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小説『それぞれのパンデミック ~そのとき彼等は』関連マガジン

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小説家 悠冴紀著の最新作(小説)『それぞれのパンデミック ~そのとき彼等は……』の本文からの切り抜き紹介や、登場人物たちの言葉をピックアップした「試し読み」等の記事をご覧いただけ… もっと読む
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【小説】📕「それぞれのパンデミック ~そのとき彼等は……」 紙の本およびkindle電子書籍のご案内!

【小説】📕「それぞれのパンデミック ~そのとき彼等は……」 紙の本およびkindle電子書籍のご案内!

内容紹介▼☝️私こと悠冴紀の最新作、出版発表です🎉

タイトルと内容紹介でおわかりの通り、今回の作品は、大胆にも流行病に翻弄される現在を舞台に書いてしまったタイムリーな作品です。

「書いてしまった」と言うからには、それなりに葛藤というか、公開するに当たって迷いもありました。一つは、刻一刻と移り変わっていく現在進行形のこんな状況を背景に小説を書くのは至難の業で、場合によっては一瞬後に振り返ったと

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【小説】📖『迷走の未来』 (「それぞれのパンデミック」第一話の本文試し読み)

【小説】📖『迷走の未来』 (「それぞれのパンデミック」第一話の本文試し読み)



【2020年4月末頃】

 科学や医学の著しい発展にもかかわらず巻き起こってしまったまさかのパンデミックで、すべてが手探りの五里霧中だったこの日、自宅の窓では、無地で光沢のある分厚いブルー・グレーのカーテンが、月夜を縁取る窓枠に音もなく揺らめいていた。
 宮本が暮らす都内のマンションは築8年程度の12階建てで、10階の角部屋を1DKで借りていた。彼の今いる6畳の部屋には、飾り気のないシングルの

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【小説】📖『感染者たちの日常 ~ロックダウン真っ最中のドイツにて』 (📖「それぞれのパンデミック」第二話からの本文切り抜き紹介)

【小説】📖『感染者たちの日常 ~ロックダウン真っ最中のドイツにて』 (📖「それぞれのパンデミック」第二話からの本文切り抜き紹介)



【2020年4月中旬】

 緑の森ことグルーネヴァルトの名を持つ広大な森の中に、景観のいい湖がまばらに点在しているベルリン西部の郊外。かつては強制収容所行きの列車が走っていた負の歴史の痕跡を、あえて上書きせず形として残している駅舎を境に、東側には、見応えのある優美なデザインのホテルや大邸宅が、充分な間隔をあけて建ち並んでいる。そんな閑静な高級住宅街の中でも、中心部からは少し外れた緑深い場所に、

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【小説】『古城屋敷の奇妙な一日 ~侵入者たちの悲運』 (📖「それぞれのパンデミック」第三話 :前半からの本文切り抜き紹介)

【小説】『古城屋敷の奇妙な一日 ~侵入者たちの悲運』 (📖「それぞれのパンデミック」第三話 :前半からの本文切り抜き紹介)



【2021年9月初旬】

 この世の終わりとまではいかず、人類は相変わらずこの母なる星を汚染し続けていたが、外の世界は、まだまだ流行病を巡る騒動に揺れていて、次々に発生する変異種に振り回される一進一退の日々だった。その混乱に乗じてここぞとばかりに、独裁政権が息を吹き返したり、人民の自由と権利が国家権力によって脅かされるなど、世界中が短期間で激変し、不穏な時代が幕開けたというのに、この場は驚くほ

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【小説】 蝶の羽ばたき (📖小説「それぞれのパンデミック」 :第三話『古城屋敷の奇妙な一日』後半からの本文切り抜き紹介)

【小説】 蝶の羽ばたき (📖小説「それぞれのパンデミック」 :第三話『古城屋敷の奇妙な一日』後半からの本文切り抜き紹介)



⚫前話(P.93~98)はこちら

【蝶の羽ばたき】
(P. 118~123)

 この日の夜は、ひときわ月が明るく澄んだ空気をしていたので、寝室の窓を不透明な分厚いカーテンで塞ぎたくなかったJは、不用心ではあるが、珍しく薄いレースカーテンだけにしておいた。それも中央にあえて十数センチの隙間をつくり、中から月が見えるように。

「それにしても、噂というのは侮れないものだな。話に尾ひれがついて、

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出版作の紹介 & サイトマップ

出版作の紹介 & サイトマップ

〚 著者プロフィール 〛2007年、二人のサッカー少年を主人公にした純文学系小説『クルイロ~翼~』でデビュー(文芸社)。芸術心理学の観点から、スポーツ芸術としてのサッカーを描きつつ、密接な共依存関係の光と闇に着目した 異色の友情物語に仕上げている。

2012年、同出版社より、謎が謎を呼ぶカルト教団との攻防戦を縦軸に、人間心理や社会の闇に斬り込んだ社会派ミステリー小説『PHASE』を出版。2016

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