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#note

ぽっかりと空いた穴が、教えてくれる。

ぽっかりと空いた穴が、教えてくれる。

冷たい風が吹いた。

風は肌を撫ぜる。
肌を撫ぜたはずだったのに、
風は僕の中に入ってきて
僕は体の中に穴が空いてるって気づいた。

知りたくなかった。

ぽっかり空いた穴なんて。

秋はこれだから嫌だ。
寂しくなる。

春に花が咲いて、
夏に弾けて、

いつの間にやら穴が空いて
秋になって落ちてゆく。

僕は地団駄を踏んだ。
踏めるだけ踏んだ。

足元が緩んでいく。
足が沈んでいく。

僕は泣い

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詩|影とダンスを

詩|影とダンスを

私は影を見つめる

私の足元に落ちた影を
踏み潰し、連れ回す

日が昇ると、次第に影は小さくなる

私は影があったことさえも
忘れてしまう

あちいあちいと日陰を探し
無機質な影にすっぽりと包まれ
ほうと一息安堵する

夕暮れに影が伸びる
私はおかえりと言う

踏み潰して、連れ回して
なんだか要らぬもののように
扱ってきたのに帰ってきた

懐かしい友との再開に
私は橙色のスポットライトを
浴びてダ

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詩|afternoon tea

詩|afternoon tea

あしたもたべたい
いつでもたべたい
うんとたべたい
えがおでたべたい
おなかいっぱいたべたいな

カロリーなんか
きにしないで
クリームたっぷりぬっちゃって
けっとうちも
このさいむしして

さわやかなかぜにふかれながら
しあわせなきぶんで
すてきなじかんをすごしたい

せかいじゅうが、あまいものでいっぱいになっちゃったら?!

そんなせかいにいってみたい!!

たいじゅうなんて
ちっともふえなく

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詩|花弁にファスナー

詩|花弁にファスナー

お水を
あげても、
咲かない花が
あって。もしかし
たら満月の夜に咲く
のかなと楽しみにしてた
のだけど。咲いてちょうだい
よと、頭を撫でたら、ファスナー
がついてたの。白いお花に白いファ
スナー。私は恐る恐るファスナーを開け
たわ。ゆっくりと、とてもゆっくりと。白
い花は唇をあけるように一枚ずつ花弁を広げ
少しずつ匂いを放ち、あたりは甘い匂いに包
まれた。飲み込まれてしまいそうなその匂い
に、私

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詩|はじめて

詩|はじめて






が口の
中で溶けて
はじめて口の中
があたたかかった
ことを知った。雨が
私の首筋に落ちては
じめて、晴れてたこ
とを知った。喉を
水が滑り落ち
てはじめ












こと
を知った
君がいなく
なってはじめて
君がいつもそばにい
てくれたことを知った
夜になって眠れなくな
ってはじめて一人で
眠るのが寂しい
って知った









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詩|asphalt jungle

詩|asphalt jungle

アスファルトジャングルを
生き抜くには
飢えていなければならない

エアガンを小脇に抱え
応戦する準備は万端で
カーステレオは最大音量に

気が済むまで
口喧嘩をし
下剋上を待つ
腰巾着でいるのだ

サイコパスでいるのも一つの手で
知らず知らずに
荒んでいく自分を
世間に溶け込ませていくしかない

そんなことをしてまで
立ち続けることに意味があるのか

血眼になって
爪を割ってまで
てっぺんを目指

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詩|まほうのファスナー

詩|まほうのファスナー

まほうみたい
にファスナー
をつけれたら
いいのにな。
あれやこれや
につけてみた
い。ど んより
重たい 灰色の
くもに 、ファ
スナー をつけ
て、シ ャーっ
と開け たら、
眩いほ どの光
が差し 込みま
すよう に。喫
煙所の おじさ
んたち の煙に
ファス ナーを
つけて

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詩|水たまりにファスナー

詩|水たまりにファスナー

雨が止んで水
たまりができ
ている。水た
まりにファス
ナーが浮かん
でいた。私は
どうしてもそ
れを開けたく
なった。しゃ
がみこみファ
スナーを開け
覗き込む。そ
の奥には階段
が続いている
吸い込 まれる
ように 水たま
りに飛 び込ん
だ。幅 の狭い
階段を 駆ける
ように 降りた
真っ暗 な水た
まりの 底には
キラキ

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詩|fastener

詩|fastener

開ける以外に道はない

一縷の望みを賭けて
上から下へと動かした

遠慮のない
老いぼれだと思われたに違いない

かなぐり捨ててでも
希望を残すには選択肢がなく
悔しいけれど
決別が必要だった

ここから先に進むには
ささやかなプライドは
処分しなければならない

すべからく
世間に反旗を翻すべきで
そうしなければ
立ち尽くす未来しかない

力なく
つまむ

手の震えが
止まらない

ナニモノか答

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詩|夜空に、ファスナーをつけたい。

詩|夜空に、ファスナーをつけたい。

夜空にファス
ナーをつけて
じじじじと開
けたら、宇宙
が落ちてこな
いかな。寝静
まったみんな
の夢の中に落
ちてきた宇宙
が広がって、
混沌とした夢
を見て目が覚
めたらいいの
に。ど こかで
猫がに ゃあと
ないて 眠れな
いあの 子の傍
に一等 星が落
ちてき て、あ
の子が 見てた
悪い夢 が箒で
ささっ と素敵

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詩|ファスナーを、脱ぐ。

詩|ファスナーを、脱ぐ。

口にファスナ
ーを縫いつけ
ていれば、余
計なことを喋
らなくていい
人に文句も言
われないし、
このままずっ
とファスナー
生活でもいい
家に帰ってフ
ァスナーを開
けて、酒を煽
って、やっと
解放される。
でも、これが
大人ってもん
なんでしょう
大人に なんて
なりた くなん
てなか ったけ
どなっ てしま
った。 いつの
まにか 口につ

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詩|Umbrella

詩|Umbrella

朝になって傘立てをみる
一本も傘がない
嘘だよね、と呟いた

絵に描いたような
大きな青空に
傘が必要なほどの雨

狐の嫁入りとはこのこと

雲の切れ間が遠くに見える
けれども私は今、出かけなればならない
このままでは遅刻してしまう

颯爽と通り過ぎるタクシーに
嫉妬しながら
スカートをたくし上げた

精一杯走ってバス停に向かっても
その間に濡れることは必至だ

だったら、もういっそ
遅刻してしま

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詩|ささくれに、土がしみる。

詩|ささくれに、土がしみる。

さらさらと指の間からこぼれ落ちる
掴んではいけない、掴まない。流れ
ゆくまま眺めるだけ。止まらない
し、止められない。それは等し
く平等に。逆らわない、抗わ
ない。抗えば気づかぬうち
に溺れてしまうかもしれ
ない。けれど、溺れて
息もできず、もがき
続ければもしかし
て私も知らない
どこかに流れ
つくのだろ
うか。こ
こでな
いど

かへ
辿り着
いたどこ
かは、私の
目的地なのだ
ろうか。そん

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