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詩|Umbrella

朝になって傘立てをみる
一本も傘がない
嘘だよね、と呟いた

絵に描いたような
大きな青空に
傘が必要なほどの雨

狐の嫁入りとはこのこと

雲の切れ間が遠くに見える
けれども私は今、出かけなればならない
このままでは遅刻してしまう

颯爽と通り過ぎるタクシーに
嫉妬しながら
スカートをたくし上げた

精一杯走ってバス停に向かっても
その間に濡れることは必至だ

だったら、もういっそ
遅刻してしまおうか
つまらない仕事しかないんだし

手ぬるいな
どうせなら休んでしまおう
謎解きみたいな表情の上司に
荷扱いされるのはもう終わり

濡れ手で粟で生きていたい
寝たままマックのポテトを食べたい
のん気に昼寝してよだれ垂らしたい
歯磨きを忘れても
引かれることもない
布団を住処にしてしまおう

へそ曲がりな私が
程よく人並みに生きるのは疲れるのだ
周りはみんな器用に生きているように
見えるのは気のせいだろうか

難しかった微分積分より
目の前の誰かの感情を解く方が頭を使う

もう行くのやめよ、と思った時
止んだのは天気雨だった
指でスマホ画面を触り時刻を確認する

よくもまあ、止んでくれちゃって

ランドセルを傘替わりにした少年が
リズミカルに私の前を通り過ぎた時
ルソーが頭の中で話しかけてきた

歴史上の人物でしたっけ?

ろくに授業を聞かなかった弊害に
笑いが込み上げてくる
をなかがすいてきたなぁ
今日はあそこでラ「ン」チしよ








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