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【書評】ポール・オースター『ムーン・パレス』は、村上春樹好きにおすすめ。

ロッシーです。

ポール・オースターの『ムーン・パレス』を読みました。

ひと言でいうと、「良かった!」です。

では、どこが良かったのか。それを分かりやすく説明することが、書評の本来の役目です。

しかし、逆説的なのですが、良い小説ほど、「どこがどう面白かったのか」を人に説明することが難しいものです。

ダメな小説や退屈な小説については、いくらでも言葉が出てくるのに不思議なものです。

この小説も同様で、何が良かったのかを言語化することが非常に難しいです。

Amazonに記載された簡単なあらすじは、以下のとおりです。

人類がはじめて月を歩いた夏だった。父を知らず、母とも死別した僕は、唯一の血縁だった伯父を失う。彼は僕と世界を結ぶ絆だった。僕は絶望のあまり、人生を放棄しはじめた。やがて生活費も尽き、餓死寸前のところを友人に救われた。体力が回復すると、僕は奇妙な仕事を見つけた。その依頼を遂行するうちに、偶然にも僕は自らの家系の謎にたどりついた……。深い余韻が胸に残る絶品の青春小説。

確かにこのとおりのストーリーなのですが、このストーリーだから面白いのかというと、そういうわけではないと思います。

ストーリーの本筋と関係のない描写であるとか、文体であるとか、その他混然とした何かが相まって、「総合的に」面白かったとしか言いようがありません。

私の言語化能力の低さはさておいて(笑)、とにかく読んでもらえれば面白さが分かると思います。

書評的にはこういう「読めばわかるさ」的なのは一番ダメなんでしょうけどお許しください。

こういうタイプの小説で似ているのは村上春樹の作品です。

「なんだかよく分からない。どこが良いのか説明しにくいのだけれども面白い。」

村上春樹の作品と、この『ムーン・パレス』にはそういう共通性があります。

実際読んでいて、「なんか村上春樹の小説を読んでいる感じだなぁ」と思ったことは多々ありました。

「簡単には分からない。そして面白い」

そういう小説が私は好きです。

分かるということは、自分の既存の思考の枠組みに置換することができるということだと思うのです。

それは確かにスッキリはするのですが、もう一度読みたい、もっと知りたい、という欲求を惹起することはありません。

でも、分からないのに面白いとなると、

「なんで分からないのに面白いんだろう?」

となって、また読みたくなる、探求したくなる。そういうものだと思うのです。

おそらく、またいつかどこかでこの小説を読むことになるのでしょう。

そんな風に思える小説に出会えることが、読書好きにとっては一番幸せなことなのかもしれません。

最後までお読みいただきありがとうございます。

Thank you for reading!

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