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大人の修学旅行。第一話(中編)

YUKA MIZUHARA氏を観つつ、屋内フロア偵察。

前回の続きから。MNDSGNのステージが行われる屋内LIVE/DANCEフロアは午後4時からオープン。しかし先ほどの握手会場っぷりを見るに、一体何時から最前列に張り付いておかにゃならんのやのきらいは高まるばかり。一旦降りて様子を見に行ってみて、それから考えてみよう。神戸が世界に誇る、五つ星ホテルのダンスフロアがどんなものか。

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チャラい、想像以上にチャラい。こんなスペースあったんだ。空調がとても効いてたのでとりまスミノフアイス注文、プールサイドへのビン類持込禁止について若干本域で怒られたキングバスはダンスフロア横の椅子で大人しく一人反省会。ダンスフロアは文字通りダンスフロアで、そういえば確かに、今日のお客様はなんかこう全体的に…踊ってそうな風貌の方ばかりだった。

キングバス、体力を考慮し屋内へと避難。

MIZUHARAさんのスタイルに正義を感じたのは、10年代の楽曲の後いきなり70年代のクラシックへダイブしていく思い切りの良さ。このタイムスリップ感というか平衡感覚は、正にシティポップ以後あるいはサブスク以降の象徴でもありますよね。MNDSGNのDJプレイでも、そういった片鱗が垣間見える瞬間があり(後述)非常に勉強になった。家に帰って早速真似てみましたよ。

午後6時頃、この辺りから目に見えて30超えの体に不調の兆しが。スミノフなんて飲むから(※スミノフはサイコーのお酒です)だとのお叱りもあることでしょう、私もそう思います。重たい足をどうにかこうにか動かしながら、階段を下るとそこは長蛇の列、先述のダンスステージが幕を開けたのです。それまでと全く違う、勿論母校にもダンスサークルは数多くありましたが。

DANCE SHOWCASE~dhrma~SULLEN

キングバスは明らかに背が低いので、フラットなフロアの端っこの方で一体これは何事やとただ口をぽっかり開けたまま、沸き起こる歓声やどよめきに耳をすますのでした。とかく足の状態が芳しくない、長らくスタンディングの現場から遠ざかっていたツケがここへきて。午後7時前、ようやく椅子を確保したタイミングからムネアツなビートライブがスタート。

誠に不勉強ながらdhrma氏、キングバス初めて耳にしましたが本当に衝撃的でした。BY THE POOL音響チームの素晴らしさもあってか、とにかく音圧が凄い。飲み切れずソファーの隅に置いたスミノフが吹っ飛ばされるのではと何度も思ったほど。SULLEN氏もメインアクト直前という難しい時間帯を実にジェントルな立ち回りでバトンパス。横顔がStylishnoobさんに似てらした…

ここでもやはりフロアに降臨。

丁度dhrma氏のステージが中盤に差し掛かった頃だったでしょうか、見覚えのある方が再びやって来た。ステージのセッティング確認を手早く済ますとまだ少し時間があるねえなんてやりとりしながらタバコ片手にフロアを出て行った。いくらサウンドチェックとは言っても、お客さんがいるいないでは全く状況が異なります。先述の「演じ手」「リスナー目線」論に戻る。

関係者とは和やかに話すんですけれど、時折なんというかこう職人の目つきに変わる瞬間があって。そんなジロジロ見てやるなよって話ですが、こんな間近でアーティストのそういった姿に触れられる機会というのも、なかなか少ないような気がします。明確な「バックヤード」みたいな隔たりがない、本イベントの特徴的な部分だったのでは。

「BY THE POOL」が目指したパーティ像。

これもまたメタ推理のオンパレードですが、例えば演者入口と会場入口とが同じだったこと。それこそトイレとか喫煙スペースとか深夜のコンビニとかホテルでバッタリなんてシーンも十分想定できた、クローズドだから出せる距離感。日本くらいの治安だからパニックも想定内(のはず)。これはBoiler Roomに代表される海外パーティでも顕著。演者の後ろに客がいる的な。

ホテル南館を背にしたステージ配置というのが、それに類するものだったのではないか。ベランダに立って体を揺らす宿泊客の方が大勢いたんですよ、たまにパラソル席のお客さん達とも目が合うんです。手を振り合ってみたり無意味に煽ってみたりとか。ライブハウスやホールでは味わえない双方向感が非常に心地良く、刺激的な体験として強く焼き付いた。

MNDSGNの独特なルーティーン。

屋外ステージの音は市民広場駅前に夜9時まで響き渡っている訳ですから。音漏れならぬ『By「BY THE POOL」』状態を、例えばアリストン神戸の一室から、ポートライナーに揺られながら、仕事中の車内から楽しめる余地まであって。海外仕込みのイベントに飛び込んでみると、なるほど色々と発見があるものですね。なんか図らずも修学旅行っぽくなってきました。

さて、MNDSGNがステージに戻ってきました。いよいよ始まります。手には水とサントリーの角ハイ缶、マグカップに入った謎の飲料、となぜか蜂蜜。床にしゃがみこんだかと思えば黒いタオルを頭から首元にかけ巻き始める。『Body Wash』のジャケ写そのまんま、勿論それが前フリとなって「Ya Own Way」から衝撃の40分押しセットがスタートしてまいります。

機材厨の貴方へ、悲報です。

キングバス、最前列を確保したもののまさかの照明都合で機材チェックまで進められず。不確かな情報ですが恐らくYAMAHA DX-5にハードサンプラーが3台、404シリーズで固められていたか555も含まれていたかどうか…むむ。ともかく特筆すべきは3台同時使いという点。Jeff MillsのExhibitionistを彷彿とさせる衝撃の運動量、足の痛みを我慢して本当に良かった。

どのサンプラーにどんな仕組みが隠れているのか結局最後までわかりませんでした。彼の脳神経回路を見ているようなそんな気分、単にスミノフが回り始めていただけかもしれない。でもそのくらい繊細なシステムになっていたことは確かなようで、後半MNDSGNも角ハイが回ってきたのか時折フリーズする瞬間が目立ち。緊張感がありどこかほっこりとするシーンでした。

「お茶目」と「ストイック」のせめぎ合い。

『Body Wash』『Rare Pleasure』からの楽曲を中心に前半はいわばヒットメドレー、中盤はMix中心の構成でフロアを掴んで離さない。それどころか後半、特に「Cosmic Perspective」を挟んでのロングスパートは圧巻でした。40分押した分すべてがインプロパート、つまり4つ打ち主体の完全即興で。これには関係者も舌を巻くというか青ざめていたというか。

多分ゾーンに入ってしまうタイプなのだと思う。フロアに一切目もくれず淡々とバスドラとクラップが鳴り続けるあの何とも言えぬ高揚感。ダンサー界隈中心のお酒に強い皆様をもってしても正直かなり篩にかけられる時間帯だったようで、前列から次々と女性客が担ぎ出された。我々が忘れかけていた「クラブでもみくちゃになる」サバイバル感を思い出すことができて。

異次元のリズム感覚に魅せられる。

彼の魅力は四畳半にすっぽり収まるほどの装備でもって、あらゆる音楽性にチャネリングできるところ。まさにラップトップ音楽の完成形、それでいてついつい甘い歌声とコードワークに魅了されがちな彼の驚くべきタイム感を目撃したのは。ライブ中盤に聞かせてくれたアニメ・カウボーイビバップサントラのMix、非常にスリリングでした。

そっか、サブカルもいけちゃう人だったわ。もうどんな角度からどんな球が飛んでくるのか完全にわからなくなった。あらかじめ用意された流れだったのかそれとも咄嗟の閃きだったのか。いずれにせよちょっと次元が違う、彼の頭の中は一体どうなっているのか。知りたいような謎は謎のままにしておきたいような、そうやってまた数年後彼のライブに足を運ぶのだろうなと。




次回、完結編。

ここまででキングバスはいよいよ体力の限界を迎え、部屋へと戻る。さすがに長過ぎた中編、しかし2日目のDJセットも実に見事で。正直トイレに行くタイミングも切れたアルコールを買い足す心の余裕もないくらい、もう1秒たりとも彼の音世界から気を逸らしてはいけないようなそんな余韻の残るステージでした。しっかりセトリもメモってきたぞー!!

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