#note
ぽっかりと空いた穴が、教えてくれる。
冷たい風が吹いた。
風は肌を撫ぜる。
肌を撫ぜたはずだったのに、
風は僕の中に入ってきて
僕は体の中に穴が空いてるって気づいた。
知りたくなかった。
ぽっかり空いた穴なんて。
秋はこれだから嫌だ。
寂しくなる。
春に花が咲いて、
夏に弾けて、
いつの間にやら穴が空いて
秋になって落ちてゆく。
僕は地団駄を踏んだ。
踏めるだけ踏んだ。
足元が緩んでいく。
足が沈んでいく。
僕は泣い
詩|花弁にファスナー
お水を
あげても、
咲かない花が
あって。もしかし
たら満月の夜に咲く
のかなと楽しみにしてた
のだけど。咲いてちょうだい
よと、頭を撫でたら、ファスナー
がついてたの。白いお花に白いファ
スナー。私は恐る恐るファスナーを開け
たわ。ゆっくりと、とてもゆっくりと。白
い花は唇をあけるように一枚ずつ花弁を広げ
少しずつ匂いを放ち、あたりは甘い匂いに包
まれた。飲み込まれてしまいそうなその匂い
に、私
詩|まほうのファスナー
まほうみたい
にファスナー
をつけれたら
いいのにな。
あれやこれや
につけてみた
い。ど んより
重たい 灰色の
くもに 、ファ
スナー をつけ
て、シ ャーっ
と開け たら、
眩いほ どの光
が差し 込みま
すよう に。喫
煙所の おじさ
んたち の煙に
ファス ナーを
つけて
詩|水たまりにファスナー
雨が止んで水
たまりができ
ている。水た
まりにファス
ナーが浮かん
でいた。私は
どうしてもそ
れを開けたく
なった。しゃ
がみこみファ
スナーを開け
覗き込む。そ
の奥には階段
が続いている
吸い込 まれる
ように 水たま
りに飛 び込ん
だ。幅 の狭い
階段を 駆ける
ように 降りた
真っ暗 な水た
まりの 底には
キラキ
詩|fastener
開ける以外に道はない
一縷の望みを賭けて
上から下へと動かした
遠慮のない
老いぼれだと思われたに違いない
かなぐり捨ててでも
希望を残すには選択肢がなく
悔しいけれど
決別が必要だった
ここから先に進むには
ささやかなプライドは
処分しなければならない
すべからく
世間に反旗を翻すべきで
そうしなければ
立ち尽くす未来しかない
力なく
つまむ
手の震えが
止まらない
ナニモノか答
詩|夜空に、ファスナーをつけたい。
夜空にファス
ナーをつけて
じじじじと開
けたら、宇宙
が落ちてこな
いかな。寝静
まったみんな
の夢の中に落
ちてきた宇宙
が広がって、
混沌とした夢
を見て目が覚
めたらいいの
に。ど こかで
猫がに ゃあと
ないて 眠れな
いあの 子の傍
に一等 星が落
ちてき て、あ
の子が 見てた
悪い夢 が箒で
ささっ と素敵
な
詩|ファスナーを、脱ぐ。
口にファスナ
ーを縫いつけ
ていれば、余
計なことを喋
らなくていい
人に文句も言
われないし、
このままずっ
とファスナー
生活でもいい
家に帰ってフ
ァスナーを開
けて、酒を煽
って、やっと
解放される。
でも、これが
大人ってもん
なんでしょう
大人に なんて
なりた くなん
てなか ったけ
どなっ てしま
った。 いつの
まにか 口につ