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創作

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つくりだした言葉の羅列
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#創作

最果てにて

最果てにて

消えそうな光が目の前にある
手を伸ばしても届かない光が
目に見えるから愛しいこと
ずっと前から知っていた

涙ばかり追いかけないで
前をみれば ほら

最果てで再び会おう
そこはどこかなんて
野暮なことは聞かないでね?
最果てで抱き合って眠ろう
だからそこで待っていて
明日はきっと雨

消えてしまった光がここにある
手は届かなくても感じられる
目に見えなくても大丈夫
ずっと前から知っていた

でも

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死の短歌

死の短歌

死に絶えてその先にある光なら別にいらない ほしいのは今

姦しい世界と思っていただけで 海の中腹 ただ鎮まって

贈るならレクイエムかと微笑んだ そんな君には透明なハグ

死の狂気胸に渦巻く私を何事もなく乗せる快速

死にたいが希望であるなら絶望はいつ訪れると思う今際

死ぬために電車乗るから化粧する 死ぬ間際まで人目気にして

安楽死制度が導入されるまで死なないでおこう なんて無理だよ

足元に

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無機質で硬質なもので心ができていたら
あなたのそれを手に取って
あなたの思考に触れてみたかった
そうすれば、きっと
こんなにこわい思いを
しないですんだはずなのに

叫んでは枕に埋もれ消えていく この声いつか星座となって

Welte

Welte

ねえ その羽でどこへ行くの

天使が問いかける
あたたかさもつめたさもなく
ただ庇護の中に生きる
生温い声音

さあ この足でどこへ行こう

旅人はそう答える
気楽さも堅苦しさもなく
ただ海原を見つめる
波のような声紋

(どうして行くのかな)
(どうして行かないのかな)

だれも知らないその問答は
遠くのどこかでふいに行われる
ただ静寂だけが残る
そこに声はもうなかった

--

価値観の話は難

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忘れえぬ人

忘れえぬ人

早朝は独特なにおいがする
鼻腔の奥がツンとする
乾燥が目を刺激する
この感覚はなにかに似ている

そのせいで誰かを思い出す
遠くに人影が見える
知らない人に違いない
なのにどこかで期待する

イヤホンから流れるノイズ
少し音量を下げる
そうしたらどうだろう
鳥の鳴き声がした

結局すれ違ったのは
思い出した誰かではなかった
それでもこの早朝に
同じ道を歩く人だった

いつか思い出すだろうか
今日す

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月見る荘

月見る荘

むかしは月がみえたのだ
この小さなベランダで

十五夜には月見をしたのだろう
そう思いを馳せることしか
今はできないけれど

隣に私の家より高い
アパートが建ち
目の前ではピカピカの新築が
あざ笑い
周囲もリフォームに
明け暮れている

それでも私は
この愛すべき家で
かつて見えたはずの月に
幻想を浮かべる

若き日の
そして今の
親しき人を
二重にみる

誰も知らないままでいい
私たちが想ってい

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微

ゆわりと微睡むふとんのなか

ほおをなでる微風に

そっと微笑みをかえす

ねつにふれて微温むてのひら

となりのへやから微かなこえ

微酔いきぶんでちゅうにうかんで

もうあしたのふあんは微塵もない

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まどろむ、そよかぜ、ほほえみ、ぬるむ、かすか、ほろよい、みじん

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朝と音楽【アナグラム詩】

朝と音楽【アナグラム詩】

夜 更け 朝陽昇る
奥に萌ゆ山
喇叭鳴り 犬がワンと
セロをちぎれ 猫
そして、娘へ歌
笑み

よ ふけ あさひのほる
おくにもゆやま
らつはなり いぬかわんと
せろをちきれ ねこ
そして、むすめへうた
えみ

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「あ」から「ん」までの48字でつくったいろは唄です
セロはあれです、「セロ弾きのゴーシュ」のセロです笑

前回アナグラム詩をつくった際
いろは唄にも挑戦したいなあと思っていたのです

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かみ合わない

かみ合わない

「消えるのですか」
「どうしても、行かなくてはいけません」
「……だいじなものなのですね」
「あなたには本当に世話になりました」
「次は、ありますか」
「あなたがそう願うならば、きっと」
 そして、私は悟る。次など、ありえないことを。

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かみ合わないように見えて、実はかみ合っていて、でも本当のところはかみ合っていない

そんな話を、私はしたい

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誰かのどこかに刺されば嬉しいです