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小説『それぞれのパンデミック ~そのとき彼等は』関連マガジン

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小説家 悠冴紀著の最新作(小説)『それぞれのパンデミック ~そのとき彼等は……』の本文からの切り抜き紹介や、登場人物たちの言葉をピックアップした「試し読み」等の記事をご覧いただけ… もっと読む
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#文学

【小説】📕「それぞれのパンデミック ~そのとき彼等は……」 紙の本およびkindle電子書籍のご案内!

【小説】📕「それぞれのパンデミック ~そのとき彼等は……」 紙の本およびkindle電子書籍のご案内!

内容紹介▼☝️私こと悠冴紀の最新作、出版発表です🎉

タイトルと内容紹介でおわかりの通り、今回の作品は、大胆にも流行病に翻弄される現在を舞台に書いてしまったタイムリーな作品です。

「書いてしまった」と言うからには、それなりに葛藤というか、公開するに当たって迷いもありました。一つは、刻一刻と移り変わっていく現在進行形のこんな状況を背景に小説を書くのは至難の業で、場合によっては一瞬後に振り返ったと

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【小説】📖『迷走の未来』 (「それぞれのパンデミック」第一話の本文試し読み)

【小説】📖『迷走の未来』 (「それぞれのパンデミック」第一話の本文試し読み)



【2020年4月末頃】

 科学や医学の著しい発展にもかかわらず巻き起こってしまったまさかのパンデミックで、すべてが手探りの五里霧中だったこの日、自宅の窓では、無地で光沢のある分厚いブルー・グレーのカーテンが、月夜を縁取る窓枠に音もなく揺らめいていた。
 宮本が暮らす都内のマンションは築8年程度の12階建てで、10階の角部屋を1DKで借りていた。彼の今いる6畳の部屋には、飾り気のないシングルの

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【小説】 蝶の羽ばたき (📖小説「それぞれのパンデミック」 :第三話『古城屋敷の奇妙な一日』後半からの本文切り抜き紹介)

【小説】 蝶の羽ばたき (📖小説「それぞれのパンデミック」 :第三話『古城屋敷の奇妙な一日』後半からの本文切り抜き紹介)



⚫前話(P.93~98)はこちら

【蝶の羽ばたき】
(P. 118~123)

 この日の夜は、ひときわ月が明るく澄んだ空気をしていたので、寝室の窓を不透明な分厚いカーテンで塞ぎたくなかったJは、不用心ではあるが、珍しく薄いレースカーテンだけにしておいた。それも中央にあえて十数センチの隙間をつくり、中から月が見えるように。

「それにしても、噂というのは侮れないものだな。話に尾ひれがついて、

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