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嬉野高校の生徒が企画した「うれしの小さな旅」に反省会までみっちり参加してみた

嬉野温泉 旅館大村屋がお届けする「嬉野温泉 暮らし観光案内所」にようこそ。連載のために月に1度は必ず嬉野温泉に泊まっている、ライターの大塚たくま(@ZuleTakuma)です。

今回の取材でやってきたのはこちら。

佐賀県立嬉野高等学校です。

旅館の公式noteとしては異例の取材先かと思いますが、取り上げるのはなんと2回目。前回は嬉野高校の観光課で教員を務めている、山本先生にお話をうかがいました。

今回はその山本先生が教えている、嬉野高校の観光流通系列の生徒が企画している「嬉野高生と巡る うれしの小さな旅」を、ライター大塚が参加させていただくことになったのです!

手作り感あふれる告知看板

いったい、嬉野高校で観光を学ぶ生徒がどんなツアーを企画し、どんな案内をしてくれるのか、興味津々。

看板には高校生たちの姿が

嬉野高校からはじまるツアーを、その後の反省会までみっちりレポートします。

はじまりは新幹線「嬉野温泉駅」から

真剣な表情の山本先生

嬉野高校の正面入口がツアーの受付。玄関には山本先生が、生徒たちとコミュニケーションを取りながら、受付業務を見守っていました。体温チェックと消毒を済ませ、講堂へと案内されます。

講堂では、和太鼓部の演奏を鑑賞することができました。

嬉野高校の和太鼓部「嬉昇伝心太鼓」の皆さん

嬉野高校の和太鼓部は、1999年の文化祭で和太鼓を披露した有志がきっかけとなって生まれました。

「嬉野市と嬉野高校の今後の発展と、自分たちの演奏が聴く人の心に届くように」という願いを込め、「嬉昇伝心太鼓」と名付けたそうで、20年以上も受け継がれているとのこと。(なんかいい話なので紹介しました)

高校生の演奏は迫力十分

……それにしても、この至近距離で集団の和太鼓演奏はなかなかの迫力です。「うれしの小さな旅」への期待が高まります。

和太鼓の演奏が終わると、高校生の先導で旅のスタート。

嬉野高校を徒歩でスタート

案内ボードを持つ高校生の後ろを、大人がぞろぞろとついていく姿は「うれしの小さな旅」ならではでしょう。

嬉野高校から徒歩で目指す、1つ目の目的地は……?

なんと、開業前の「嬉野温泉駅」です。嬉野高校から徒歩5分程度の場所にあるということで選定されていると思いますが、あえて今行くのはシブいですね。

目的地に到着すると、高校生自ら考えた案内文を読み上げながら、ガイドしてくれます。これが、これまでの学習発表でもあるわけです。

渾身の案内に、聞いているこっちも「がんばれ……!」と力が入ります。授業参観の親のような気持ち。

開業前の駅をこんなにマジマジと眺めることもないので、いい体験になりました。新幹線の開業後、嬉野はどう変化するのかな。

「嬉野温泉駅」を眺めている内に、観光バスが到着。ここから先はバスに乗り込み、各観光スポットを巡っていきます。

「嬉野温泉駅」を案内してくれた2人はバスで挨拶をして、ここでお別れ。こういった形で、高校生のメンバーが自分の担当する持ち場を代わる代わるガイドしてくれるみたいです。これはなんだか面白いぞ。


見て食べて体験して楽しめる充実コース

ブーゲンハウス嬉野

次に訪れたのは「ブーゲンハウス嬉野」。嬉野に10回以上取材に来ているぼくも、まだ行ったことがない場所です。

ブーゲンビリア。実は白い部分が花である

「ブーゲンハウス嬉野」には、25種類以上、約400本のブーゲンビリアが室内中に咲き誇っています。これは日本最大級の規模なのだそうです。こんな凄いところが嬉野にあったとは。

次に訪れたのは、うれしの茶交流館「チャオシル」。ここではお茶の入れ方教室を体験できます。

これまでなんとなく淹れていたお茶。正しいお茶の淹れ方を知ることで「急須で淹れてみようかな」とか「いいお茶を買ってみようかな」という気持ちが芽生えます。

ぼくは以前「茶輪」の取材時に訪れましたが、その時に「淹れた後の茶葉に昆布だし入り酢醤油をかけて食べると美味い」という情報を知って以来、実行しています。いい茶葉じゃないと美味しくないんですって。

体験後は担当学生がバスへバイバイ

その後、バスで嬉野温泉のバスセンターへ。

バスセンターから徒歩移動

温泉街を歩いてたどり着いたのは、嬉野ではおなじみのこちら。

宗庵よこ長

嬉野温泉湯どうふの超有名店「宗庵よこ長」です。以前こちらのnoteで取り上げました。

食事のアテンドまで高校生が行います。湯どうふセットが提供される前に高校生自ら、嬉野温泉湯どうふについて紹介しました。

店内でのガイドも高校生自ら行う

お花、お茶、温泉湯どうふ。これでもかと続く、いたれりつくせりのコースたち。おいしい湯どうふを堪能したあとは、足湯を体験。

足湯でもしっかりガイド

足蒸し湯もある宗庵よこ長横の「湯宿広場」は嬉野温泉街に3箇所ある足湯の中で、もっとも満足度が高い足湯だと思います。まさに、研究の成果!!(たぶん)

足湯用にタオルもしっかり準備

この頃にはツアー参加者との距離感も縮まり、コミュニケーションも活発になっていました。めっちゃいい雰囲気で、高校生も楽しそう。

嬉野高校ソングリーディング部の皆さん

「湯宿広場」では、嬉野高校ソングリーディング部がパフォーマンスをするサプライズも。

嬉野の魅力も体感しながら、がんばる高校生の姿に元気ももらえるこのツアー、めっちゃいいじゃないか!!

豊玉姫神社担当の二人

湯宿広場から歩いて移動し、美肌の神様「豊玉姫神社」へ。参加者にお作法を伝え、参拝しました。

その後は嬉野温泉の商店街で使える商品券を配布して、街歩き。

参加者に商品券を配布し街歩きを促す

商品券があれば、お店に入るきっかけにもなるし、いいですね。意図がはっきりわかる企画です。

街歩きが終われば、ツアーはおしまいです。みんなでバスへ乗って、集合場所だった嬉野高校へ戻ります。

最後は山本先生からもお礼の挨拶

「うれしの小さな旅」はトラブルもなく、無事に終了。参加者はもちろん、高校生も山本先生も充実した表情でした。

自分たちで企画して、参加者が楽しめるツアーをやり遂げた高校生たちは自信になったことだろうと思います。

自らも楽しみながらガイドしていました

それにしても、「うれしの小さな旅」というネーミングが秀逸です。

「小さな旅」というコンセプトは暮らし観光にも通ずる

一日にこんなにギチギチに体験メニューを詰め込めたのも、このツアーが「小さな旅」だからです。

嬉野には、こんなに小さな範囲に面白い場所がこんなにたくさんあるのかと、改めて実感させられました。

今回のツアー参加者は近隣の方が多かったようですが、反応は上々で、皆さん楽しんでいらっしゃいました。改めて地元の方が廻ることで「再発見」することも多いのでしょう。有意義な時間でした。

嬉野高校で観光を学んだ感想を聞いてみよう

単なるツアーレポで終わりませんよ

……ここで終わらないのが「暮らし観光案内所」です。あれから約1か月後、ぼくは旅館大村屋の北川さんと一緒に、再び嬉野高校を訪れていました。

嬉野高校のツアー、楽しかったみたいですね。

──想像以上に楽しくて、ぼくも勉強になりました。今日は山本先生に話をして、皆さんの貴重な授業の時間を確保してもらっています!

ほんとだ、取材が授業になってる。何度か嬉野高校でお話をさせたいただいたこともあるんですが、久々ですね。楽しみだな。あ、生徒の方ですね。こんにちは!

こんにちは〜!!

──(こんな大勢に取材って初めてだな……。)

卒業を控える嬉野高校の生徒の皆さん

キーンコーンカーンコーン……キーンコーンカーンコーン……。

はい、ということで今日の授業は座談会。これまで、みんなが観光を勉強したことについて取材に来ていただいています。皆さんから見て、左にいる方が北川健太さん。

北川です。よろしくお願いします。

私が話をする人ということは、新しいことや変わったことをお客様のためにできたらいいな、という考えの方ということですね。私はそういう方じゃないと、仲良くできないので……。

──(相変わらず尖ってるな……)

その隣にいらっしゃるのが、ライターの大塚さんです。

──ライターの大塚です。よろしくお願いします。

今日はおしゃべり会なんで、いちばん困るのが「黙ること」です。勉強していて思ったこと、感動したことでも不満でも何でもいいから、喋ってくださいね。


──まずはツアーの感想を伺いたいですね。誰に聞こうかな……。あ、座長という方がいらっしゃる。座長視線でもそうでなくてもいいので、今回のツアーの感想を教えていただけますか?

自分たちでイチからツアーを考えることがすごく大変でした。お客さんに楽しんでもらうにはどうすればいいか、意見がなかなか出なかったこともありました。

最終的に嬉野の「あそこがいい」「ここがいい」という意見は出たんですか?

出ました。まずは全員それぞれツアーのプランを作ったんです。その後で、3つグループを作って、それを一つにまとめました。まとめていくのが大変でした。

最終決定のコース

今回、実際に行われたコースとは別のコースがあったんですね。他にはどんな候補地があったんですか?

轟の滝とか、忍者村の肥前夢街道とかですかね。嬉野の魅力を探す活動は2年生の頃からやっていて、3年生になって具体的にツアーの内容を決めるようになりました。

しっかり答えてくれる竜田座長

2年生の頃をちょっと思い出してほしいんですけど……。「こんなとこあったんだ!」っていう、発見はありましたか。

「おひるね諸島」は初めて知りました。他のお店とはぜんぜん違う雰囲気のカフェだなぁ、と思いました。他にも「何の店かわからないな」と思っていて、入ってみて「こんなお店だったのか」と知ったこともありました。

おひるね諸島は連載でも取り上げました

たとえば、どんなお店がそんな感想を持ちました?

「嬉野交流センター」にはお土産や、いろんなアクセサリーとかも売っているんだ、とか。

嬉野交流センター:「暮らしの魅力」と「新しい発見」に出会える場をコンセプトにした施設。さまざまな嬉野にまつわるグッズが揃う。

あぁ、たしかに。「嬉野交流センター」の看板を見ても、そういうものが売っているとは思わないかもしれませんね。車で通るだけじゃわからないこともあるでしょうね。街の魅力は、実際に歩いてみないとわからないから……。

──そんないろいろなお店の中から、今回のコースが選ばれたということですよね。取捨選択する上で注意したことはありましたか。

「見る」「食べる」「体験する」という要素を入れ込もうという話になりました。

たしかにコースを見ると、花を見て、湯どうふを食べて、お茶の体験ができるようになっていますね。実際にツアーをやってみて、大変だったところはありますか?

ツアーを実際にやると、各場所での集合時間が早くなることがあって。電話をしても、うまく連携が取れなくて。

「思ったよりも早く来た!」みたいなね。わかるわかる。

──そういう体験ができるのはいいなぁ。やっぱり自分でやってみるって大切ですね。

勉強して初めてわかった地元・嬉野の魅力

ちなみに、山本先生は今回のツアーにはどんな感想を持っていらっしゃるんですか?

高校生の熱量が参加者の皆さんには伝わったと思っています。アンケートには「遠慮せずに書いて」と言ったので、厳しい意見もありました。でも、大半は「応援したくなる人達でした」とか好意的な意見が多かったです。

──なるほど。今回のツアーは、全て高校生が自分でつくったものなんでしょうか。

全部が全部任せてしまうとうまくいかないので、手が出せるところは若干出しています。ただ、高校生ができることは基本的に任せるというスタンスです。お店の交渉なども高校生が自分でやりましたよ。

山本先生は安心して実行できる環境づくりを行っていた

──今回廻ったコースって、ベタなんでしょうけど、地元の方は意外と行ったことがないというところも多そうですよね。たとえば「ブーゲンハウス嬉野」に授業で行く前に行ったことがなかった人はどれくらいいますか?

(ほぼ全員挙手)

──やっぱりそうなんですね。では、宗庵よこ長で湯どうふを食べたことがなかったという人は……?

(大多数が挙手)

──これもやはり多い。

やっぱり、観光客向けの場所なんですよね。地元の人はなかなか行かないと思います。観光客が多くて、スムーズに入れないし。

──そういう観光客が気になっている場所の魅力を、地元の人も知っておくというのは重要なことですね。今回のツアーはそういう機会を提供できたと思いますよ。

観光業界へ夢を持ち入学する嬉野高校のみなさん

将来の夢を持って、嬉野高校の観光流通系列に入ったという方はいますか。

私は旅館やホテルの仕事に就きたいと思って、観光の勉強ができる嬉野高校に入学しました。

旅館やホテルで働きたいと思ったのは、いつ頃だったんですか?

中学1年生の頃から旅館やホテルで働きたいと考えていました。海外の方と関わる仕事がしたいと考えるようになっていたので、英語を勉強しています。

なるほど……。はやくコロナが収束して、インバウンドのお客さんが戻るといいですよね。他にも、旅館やホテルの仕事がしたいと考えていた方はいますか。

私も観光業界に入りたくて、嬉野高校に入学しました。私は小さい頃から家族旅行によく行っていて、私自身も旅行が大好きなんです。

旅行のどんな要素が好きなんですか?

旅館とかテーマパークのスタッフの方が素敵な対応をされることに感動しています。旅行の重要な要素ですね。

──さすが、将来観光業界で働きたいと思うほどの人は、目線が違うな……。

私は将来キャビンアテンダントになりたくて。観光流通系列について、詳しくは知らなかったんですけど、人とたくさんコミュニケーションをとれるのは観光流通系列だと思って、選びました。

──へぇ……。偏差値だけで高校を決めていた自分とは違う…。

私も都内のホテル、旅館で働いたこともあるんですが、いちばん大事なのって「会話」ができる人なんですよね。決まったことを言うだけじゃなくて、自然に日常会話ができる人。簡単に見えて「いい塩梅」が難しいんですよね。


卒業を控える生徒たちに山本先生から一言

──山本先生のおかげで有意義な時間になってよかったです。高校生がどんな想いでこのツアーに取り組んでいたかがわかりました。

もう生徒の皆さんは、卒業が控えてるんですよね。

いろいろ思うところはあるでしょうが……。観光流通系列で学んだことには自信を持ってほしいです。ほかの学校では学べないことを学べているはずなので。胸を張って社会に出てほしいですね。

──本日は授業の貴重な時間を使いまして、貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。

地元の若者が地元の魅力を考えることの重要性

最後はみんなで記念撮影

めちゃめちゃいい高校……。めちゃめちゃいい授業……。

大人と接する機会を増やし、社会的な人間として指導する、嬉野高校観光流通系列の指導はとても魅力的だと感じました。

ぜひ「うれしの小さな旅」を企画したメンバーの皆さんは、将来観光業界に身を置こうとも置かずとも、このツアーの経験を自信にして社会に飛び出してほしいと思います。

そして、嬉野から外へ飛び立っていったとしても、故郷への誇りを持ち、外の方に意気揚々と嬉野のいいところを話せる大人になってくれるといいですね。

ぜひ、今回の記事を読んでくださった方は、山本先生の想いを綴った以下の記事も読んでみてください。あわせて読むと、面白さ倍増です。

「嬉野温泉 暮らし観光案内所」次回もご期待ください。


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