務時間をきちんと管理するということをしてない会社だったので、私はサービス残業だけで毎月150時間以上行っていました。

そのため土日も仕事をし、本当に休暇らしい休暇は年に数日あるかないかという状態でした。これだけ働いても給与が増えるわけではないのに、私は無我夢中で仕事をしていました。

なぜ私はそれほどまでに仕事を行っていたのでしょうか?
それは私には「この会社で頑張れば将来経営者になれる」と考えていたからです。

当時私がいた会社は「人材輩出企業」として有名になりつつあるベンチャー企業でした。先輩には何人も経営者になった人たちがいて、彼らの話しを聞き、それに憧れ入社を決めたのでした。

私は学生時代にお金に苦労していた経験から「将来は経営者になりたい」という夢を持っていました。

その夢をかなえるためにも、この会社の中でトップ営業になることが、最短の道だと考えていたのです。

だからこそ、私は死ぬほど努力して仕事をしていたのです。
そして会社もそんな私に期待をかけてくれ、私はますます仕事にのめり込んでいったのです。

まさに「自己実現」のためになら、自分の身を粉にして働くことも全く苦にならなかったのです。

社員の「自己実現」を逆手に取る企業

今から考えると、私は会社からするととても便利な社員だったと思います。

少ない給与でその何倍もの売上を作り出してくれるのです。
しかも文句どころか、やる気満々で嬉々として働いているのだから、会社としてはこれほどありがたい存在もないでしょう。

しかし、私もどこか頭の中では「自分はこれだけ働いているけど時給換算したら最低時給を割ってるよな」「なんか割に合わないよな」と思っていました。

しかし「若いうちの苦労は買ってでもしろ」という言葉もあるように、今ここで見入りを求めるのではなく、将来に自己実現できるほうが良いに決まっていると考え、私は「お金」のことは一切気にせずに働いていたのです。

そして私のようなケース以外にも、自己実現を逆手にとって社員を上手に働かせている企業はたくさんあります。

むしろ、そうして社員のやる気を出させている企業は「マネジメントの成功している企業」として評価されることすらあります。
そして本書では意図的に「社員のやるき(=自己実現)」を逆手にとって「労働力の搾取」が行われていることに警鐘を鳴らしているのです。

日本人には搾取されやすい文化である

本書ではそもそも日本人には「搾取」されやすい文化があると言っています。

それは「間柄の文化」です。

私たち(日本人)には、自分の都合で動くよりも、相手の気持ちや立場に想像力を働かせ相手の期待に応えるべく行動する、相手の期待をできるだけ裏切らないようにするといった傾向がある。

本書P134 

こういった文化があるため、日本人は「相手の期待に応える」ということが暗黙知に良しとされているのです。

ところが欧米では反対に「自己中心の文化」が根付いています。

「自己中心の文化」で自己形成した人たちは、自分の立場から物を言うのは当然と考えており、自分の重いや意見を堂々と主張する。上司から仕事を命じられても、自分が給料と引き換えに引き受けている業務から外れていると思えば、「それは私の仕事ではありません」と容易に断れるのです。

本書P131

もし皆さんが「自分は仕事は簡単に断れる」と思っているのであれば、欧米型の「自己中心の文化」で自己形成している可能性が高いと思われます。

しかし、多くの日本人はそうではなく「間柄の文化」で自己形成しているため、上司との関係性、お客様との関係性、家族との関係性を大事にして仕事をしているため、そこを持ち出されて過剰に期待に応えてしまうのです。

「職業」と「お金」は分けて考える

実はこの問題は、コーチングでは「職業」と「お金」は分けて考えるという手法を用いて解決します。

多くの人が一つの職業で「お金」と「やりがい」を同時に満たそうとしています。しかし、それがそもそも無理を産み出しているのです。

コーチングでは、職業とは「社会に対して機能を提供すること」と定義し提案す。これは自分が働くことによって、社会の役に立つことをするという意味です。
この時に大事なことは、自分が本当にしたいことで、社会の役に立つことをするのが職業で、その時にお金のことは考えないということです。

この段階で「お金」も稼ぐということを考えるので、矛盾が産まれるのです。

まずは「お金」から注意を外して「自分がやりたいことは何なのか?」「自分が果たしている機能は何なのか?」を徹底的に考えます。

そしてこの職業をしているときには「やりがい」を十分に感じられるかどうかが大事な点なのです。

そして「お金」は別で考えます。
もちろん「職業」を行うことで「お金」は入ってきます。

しかし、職業を行う本当の目的を「お金」においてはいけないのです。

例えばまだ売れていない俳優に「あなたの職業は何ですか?」と聞けば「俳優」と答えるでしょう。しかし、まだ売れていないので「お金」は別で稼ぐ必要があり、空いている時間でアルバイトをしているかもしれません。

他にもお笑い芸人やミュージシャンの卵たちもおそらく似たような状態でしょう。
しかし、たとえお金を稼げていなくても、自分の「職業」が何かをはっきり言うことが出来るはずです。

私たちもこの考え方を取り入れるべきです。
そうすることで初めて自分の「やりがい」と「お金」について冷静に考えることが出来るのです。

まとめ

本書を読むことで、私たちが「自己実現という罠」にハマっているのか、そうでないのかを知ることが出来るでしょう。

もし皆さんが「やりがい(自己実現)」を餌に労働力を搾取されていると感じるのであれば、自分が本当にやりたい「職業」は何かを考えるべきだと思います。

その時にポイントはいったん「お金」のことを忘れるということです。
「お金」からフォーカスを外さないと、自分が本当にやりたいことは見つかりません。

是非皆さんも「自己実現の罠」にハマらず、本当に自分が満足できる「職業」を見つけていただければと思います。

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