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Ⅰ章 彼の場合 あとがき

感謝
 私の処女作『それぞれの行き先 Ⅰ章 彼の場合』を読んで頂きありがとうございました。
現在も闘病中ですが、最近難聴を併発してしまい、大好きな楽器が鳴らせなくなった私を観て、彼女が「小説書いてみ」と言ってNoteを教えてくれた事がきっかけで本作は始まりました。(その割に随分と内容重いな!)

 私は小説をあまり読みません。当然、想像力も作法も足りない状態からのスタートでした。題材は、背景は、世界観は、イイタイコトは……?

考えていくうちに創作小説の沼にハマっていくのを感じました。
どんなに考えてもキリがない。どこに着地すればいい。
そんなことばかりが、頭に出ては消え、を繰り返しました。

 堂々巡りに痺れを切らした私は思いました。
ある程度考えたら、あとは書きながら考えよう。
そう決めて木嶋の旅は歩みだしたのです。

 約一か月に及ぶ、木嶋の物語。
書き始めた当初は、彼はどこに着地するんだろうか。彼の船が付ける岸はどこだろう。そんなことばかり考えていました。

そうして悩みながら始めた彼の旅は、こうして無事に着地点を見つけ、そして新たな旅へ向かいました。
最後まで読んでくださった皆様と一緒に彼の船出を送ることが出来て、心から安心しています。

 さて、今回は本作の説明と試みについて書いていこうと思います。
全部を読んでくださった方でないと解らない内容かもしれません。
ご容赦ください。


木嶋について
 木嶋にはモデルがいます。
私が転勤先で親しくなった友人です。実在します。
木嶋は、彼をモデルにかなりデフォルメして、更に作品の要素として必要な脚色をして出来上がったキャラです。(本物はね、もっと酷い笑

女性に痛いところを突かれても全く怒らない点などは、そのままだったりします。反発する勇気もなければ、受け止める覚悟もなかったのでしょう。
本質的に傷つくのが怖かったのかもしれません。
切り付けられたところから出てくるものが感情なら良いのでしょうけど、それすらないと思ったら確かに恐ろしい。

だから思考停止の沼に惹かれていったのでしょうね。

 本作は、そんな彼にもし救いがあるのなら……。という方向で話を進めていくことにしました。

かなえについて
 かなえは独自のキャラクターです。私が考える「彼が核心を言われても逃げない/逃げることが出来ない人物」を想像して書きました。

同じ穴の狢であれば、何を言われても逃げれるんですよ。③話に出てくる「あの子」や①話に出てくる「あの人」は結局、爛れることに躊躇がない。
そういう人たちとは向き合わなくても共存していけるので。

 ただ、かなえは違う。抱えてるものがあって向き合おうとしている。

それが彼にとっては「自分にないもの」で惹かれてしまった。
だから逃げれなかったのだと思います。
でなかったら、泣いてても「また泣いてるの?」とは聴きかないんじゃないかな。

「僕と彼」について
 これは意識的に取り組んだ仕掛けでした。実際にギミックとして作用したかは実感がないですが……。
物語は、基本的に「僕」と「彼」を繰り返して展開していきます。

 これは現代の人の視点、思考を疑似的に作れないかと考えて試したギミックです。

ネット社会になった今、ひとつの情報媒体だけで物を観る人、考える人は少なくなったと思います。では、どう見ているのか。

 実際の出来事とそれに対する客観的な目線。
―――—主観と客観。
私は、このふたつを軸に観て、考え、判断しているように思います。

例えば、コロナがいい例になるかもしれません。
テレビや新聞では感染者を日夜、過剰な報道を繰り返されています。
そこだけを受け取って情報を信じる人は、以前よりだいぶ減っているんじゃないでしょうか。

実際に従事している方や議員、専門家がSNSやYoutubeで発信する言葉や厚生省の報告書など、複数の情報や視点を集めた方がコロナ(問題や出来事)に対して正確な理解が出来ますから。

 これは物事に対して、受動的で一方的な見方ではなく、能動的かつ多角的な視点を我々、現代人が得たということでしょう。
ネット社会は、人に多角的な視点を授けて進化させた(同様に堕落させた)。

 新聞やメディアよりも遥かに具体的で信頼のおける客観的な視点。
現代人は、これを基に自分の身の回りで起こっている主観と織り交ぜて、判断を行っているように思えるのです。
 要するに、ネット社会がより客観的な情報を判断材料として、大きな割合を占めたという事です。 

 そう考えたとき、我々現代人の見方で小説を読むなら、複数の視点で見た方が面白いのではないかと思いました。
それが「僕と彼」でした。

結果として友人たちからは大不評でした。皆に言われた。読みにくいって。
ダメだったか……orz。

 ただ、ひとつだけ上手くいったことがあります。
 それは読者を「木嶋に感情移入をさせなかった」ことです。
 彼の事は、あくまで客観的に捉えて欲しかった。

 この話はあくまで、「このダメ男はどうなるんだろうか」という方向で眺めて欲しい。そういう意図をもって書きました。(エッチなところ『だけは』没入してください。)
※あくまで著者の想いなので好きに読んでください。

文体について
 当初は、可能な限り簡素に、かつ文体の量を少なくして読みやすく書くことを心掛けました。Noteのユーザー層はどんな人達か見えなかったので……。
最初は、2000字以内。同じ言葉は使わない。簡素に。細かい描写や人物の容姿は読者に委ねるというスタンスで始めました。(これも友人たちからは不評でした。)

それが段々と話が進むにつれてどうしても書かなければならない描写が増えていき、文量が増えていきました。
だいたい平均して2700字くらいで納めましたが、それでもだいぶ削りました。(最終話は約3800字でした。)足りない言葉があったとしても無駄な文は一行たりともないはずです。

分量が多くなって不安に思いましたが杞憂でしたね。
むしろどんどん読んでくださる方が増えました。
おかげで気持ちが楽になりました。有難うございました。
今度は4000字超えたら読まないとかやめてね。

意外だったのは、友人たちの多くから「某〇上春樹氏に文体が似ている」と指摘されたことでした。
氏の著作は『風の〇を聴け』と『海辺のカ〇カ』しか読んでいません。
しかもそんなに好きじゃない。。。目指したのは、小野不由美先生であって、宮本輝先生であって、夏目漱石先生なんだけどなぁ……。と思いつつ諦めました。


自分の書きたいように書こう。自分の作品なんだから。


曲の挿入について
 元から考えていた案でした。
 小説には出来ないこと、それでいてNoteなら出来ることはなんだろうか。
考えた末に思いついたのが曲の挿入でした。著作権的な部分が怖いので可能な限り、公式の動画やHPを載せるなどしていますが、今後NGが出れば、廃止の方向で考えています。
読み終えた人が歌詞を聴いて、作品を思い返せるような曲をチョイスしました。

次回作について
 次回作は決まっています。今回と同じように転勤先で出会った方をモデルにして書くつもりです。

本作が「空の器」なら、次回は「器だった欠片」です。
破片になった人間に救いはあるのか、がテーマになります。

病気の都合上、今までのようなペースでのリリースは難しいと思います。
週に一度くらいのペースでコラムか小説をリリース出来たらと考えています。どうかご容赦ください。


最後に
 ここまで読んで頂きありがとうございました。
歳を重ねてから余計に感じるのですが、始めるの結構大変なんですよね。
そして始めたら終わらせる。これがもっと難しい。

展開が浮かばなかったときは閲覧数を観ながら頑張りました。
拙いなりに書いた、自分を見失った木嶋とそうでない女性たちの対比、特にかなえとの対比が少しでも伝わっていたなら嬉しいです。

見えない読者の皆様、不慣れな私に助言してくれた友人たち、そしてきっかけを作ってくれた恋人、そして盛大にネタになってくれた友人……。

掛け替えのない時間を頂いたこと。
心から感謝いたします。
有難うございました。

藤代琉太郎

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