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『犬も歩けば』~エッセイ~

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エッセイ集です!日常の何気ないことをいろんな角度から眺めて、感じて、発信できればといいなぁと思っています。 よろしくお願いします!
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#人生観

「あざとさ」と「真実」の狭間で……

「あざとさ」と「真実」の狭間で……

「意外と腹黒いんだねぇ」
若い時からよく言われた言葉だ。
眼鏡をかけていた時なんて「腹黒メガネ」なんてあだ名をつけられていたこともある。
今ならパワハラなんじゃないか? なんて思ったりするが、どれもこれも私にとっては勲章みたいなもので悪い気はしていない。
「あざとくて何が悪いんですか?」
最近、バラエティー番組なんかでよく聞くフレーズだが、個人的には「まったく悪くないでしょ! むしろ素敵です!」な

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「つなぐ」ということ

「つなぐ」ということ

あの日も蝉が忙しく働いていた。
私は祖父の枕元に遠慮気味に近づいた。
手には宇宙戦艦ヤマトの模型を握りしめて。

夏休みの宿題だ。
戦争のことを調べる……

幸い、父も母も戦争を経験していた。
二人ともまだ子どもだったが、広島に落ちた原爆の光を記憶していた。
父は山口県の大島郡から、母は広島県の呉市から、その光で染まる空を見ていた。
空を突き刺すような光線と地を突き上げるように響いた音は、それまで

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祓っている場合でも、追い出している場合でもない!

祓っている場合でも、追い出している場合でもない!

とんでもないことだ!
例年以上の繁忙期がすぐそこまでやってきているではないか!
しかも仕事を離れたところでも、今年は何やら慌ただしい。
勘弁してほしいがどれもこれも止まってはくれない。
走り抜けるしかない。

そんなわけですっかり戦闘モード全開の中、旧暦における新年を本日めでたく迎えたわけだが、まったくと言っていいほどお祝いなんて気分ではない。

もー、忙しいしぃー。もー、ややこしいぃー。

昨夜

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あの世……etc.

あの世……etc.

先日のことだ。facebookの誕生日通知に大切な親友の名前があがった。
「〇〇さんの誕生日をお祝いしよう!」
facebookが親切に教えてくれたそのメッセージに彼の名はあった。
懐かしく、でも、悲しくなる。そんな思いを重ねる日。もう何年になるか……

彼はもうこの世にはいない。
自らの意志であの世に旅立った。
僕よりひと回り近く若かったが、人柄、人格、どれをとってみても優秀で、僕などは足元にも

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一目惚れ ~勇敢な恋の歌~

一目惚れ ~勇敢な恋の歌~

やってしまった……
どうしても自分の気持ちに嘘がつけなかった……
まさかこんな日が来るなんて! 自分でも想像すらしていなかった現実がまさに起きているのである。

浮気と言われれば甘んじて受けよう。
裏切り者と罵られれば、それも真摯に受けとめるつもりだ。
どんな罵声を浴びせられようともかまわない。
だって、僕はもうあの子に夢中なのだから!

その子の名は、しろ。
半透明の乳白色の瓶に、これまた真っ白

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神様でも仏様でもなく

神様でも仏様でもなく

うちのばあちゃんは強烈で最強だった。
クセも強いが、愛も深い。
すでに他界して20年近く経つが、ばあちゃんの思い出は色あせない。むしろ、今になって鮮明に蘇ってくることもあるくらいだ。いや、今だからこそ蘇ってくるのかもしれない。

ばあちゃんは明治45年に広島県呉市で生まれた。名を「ヒデヨ」という。小さい頃から強い近眼だったばあちゃん。平成の世になっても牛乳瓶の底のような分厚い眼鏡をかけていた。その

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