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日刊うたうたい。

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短歌らしきものを綴ってまとめていきます。 毎日七首、誰かの一週間を支えるうたになりますように。
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#短歌連作

月曜日の歌 8週目

月曜日の歌 8週目

この雪のように白い柔肌で
この血のように赤い唇

あの人の嫉妬が殺すというのなら
この美しさでとり殺そうか

美しい娘もこうなりゃ獣と変わらない
内臓 わりと身近な味だね

この森の七人とともに住んでいる
たった一人の娘がいるよ

首紐に飾り櫛に毒林檎
一番の美貌の証明にする

目が覚めた瞬間残念そうな顔
きみの遺体が 欲しかったんだよ

おかあさま 真っ赤な靴もお似合いで
ダンスもとっても素敵で

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日曜日の歌 8週目

日曜日の歌 8週目

あかずきん パンとワインを 持ってって
道中寄り道しちゃダメですよ

花畑 教えてくれてありがとう
これは寄り道ではなくってよ

軽やかに木の戸を叩く音がする
娘か孫か? いやオオカミさ

生温く生臭く赤い肉の道
通って死んでたまるものか

すやすやと ネグリジェ、ナイトキャップまで
かぶりベッドで眠るオオカミ

黒い空 縦に裂かれて 血塗れの
生まれて二度目に腹からい出る

オオカミの血に濡れ

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土曜日の歌 8週目

土曜日の歌 8週目

新しく母となったそのひとは
一緒に死のうと言ってくれない

ポケットに光る石を詰め込んで
歩け歩けよ 森の兄妹

ひとかけのパンをちぎりつつ
それでも家に帰りたかった

ビスケット キャンディ 飴チョコ
カラフルなクッキーボーイも御出迎え

少しだけしょっぱいものが恋しくて
壁のカステラ 飽きたこの頃

山鳩を焼くよりとても簡単に
老女を騙してローストしたの

ポケットに宝石金貨を詰め込んで

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月曜日の歌 7週目

月曜日の歌 7週目

色のない世界の中でただひとつ
生きる喜びなの 赤い靴

信仰も涙もひとの涙さえ
赤い靴には勝てっこないの

「死して尚、踊り続けるのが罰だ」
綺麗な顔で天使が告げる

葬送の別れも祈りも涙すら
流せずにいる 踊ったままで

罪人の首を切るのが仕事なら
私の脚はつみびとですよ

穢れなき少女が踊り叫んでる
私の脚を切ってください

穢れある我が手にキスし礼を言う
「貴方の両手に祝福あれ」

連作「赤

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金曜日の歌 7週目

金曜日の歌 7週目

憧れの海の上を生きる人
恋を知った 15歳の夜

声を捨て鱗を捨てて得たものは
傍にいられる幸せでした

「歩く度、足が痛むよ。それでもかい?」
どうして魔女は 痛みを知ってる?

姉たちに踵を返し 受け入れる
別れの夜ににっこり笑って

困ったな 憎めもすれば楽なのに
わたし、貴女もだいすきだもの

曙に消えゆく わたしのさだめなら
最期の願い どうかしあわせに

風になり あなたの横を通る時

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木曜日の歌 7週目

木曜日の歌 7週目

夜ライブ気合いで定時に帰るぞと
カバンにペンラ入れて出勤

残業中 推しブロマイドが聞いてくる
仕事と僕とどっちが大事?

寝なきゃとは思っているよ、思っては
23時からリアタイするけど

新しい服も新色コスメまで
推しの色です 推しの衣装です

何食わぬ顔で通勤ラッシュタイム
押しつぶされつつ推しの曲聴く

飯を食え 暖かくしてよく眠れ
舞台もライブも最高だったよ

恋人というよりむしろオカン目

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水曜日の歌 7週目

水曜日の歌 7週目

けだるさをぬるいポカリと飲み込んで
甘さが痛く しみるのどもと

アスファルト 格子の切れ目 炎天下
ハニートースト思い出してる

綿菓子と呼ぶには少し硬そうで
綿と呼ぶには薄い霧雲

吐く息も凍りつくよう 冬の日に
ガトーショコラの上を歩く

冬休み 宿題の絵に飽きた子と
季節外れのかき氷たち

憧れの焚き火の前に用意する
袋いっぱいプレーンマシュマロ

オーブンの前に立つ人誰も皆
甘い匂いに溶

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月曜日の歌 6週目

月曜日の歌 6週目

雲一つない晴天の祝日に
マフラーいらないことに気が付く

面影を必死に追って涙する
からだばかりが 大きくなって

振袖と袴のひとに抱かれて
昔の君がすやすや眠る

艶やかに カカト鳴らして 髪揺らし
袖振り笑う あたしら二十歳(はたち)

昨日のよう産着の君に出会った日
大人の顔のこどもたちよ

すれ違う若者たちを眺めつつ
おめでとうと頑張れ込めて

それぞれの思いや暮らし纏わせて
それでも皆が

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月曜日の歌 5週目

月曜日の歌 5週目

100グラム前後の紙の束魅せる
手のひらの上 無限の世界

お財布と変えの下着と携帯と
いつもの文庫をカバンに入れて

「今買うの?すぐに文庫も買うくせに」
「ハードカバーは、別物カウント」

大切な1冊胸に生きていく
この身一つで生きてはいけない

特別な儀式 寝る前 頭を悩ませる
今日の最後に読む本はなに?

美しく生きる理由にはならねども
死ねない理由の未完の大作

ことのは 紡ぐ人と 紐解

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日曜日の歌 5週目

日曜日の歌 5週目

カスタードの天鵞絨の上に敷き詰めて
食べる宝石 ショーケース並ぶ

全世界に今知れ渡る 焼き菓子は
遠い異国の誰かの思い

アルコール 苦さ 香りも わからずに
これが大人の味かと思う

赤緑 箱から取りだし日にかざす
ステンドグラスを覗く瞳

憧れと嬉しさ併せ蝋燭に
照らされる イチゴ 目に焼き付いて

故郷の初雪景色によく似てる
黒い大地に粉砂糖 降る

幸せを小箱に詰めて持ち帰る
甘さの前に

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金曜日の歌 5週目

金曜日の歌 5週目

箱根路を吹き抜ける風 吸い込んで
味方につけて 行く五十五里

病める日も健やかなる日もこの脚の
行けるとこまで行くだけですから

数秒間 枯れる気力を振り絞り
背を押し叫ぶ 頑張れの声

山の神 二十のなかの一人だけ
山の女神に愛された者

来る人と 諦めなかった待つ人を
別つ音と 乾いた襷

箱根山 神の道を駆け下りて
都で待つる 仲間の元へ

涙 汗 沁みる襷をそれぞれの
胸に道行く若人らよ

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木曜日の歌 5週目

木曜日の歌 5週目

箱根路の 凍った空気を駆け抜けて
今年も我が家に 正月が来た

近況を 年に一度 伝え合う
これから一年 また会わぬひと

よろしくと 声をかけ合う人の波
君の手のひら そっと握るよ

初詣 神様よりも君に会うために
早起き罰当たりな僕

松の葉の先に凍った朝露に
光る初日を 飲み込んだひと

お雑煮もおせちの中身も違うけど
二人でだったら楽しいかもね

一日の夜に疲れて寝る君の
初めての夢のさ

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年末年始の歌

年末年始の歌

「来年は毎日掃除するからな」
「去年も言ったよ 窓拭きながら」

待つ子らへポチ袋とピン札と
用意し始まる帰省支度

道中の混雑予想 手土産で
増える袋を計算に入れ

実の中のさらに小さなみかん見て
ぼくみたいだと笑う幼子

薄皮に栄養があるという母と
食いにくいだろとちまちま剥く父

武道館 実家に コミケ最終日
それぞれ過ごす この大晦日

走り去る月を追いかけ駆け抜けた
僕から僕へ襷をわた

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月曜日の歌 4週目

月曜日の歌 4週目

パッチンと切符の切られる音がなる
Suicaで行けない 駅に帰る

寝る食べる ビールを飲んで外を見る
それぞれの旅 電車内

後席から腕のアーチをくぐりぬけ
車窓をレールに 走るおもちゃ

都内から片道列車三時間
行けば行くほど 冬が濃くなる

並ぶ列 紙袋のなか おそろいの
菓子折り2つ きみも帰る人

福袋 予約を前に祈るよう
戦いは既に始まっている

道をゆく 人々の群れ それぞれの
ただ

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