介護の学び#15【共感が生む繋がり】
介護業界での20年近くの経験をもとに、学んだことについて投稿していきたいと思います。
今回のテーマは【共感が生む繋がり】です。
介護の仕事は出会いの連続であり、人が人に対して行うためコミュニケーションが非常に重要です。
専門職としての知識や技術、経験はもちろん必要ですが、コミュニケーション力が全ての土台となります。
専門的な知識や技術を持っていたとしてもコミュニケーション力がなければ良いサービスには繋がらない…と言っても過言ではありません。
そんなコミュニケーションの中でも特に重要なのが「共感」です。
辞書やインターネット上で様々な説明がありますが、ここでいう共感とは考えや思いなどに寄り添う感情を示したり共に考えたりすることです。
共感は相手の気持ちに寄り添うというところが大きなポイントです。
共感は相手の感じたことや考えていることに対して「今そのように感じている(考えている)んですね」と寄り添う姿勢のことであり、あくまで主となるのは自分ではなく相手であるというところが重要です。
似た言葉に同感がありますが、同感は「あなたの思っていること(考えていること)と私も同じです」という意味であり、あくまで自分が主となる意味合いを持っています。
共感は相手の思いに寄り添う姿勢のため様々な状況でも行うことができますが、同感になると同じ経験や感情、考え方を持っていなければできないというある意味限定的な状況が必要となり、いつも同感するというのは限界があります。
同感も嬉しかったり安心するものではあるんですが、どのような場面でも自分の思いに寄り添ってくれたら嬉しかったり、安心したりするものですよね。
介護職として行うコミュニケーションの場面では「共感」が重要になります。
介護を受けられる方は、ひとそれぞれに生きづらさを抱えていたり、生活のしづらさや不安や悩みがあるからです。
その思いというのは経験しているその方にしかわからないものです。
だからこそ共感が重要なんです。
共感する力があると安心感や信頼感を与え、自分と相手が繋がる瞬間を生み出すことができます。
「自分のことを理解してくれようとしている」という安心感が「この人になら自分の思いを伝えたい」という信頼を生み、関りがより密になっていくからです。
また、共感する姿勢は反響します。
相手への共感を示すことで、相手も自分に対して共感を示してくれるようになります。
自分自身も相手のことを受け入れようという気持ちになるからです。
そして、この積み重ねや普段から繰り返していることで、どんどん人と繋がっていくことができます。
自分の思いに寄り添ってくれる人には、その安心感や信頼から多くの人を引き寄せていくんです。
反対に共感のない状態での助言(アドバイス)は最も人を遠ざけてしまう可能性があります。
共感のないアドバイスは指示や指導、一方的な押し付けのように伝わってしまい、心の距離が近づくことがないからです。
例え丁寧な言葉を使っていても、どんなに知識や技術が優れていても、その人の話は聞きたくない…という感情が生まれて人は離れていってしまいます。
共感が人と人を繋ぎ、共感によって繋がりを強めたり持続させることができるようになります。
介護の仕事を通して学んだ【共感が生む繋がり】
長期の施設を利用されている方の夏の入浴介助での出来事です。
入浴があまり好きでないA利用者様がおられました。
その場の受答えや意思決定は可能ではありますが、長期的な記憶(記憶の保持)等には難しさのある方です。
職員たちはいつも入浴の声掛けの方法やタイミングなどを考えて、気持ち良く入浴してもらえる方法を考えていました。
職員たちは…
「お風呂に入ると血行も良くなりますし、さっぱりして気持ちがいいですよ?」
「もうすぐお食事ですので、食事前にきれいにしませんか?」
「ささっと終わるようにしますから入っていただけませんか?」
と代わるがわる声をかけていきます。
しかし、その日は特に入浴したくないという気持ちが強く、ついには大きな声で「助けて!」と叫ばれるようになってしまいました。
不安が強いみたいだし、今日はお風呂はやめよう…職員たちがそう話していると、一人の他のB利用者様が近づいていきました。
その方は少し微笑みながら、大きな声で叫ばれる利用者様に穏やかに話かけました。
B利用者様:まあまあ、おばあちゃんどうしたの?職員さんらはひどいことしようとしてるんじゃないから大丈夫よ。何がそんなに嫌だった?びっくりしたの?
A利用者様:寒い…
B利用者様:そうだったのおばあちゃん、寒いのか。お風呂はあったかいお湯を準備してくれてるよ?今は夏だ、おばあちゃん。寒いのか?ちょっと腕を触ってみよう…本当だ、ちょっと冷たいな
A利用者様:冷たいやろ?私寒いねん…ここ冷たいし嫌や
B利用者様:冷たいのは嫌だわなそりゃ…冷房が効きすぎてるか?止めたげようか、そしたら風が止んで冷たいのマシだわな。冷房の下だし余計だわ。あっちいくか?おばあちゃん
A利用者様:行く…
B利用者様:なら一緒に行こう(手を繋ぐ)…ああ、おばあちゃんやっぱり手が冷たい、寒かったんだな、ごめんごめん。もう大丈夫だわ。だからあんな叫んでたのか…。おばあちゃん熱は?頭見てもいい?(おでこに手をあてる)ここはどうもないみたい。どっか悪い?
A利用者様:どうもない
B利用者様:ほんなら良かったわ。念のため職員さんらにお熱測ってもらうか?そんだけ寒かったんだったら何かあったら悪いからな。お熱なかったら入れるわな。職員さん、おばあちゃんの熱測ってもらっていい?
職員が熱を測り「36.8ですね、お風呂大丈夫ですよ!」と声をかける…
A利用者様:嫌や言うてるやんか!触らんといて!
B利用者様:まあまあ、おばあちゃん、良かったやんか。熱もなかったわけだし。寒いのも冷房切ってるからもう大丈夫だで。一緒行こうか?面倒なのか?おばあちゃん。手伝おうか?(服に手を伸ばし、服を脱がそうとする)ありゃ、かたいな、こりゃ力がいるわな、職員さんにお願いしようか。職員さんちょっとお願いできる?
さっきまで少し触れると叫ばれていた利用者様は、静かに渋々という表情ながらも服を脱ぎました。
A利用者様が服を脱いですぐにB利用者様が首と胸を覆うようにタオルをかけました。
B利用者様:ほらおばあちゃん、これでいくらかマシなんじゃない?
A利用者様:おおきに、ありがとう。
お二人は一緒にお風呂に入っていかれました。
ここで登場されたB利用者様は認知症の診断を受けており、A利用者様と大きな変わりはない程度の理解力で年齢もほぼ変わりません。
B利用者様は介護や看護師としての経験もありません。
………
私はこの時【共感が生む人と人の繋がり】について学びました。
10分もないような一瞬のやり取りでしたが、その光景はあたたかく、非常に魅力あるものとして未だに鮮明に記憶しています。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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