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NOVEL

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#黒猫

こっそりオムニバス

こっそりオムニバス

お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、こっそりオムニバス的な小説を書いていました。
たぶん、解釈的にオムニバスで合ってると思うけど。
アンソロジーじゃないよね?

そもそも、オムニバスって?
アンソロジーって? 
って思うやん。

オムニバスとは西鉄バスが幅を利かせている福岡市民に「移動手段なん使いよーと?」って聞いたら「主にバス」って答えたところから派生した単語ではなくて、ラテン語らしい。

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クリスマスイブ・イブ

クリスマスイブ・イブ

春は別れの季節でもあり、出会いの季節でもある。
今年の春、私はそれを体現することになった。

「もうサヤカのことは嫌いになった」

ちょっと信じられないくらいに衝撃的な別れの言葉だった。
「好きな人ができた」とか「僕では君を幸せにできない」とか「こういうところが合わない」とかだったら、まだ理解もできるけど。
嫌いになるってどういうことだろうと、私の頭は混乱した。

やたらと嫌いを連呼する人だとは思

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黒猫とカンパネルラ

黒猫とカンパネルラ

ぼくは公園のベンチに座っていた。

公園はがらんどうだった。
人っ子一人いない。人気のない寂れた公園だ。

この間の日曜日まではとても賑やかで毎日たくさんの人が来ていたのに、あっという間にいつもの寂しい公園に戻ってしまっていた。

本当だったら今週の日曜日、ぼくはこの公園で遊ぶはずだった。今週の日曜日は、期間限定で来ていた移動遊園地の最終日だったんだ。

その日はいつもは忙しいお父さんが、朝から晩

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雨の日、遊園地、僕の天使。

雨の日、遊園地、僕の天使。

雨の日だった。
神様が号泣していていたその日、僕は天使に出会ったんだ。

アパートの近くの公園は、普段はとても静かだ。
特別な子ども向けの遊具もなく、とりたてて写真に収めたいような景色もない。
誰のために作られたのかもわからない公園は、いつも閑散としていた。

僕はそんな公園が好きで、すぐ近くのアパートを選んだ、はずだった。

この一ヶ月、その静けさが一変した。
人っこ一人いない公園に、移動遊園地

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