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上野 紗妃
2022年4月13日 20:05
【解決編】 ホームスの働きもあり、幸にして原賀減太と飯尾来栖は一命を取り留めた。 そして、その翌日の晩、再び原賀家の広間に事件関係者達が集められた。 広間に顔を揃えたのは、原賀減太、原賀辰也、屋良世手代、飯尾九央、飯尾久枝、飯尾来栖、薮医師、口部田弁護士、そして、万画一道寸の9名、勿論この中に犯人がいる。 病み上がりのうえ、ヘルニアを抱える減太は奥に布団を敷いて横たわった状態。来栖は両親
2022年4月12日 20:05
【万画一】 さて、時間を少し巻き戻すとしよう。 小泥木警部と万画一探偵は飯尾家のリビングに腰を据えて、飯尾九央が受け取ったという怪文書を前にして腕組みしていた。「しかし、一体だれが、こんな……」 警部は今日何度目かの同じ言葉を繰り返した。「九央さん、ここに書かれている事は本当ですか?」「いや、滅相もない、万画一さん、そんな事言わんで下さいよ。根も歯もない出鱈目です」 怪文書は次の様に
2022年4月11日 20:10
【万画一】 さてさて、ここで再び、カメラは万画一探偵に切り替えて話を進めて参りましょう。 原賀家の一室を借りて捜査本部が置かれ、事件の状況を細密に改められ、葡萄酒に毒物を仕込んだ可能性のある者のリストを作成した。 しかし、それは厳密に考えると、昨夜、あの部屋、または調理場にいた全ての人間に可能性があると言わざるを得ない。しかも、外部の犯行であっても不思議ではない。それほど、多勢の人が行き来し
2022年2月25日 17:29
『あなたの死体写真を撮影致します』 ある日、このような怖ろしいキャッチコピーの広告が新聞、雑誌、インターネット等に流れ出た。 初めの内こそ、スルーされていたが、誰かがその死体画像をインスタグラムにアップさせると一気に火がついた。 もちろん、本物の死体ではない。死体に扮装したコスプレ写真なのだ。 やがてYahoo!Newsにも取り上げられ、一躍トレンド記事のトップに踊り出た。 広告記事を
2022年1月16日 11:47
探偵・万画一道寸が離れを借りて居候しているのは、大森の山の手にある『潮月』という割烹旅館である。 探偵の仕事もそうそう毎日ある訳でも無く、万画一は大抵部屋でゴロゴロしながら書物文献を漁り、文机に置いた原稿用紙に向かって筆を走らせているのだ。 何も世間に轟かせるような論文を発表しようと目論んでいるのでは無い、詰まらぬ日々の徒然をたらたらと認めているだけである。さしづめ日記、または随筆とでもい
2022年1月15日 10:59
1/3へ2/3へ 3 次の日は朝から忙しく都内を東奔西走した。 公生の手帳メモから拾い出した五件の消費者金融らしき事務所に実際に出向いて見ることにしたのだ。 メモには住所がないので、電話をして相談したい事がありましてと、客を装いアポイントメントを取って、所在地を聞き出した。 五件の内訳は次の通り、名前の横の数字はおそらく借りた金額と思われる。 中島 300 花沢
2022年1月14日 11:31
前のお話 2 その日、万画一は加奈子にいくつか質問をした。 夫・公生の失踪前の様子、失踪に至る心当たりはないか、趣味や交友関係など、細かく質問した。 結果として、加奈子の夫・公生は無趣味で友人も少なく、仕事一筋の超真面目な男性であると、そう思わざるを得ない印象に落ち着いた。 それにしても、二千万円もするダイヤを持って失踪だなんて、普通ではあり得ない。何かの事件に巻き込まれたという可能
2022年1月13日 11:21
1 探偵・万画一道寸が離れを借りて居候しているのは、大森の山の手にある『潮月』という割烹旅館である。 探偵の仕事もそうそう毎日ある訳でも無く、万画一は大抵部屋でゴロゴロしながら書物文献を漁り、文机に置いた原稿用紙に向かって筆を走らせているのだ。 何も世間に轟かせるような論文を発表しようと目論んでいるのでは無い、詰まらぬ日々の徒然をたらたらと認めているだけである。さしづめ日記、または随筆
2021年9月4日 21:01
【プロローグ】 「君の気持ちは嬉しいけど、僕には……」 男の目は長く伸ばした前髪に隠れて見えない。「やっぱりあの子の事が好きなのね」 女はひきつった笑顔を見せて俯いた。「すまない……」「謝らないで。余計みじめになるわ」 無機質な狭い部屋。およそ恋の告白をするには不似合いな場所だ。 たまたまバイト終わりの片付けがいつもより手間取って、彼と2人きりになれるチャンスが巡って来た。 思
2021年7月23日 21:22
1 星祭り「いいかね、今宵は星祭りの夜だ。広場からは一夜限りで番外地行きの列車が復活するそうだ。その列車はだね、伝説の鉄道と呼ばれていて……」担任の教師・小狡井(こずるい)は延々とどうでもいい説明を続けていたが、生徒達はとにかく今夜の星祭りが待ち切れなくてそわそわしていた。「その列車に乗る時は必ず保護者同伴で乗ること。いいかね」小狡井先生の言葉に、ひとりの生徒が手を上げた。「オイラ、保
2021年7月2日 22:57
迷探偵でその名も高い万画一道寸(まんがいちどうすん)が警視庁捜査一課の小泥木警部(こどろきけいぶ)に呼び出されたのは、六月のしょぼしょぼ雨が降る梅雨の最中であった。大森の山の手にある割烹旅館『潮月(ちょうげつ)』の離れに間借りさせて貰ってる万画一は出掛けに女将さんに呼び止められ、番傘を差し出された。しかし、万画一はさっと空を見上げると、「いやいや、この程度の雨なら、そんなもの必要ありませんや。