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これからもずっと、嬉野温泉の魅力は「人」である。

嬉野温泉 旅館大村屋がお届けする「嬉野温泉 暮らし観光案内所」にようこそ。連載のために月に1度は必ず嬉野温泉に泊まっている、ライターの大塚たくま(@ZuleTakuma)です。この連載も今回で5回目となりました。

じつはぼく、連載のための嬉野滞在は今回で3回目になるのですが、過去2回で2回とも偶然お会いした方がいるんです。

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1回目は「おひるね諸島」で。

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2回目は「シーボルトのあし湯」に浸かっているところに。こんな偶然あります?

この方のお名前は、山本敏郎さん。

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佐賀県立嬉野高等学校の教員をされてらっしゃいます。えっ、高校教師?

いつも嬉野温泉街を高校生と一緒に歩いている姿が目撃されています。いったいこの方は何をやっているのか。気になったぼくは、さっそく取材依頼。

山本先生が嬉野温泉街をブラブラして、いったい何を企んでいるのか、旅館大村屋の北川さんと一緒にお話をうかがいます。

「嬉野には何もない」と語る地元の高校生

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――山本先生と北川さんが最初に会ったのは、いつですか?

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10年以上前ですよ。ぼくが嬉野温泉に帰ってきて、旅館を継いで、すぐくらいです。

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ぼくが嬉野高校にきたのが、2005年で。現在のような活動を始めたのが2007年とかなので…。

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ぼくら、同じくらいの時期に嬉野に来ているんですね。嬉野高校に赴任されて、すぐ観光コースに配属されたんですか。

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そうですね。私が観光コースに来たときは、まだ座学ばっかりで。外に出ることがあるとするなら、行政ですね。役場の観光商工課に新幹線開通の件についての調べ学習をするとか。現在のように、嬉野高校の観光コースの生徒が地域の現場の皆さんと関わることってなかったですからね。

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2022年秋開業予定の「嬉野温泉駅」

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現在のように「座学だけじゃなくて、フィールドワークをしよう」という方向性になったのは、山本先生の想いからですか。

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そうです。子どもたちが全然まちに足を伸ばしてないんですよ。授業の中でも、一言目に言うのは「嬉野には何もない」と。進路はもう「嬉野から出ていく」と。それを聞いて「これはまずい」と思いました。

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嬉野には何もない……?

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「嬉野」高校の「観光」コースにいるのに……。

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将来、観光業の仕事をしたいから入学しているにもかかわらず、まず地元のことをよくわかっていない。「おかしいやろ」と。

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――これはたいへんな問題ですよね。

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ぼくは親がそういう話をしていないのかなー、と思いました。あと、高校生の頃って、社会との関わりってあまりないじゃないですか。学校と家の往復で、塾に行くぐらい。このへんはアルバイトも禁止ですからね。

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――嬉野高校の生徒にとって、もっとも身近な「社会」である、嬉野のまちとの関わりは重要ですよね。

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外から見ている人からすれば「こんなにいいものあるやん」って、思えるんですけどね。ぼくも東京から嬉野に来て、いろんな人といろんなことを話したり、まちを歩いたりしたことで嬉野の良さがわかりました。

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嬉野の良さは「人」である

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山本先生は、嬉野の良さってどういうところだと感じてらっしゃるんですか?

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「人」だと思います。

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――おお、即答。人ですか。

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観光資源って、どこにでも「モノ」としてあるんでしょうけど。「人」はそうもいかないじゃないですか。東京から来た私を受け入れてくれたのも、嬉野の「人」ですし。

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赴任当時からそのように思われていたんですか。かなり最先端の考え方ですね。今でこそ、観光業界の方が「暮らし観光」とか「日常観光」とか「人に注目する」と話し始めましたけど。僕らが嬉野に来た12年前に、そんな発想はなかった。

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当時は昔からの考え方が強かったですよね。耳にする観光の話が「いい時代」の話ばっかりで。団体のお客様がたくさん訪れた時代の話ばかり。今の嬉野を歩いても、そんな状況ではないじゃないですか。

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――地元の話が、今にはない昔のにぎわいの話ばかりというのは……。聞かされる方はしんどいかも。

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団体さんがお酒を飲みながら、大勢でワイワイ飲み歩いて、いろんなお店に行くという話をよく聞きましたが……。今の若い人はもうそんな観光客の姿は見たことがないわけです。

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ぼくが嬉野に戻ってきた12年前は「リーマンショック」の影響があって、さらに景気が落ち込んでいる時期でしたから……。正直、旅館大村屋が倒産するかしないかという状況で帰ってきましたからね……。嬉野の賑わいが「底」と言っていいくらい、落ち込んでいた時期でした。

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――そんな状況の嬉野で魅力は「人」だと気づいていたというのは、かなり先を行く発想だったんでしょうね。


座学ばかりだった授業をどう改革したのか

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――座学ばかりの授業を改革するのは大変だったと思うんですけど、どこから始めたんですか?

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最初は嬉野の観光協会の方にお願いしました。「嬉野の観光人材育成のためには、学校の教員では素人なので難しいです。まずはお仕事をください」と。

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――スタートはそんな感じだったんですね。

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もともと、嬉野商業高校が、嬉野高校として総合学科の高校に生まれ変わる際に、地元の方から「観光の人材育成のための学科を作ってほしい」と要望を受けていたんです。だから、協力してくれましたよ。

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――嬉野で観光人材を育成することは、市民の望みでもあったわけか。

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それで生徒たちに売り子さんとか、スタッフとして働くお仕事をくださるようになって。そこからですね。地域とのかかわりができたのは。

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山本先生のおかげで、嬉野の商店街の祭りは嬉野高校の生徒さんが手伝うというのが恒例になりましたよね。

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――生徒さんはどんなことをされていたんですか?

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最初は受け身で仕事をいただく形だったんですけど、信用していただいてからは、高校生側から企画を持ち込むようになりました。「高校生がこんなことをやりたがっているんですが、どうですか」とか。

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――お祭りで高校生の企画ですか!面白そう。

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ブースを一つもらって「じゃんけん大会」とか「目隠ししてうまい棒の味を当てましょう大会」とかやるんですよ。で、大人を呼ぶ目的だったのに、子どもしか来ない。

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それも勉強ですよね。

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――そのような活動を通じて、地域との関係性を築き、座学だけだった授業を改革していったんですね。

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ただ、旅館の皆さんとはインターンシップでお世話になるくらいしか、関わりを持つチャンスがなくてですね……。そんなときに、北川さんがやっている「スリッパ温泉卓球大会」の話を聞いたんです。

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嬉野温泉スリッパ温泉卓球大会:2010年3月~2018年3月に毎月行われていた交流目的の卓球大会。旅館vs宿泊者で、ラケットには旅館ならではのスリッパを使用。北川さんの呼びかけで、嬉野温泉の旅館及びホテルの有志が集って開催していた。

――「スリッパ温泉卓球大会」の話を最初に聞いたときはどう思いました?

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「なんじゃこりゃ」と。でもその「なんじゃこりゃ」ってのが、大事だと思うんですよ。「ふうん」じゃダメで。

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毎月盛り上がっていたスリッパ温泉卓球大会

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スリッパ温泉卓球大会のおかげで、ぼくを認知してくれたんだなあ。高校生を連れてきてくれましたよね。

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何か企画を見つけたら「行ってきなさい」とは言っています。そして「何をしているか見てきなさい」と。そして「マネできるものはマネして取り入れよう」と。オリジナルのアイディアが出なかったら、とりあえずパクるのって大事だと思うんですよね。

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山本先生がフィールドワークを通じて伝えたいこと

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――「フィールドワーク」を通じて、高校生たちにどんなことを伝えてこられました?

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「人と関わりなさい」ということですね。子ども社会しか分からない子が、高校生の間に大人の皆さんと関わるのが大切だと思うんです。

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――関わりがあると、気づくこともあるでしょうしね。

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たとえば、北川さんと話して、嬉野観光の現状を聞く。そして「じゃあ、どうすればいいか」と考える。そのようなやり取りを積み重ねていくのが大切です。そして、最終的に嬉野に何か貢献できることがあればやる。外へ出るにしても、嬉野のことを誇りに思っていてほしいんです。それが、伝えたいことの土台ですね。

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――高校生に北川さんと接点を持たせたいな、と思ったのはどういう理由だったんでしょうか。

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ぼくが北川さんが気になったのは「嬉野を変えていかないとダメだ」という意志で、動いてらっしゃるのを見たからですね。嬉野の現状を見て、斬新な発想で動かれているので。私としても、そういう方が協力していただけると助かるんです。北川さんの姿を見せさえすれば「今の世の中は、こういうことが大事なんだよ」と教えられる。

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いいですね。いい「北川健太の利用の仕方」ですね。笑

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私と北川さんが話す内容が一緒だとしても、伝わり方が違うんですよ。私が話しても「うざい~」「わかってる~」となりますが、プロである北川さんが話すと「先生が言ってたことはホントだったんだ」となるわけです。

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――そうそう。伝わりやすさという面において「誰が言うか」はめちゃめちゃ大事です。

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それに、そもそもまちづくりやビジネスに関して、教員は素人なんですよ。知ったかぶりをするのではなく「助けてください」とお願いをしたほうがいい。でも、教員は頭を下げるのが苦手な人が多いんです。お願いができない。逆にお願いするときは、全部丸投げ。そういう傾向がある。

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――たしかに、そういうイメージはありますね。山本先生は、どのようにお願いをしていったんですか?

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協力していただけるところには「生徒に遠慮しないでください」と伝えました。「ダメなら、ダメと伝えてください」と。「生徒が泣いてしまうことがあっても構いません。あとのフォローはしっかりやりますので」と。

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――そこまで言ってもらえると「丸投げ」という印象はないでしょうね。

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最近は、インターンシップだと、どうしても「お客様」みたいな扱いになってしまうのが気になっています。面倒を見ていただくような感じで、仕事の大変さをあまり実感せずに帰ってくる。だから、インターンシップじゃなくて、アルバイトと言う形がいいんじゃないのかなと。

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――働く厳しさに触れてほしいんですね。

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そのまま就職する生徒さんも多いでしょうし、社会との関わりを事前に体験しておくのは重要なことですよね。

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いつも温泉街にいるけど、普段何してるの?

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――山本先生を嬉野温泉街でよく見かけるんですけど、何をされているのかが気になっているんです。

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大塚さんは取材でもう嬉野に3回来てもらってるんですけど、3回中2回は偶然に会っていて。残りの1回が今日。「山本先生が気になる」と言われて「世の中には教室にいない先生もいる」って紹介したんですけど。笑

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ヤバいじゃないですか!

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ヤバくないでしょ、別に!笑

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まあ、外の目も気にはしますよ。「何やってるの?」と言われることもあります。

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何やってるんですか、逆に。

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……可視化しないとダメですか?

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――教えてください。笑

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温泉街にいるときは、いつも生徒と来ています。たとえば、今日は金曜日だと。「金曜日のこの時間の人出は少ないな」とか肌で感じるわけです。チャンスがあればお店に入って、最近のお客さんの入りはどうだとか、気になることを聞きなさいと言っています。

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――アポなしでいきなりいろいろ尋ねるのは難しい面もありそうですが……。

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そうです。アポなしだと話を聞けることもあるし、聞けないこともある。そういう体験をして「本気で話を聞きたかったら、アポを取らなきゃダメだ」と学ぶわけです。そうやって、社会と接することで、ヒントや答えを探していく。だから、毎回のまち歩きに具体的な「目的」はありません。

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――目的のないまち歩き、って学校的にはなかなかやりづらそうですけど。

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「今日は何をするから外に出る」というのを、具体的にちゃんと表さないとダメというのは、日本の教育の良くないところだと思います。まち歩きって、目的もなく出てきて、ヒントを探しに行くことも大切だと思うんですよ。

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――たしかに、まちを歩く前から目的を無理やりつくると、視野が狭まりますよね。

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何もなくても、何か見つけては帰ってくるんですよ。「いつも気さくに話してくれる、あそこのおじいちゃんが今日は元気なかった」とか。「お菓子もらった」とか。「誰にもらったんだ!」と聞いたら、「ナントカさん」と。そこから、関係性が始まることもあるわけです。

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なるほど。そうやって、山本先生が子どもたちを外に連れ出さないと、まちの人との関わり合いがないわけですもんね。

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そうですね。「自分たちで出なさい」と言っても、基本的にはできないです。機会をつくってあげないと、思うようにはいかないですね。

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いざ外に出てみると交流を楽しめる生徒たち

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生徒さんを外に連れ出し始めて「よかったな」と思うことはあります?

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やってみると、「意外と自らコミュニケーションをとれる生徒が多いな」ということですかね。

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――いざやると、意外とできちゃうわけですね。高校生も。

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学校ではモジモジしてるように見える子がいるんですけど、同級生がいるから自分を隠している部分があるわけです。出しゃばると「あいつマジメぶってさ」という空気があるみたいで。

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まあ、たしかに。高校時代なんてそうですよね。

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――大人の世界でコミュニケーションをとることで、学校では見せない輝きを見せる子がいるんですね。

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そうです。実際に行ってみると「あ、俺が口を出さなくても大丈夫だな」ということがよくある。集団の中では目立たない子でも、自分たちで勝手に楽しそうに大人と喋っている。そういう姿を見ると、ほっとしますね。

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めちゃめちゃ大事なことだなあ……。

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――逆に「できない」という子もいますよね。

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そういう子の場合は、先に根回しをします。「今度来るうちの学生はこういう子なので、こういう感じで喋っていただけると助かります。こういうテーマで話そうと思ってきますので、よろしくお願いします」と。台本をつくっておくんです。

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そういうこともされてるんですね。すごいなー。

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――なるほど。大失敗するとトラウマでしかないですもんね。

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できない子に丸投げするのは厳しいので。「私にも大人の人がちゃんと対応してくれた」という経験は、その子にとっても自信になるんです。それがきっかけで変わる子もいるんです。

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「どうせ」と言うのはやめよう

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山本先生のそういうスタンスは変わらず、この12年やってきているわけですか。

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変わらないですね。変えられないですし。今やっていることが今の時代に合ってるかどうかも確認もできないですし……。

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時代にはものすごく合ってると思いますよ。自分のスタンスを変えずにやるのも大変でしょう。

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そうですよ。なかなか私は上が思う通りのことはしないので……。現場ではうまくいってて、生徒に価値のある機会が与えられていたとしても、上の言う通りにできていなかったらダメ。

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そういうことって、まちづくりにも当てはまりますよね。まちの中のいろんな観光協会や組織って、大きくなりすぎてて意見が言いづらくなるんですよ。自分一人が発言しても、何も変わらないだろうって。小さなグループに分けて、それぞれに権限や役割を持たせると意見が出てくるんですけど。

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会議に呼ばれることがあって。私はそういう場にも生徒を連れて行くんですね。で、先輩方の前で言いたいように意見を言う。生徒も子どもの立場で意見を言うわけです。すると、やっぱり踏みつぶされるパターンが多い。「今まで通りでいいんだから、余計なことをするな」という無言の圧力を感じることもあります。新しいことをするのは大変ですよ。

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ずっと戦い続けているんだなあ。

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子どもたちも大人のそういう姿を見ると「こりゃダメだ」と気づくわけで……。

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まあ、でもそれを見せるのも一つの勉強なのか……。

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見せたくないですけどね。「先生、私たちが頑張っても意味ないよ」と思う生徒もいると思います。でも、それでもね「言うべきことは言うんだ」「会議の中に意見を投げ込むんだ」と話しています。「私たちだけは『どうせ』と言うのはやめよう」って、伝えています。

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すごくよくわかるなあ……。

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言うだけ言って、敵が増えるかもしれない。でも、その分絶対味方も増える。

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……すごい。ぼくと同じような感じです。ぼくも「温泉スリッパ卓球」って自分で始めたんですけど。「温泉スリッパ卓球」はぼくの私有地でやってるんです。実家のガレージでまちおこし。

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北川家のガレージで行われていた

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それまでは、いろんな企画を提案しても「ダメダメ」って感じで。観光協会とか行政と一緒じゃないとまちおこしなんてやっちゃダメなんだろうと思ってたんですけど。「自分でやっちゃえばいいじゃん」と気づいたんですよね。

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――たしかに。この連載も「勝手にまちおこし」ですよね。笑

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そうそう。まちのことは「行政がやるもの」「観光協会がやるもの」という思い込みがありますけど、それは良くない。欧米だと、まちづくりは地元の経営者がやるんです。

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たとえば、ニューヨークのセントラルパークの維持管理をする会社は周囲で不動産を持っている人たちが作った民間団体なんです。しっかり管理して、地域の資産価値を高めれば、周りの不動産の価値も上がるわけじゃないですか。

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▲参考記事

――たしかに。そっちの方が、まちづくりのモチベーションは上がりそうですね。

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日本って「行政」や、何らかの「行政っぽい仕組み」の上でまちがつくられるから、前例踏襲型になりやすいんですよ。顧客の満足度よりも、自分たちの仕組みや前例が優先されちゃう。そこは地方のとくに良くないところだなって、思うんですよね。

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は・げ・し・く、同意です。

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これからの嬉野の魅力はどうつくる?

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――嬉野の魅力って、どうやってつくられていくんでしょうね。

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やっぱり大事なのは「人」ですよ。モノが売れて、いろんなコトが体験できるだけじゃダメなんでしょうね。これまで外国人旅行客が「モノ」や「コト」にたくさんお金を落としてくれたからよかったけれど。そんなことばかりしているから、日本人が離れてしまった。

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日本の地方の観光地は、どこも似たような歴史をたどっていると思います。まずは団体客の時代。その後は、団体客が落ちてインバウンド。そして今、インバウンドもなくなりました。「Go To」はある意味ドーピングのようなものですしね。

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――「Go To」がなくなったら、また閑散とするわけですもんね。

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この状況で強いのって、もうハード整備とか、お金かけて云々じゃないんですよ。山本先生のおっしゃる通り「人」ですよ。だから、ぼくの中で一つの答えが「暮らし観光」。観光客と地元の人が関わり、愛着を持ってもらう。そして、また来てもらう。そんな関係性をつくらないといけない。

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――そういう発想のもとで、イベントをされてますもんね。

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観光客と地元の人が一体化できるような、食のイベントや、音楽のイベントをやったりしています。

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この前、北川さんの食のイベント「逸品一会」に生徒を連れて行きました。彼女たちの人生の中で、非日常的な時間を過ごしたと思います。

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逸品一会:佐賀の食品メーカーで構成される「佐賀逸品会青年部」のこだわりの逸品とそのアレンジした料理と佐賀のお酒を楽しみながら佐賀の食文化を学べるイベント。

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彼女たちにとっては非日常な時間だったかもしれないけど、ここ大村屋は彼女たちの日常である嬉野にあるわけです。

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そうですよね。彼女たちも「またあのイベントに行きたい」と言っていたんですが、それもう彼女たちの中で「また特別なものが食べられるから」とか、そういう理由ではなくて。自分が普段経験できないものが、あの空間にあると判断しているみたいですよ。

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それはいいことですね。嬉しいなあ。ぼくも高校時代までは「嬉野には何もない」と思っていたんです。でも、探せてなかっただけだなと思います。実際に、自分で一歩踏み出せば、面白い場所もあったかもしれないし、面白い人とも出会えたかもしれないなと思うんですよ。

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――高校時代にそんなこと考えないもんなー。

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大村屋が音楽のイベントとか、いろんなイベントをやっていることを地元の高校生にも知ってほしいですね。東京に出た人でも「嬉野も面白いことやってたよね」って思い出してほしいし、「住みながら遊ぶと思うと、嬉野もいいところだな」とか思ってくれたらいいですね。

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▲嬉野ディスコなんてものもありました

――「嬉野には何もない」という話からは、大きな違いですもんね。

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「何もない」じゃなくて、住んでいるうちから「楽しいことは自分でつくろうよ」って思いますね。楽しいことって、人から与えられるものじゃないんですよ。そういうことを促せる、山本先生の考えは本当に素晴らしいなと思います。

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――こうやって、日常的に嬉野の温泉街に高校生がウロウロするようになれば、まちも元気になりますよね。

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何気ない通りでも、若い子たちがいっぱい歩いているだけで活気があるように見えますからね。若い人が平気に買い食いをして、歩いて帰っている姿を見たいな。

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そのためには、それぞれのお店や人の魅力も含めて、情報発信をしていかないといけないでしょうね。今、嬉野商店街は若い20代~30代の人が店をちょこちょこ開き始めているので。まちも世代の循環ができるといいですね。

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――嬉野の今後を担う若い力に注目ですね。本日はありがとうございました!


嬉野高校が嬉野を活気づける

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嬉野高校の山本先生。いったいどんな先生だろうと思っていましたが、嬉野の未来を見据えたチャレンジを続ける、とっても生徒想いなかっこいい先生でした。「暮らし観光案内所」にぴったりの方だったように思います。

今後も嬉野高校の生徒たちの活躍に期待したいですね。「嬉野温泉 暮らし観光案内所」次回もご期待ください。


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