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2023年美術鑑賞記録

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2023年に見た美術展色々
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#写真

【微粒子を吸い込んで生きている】赤瀬川原平写真展「日常に散らばった芸術の微粒子」SCAI PIRAMIDE

【微粒子を吸い込んで生きている】赤瀬川原平写真展「日常に散らばった芸術の微粒子」SCAI PIRAMIDE

赤瀬川原平さんの自宅から未公開の4万点ほどのリバーサルフィルムが出てきたそうだ。撮影期間は1985年〜2006年。

中古カメラ病から始まり、トマソン、路上観察、考現学などなど、赤瀬川さんの芸術活動の後半生を語る上でカメラと写真は外せない。
私も写真集「正体不明」が赤瀬川さんとの出会いである。
1996年の受験勉強で訪れた図書館でその背表紙を見つけた。

ネオダダやアンデパンダン、千円札裁判、美学

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【展示室で深呼吸】被膜虚実/Breathing めぐる呼吸 MOTコレクション 東京都現代美術館

【展示室で深呼吸】被膜虚実/Breathing めぐる呼吸 MOTコレクション 東京都現代美術館

東京都現代美術館。企画展の大行列をよそに建物の奥へ進むと現れるコレクション展示室では今年度最初の展示が始まった。

今回は新所蔵品をお披露目と80年代後半からの作品を集めた「被膜虚実」という1階の展示、人の呼吸すなわち大気や空気、風をテーマに「Breathing めぐる呼吸」と名付けたの3階の展示に分かれている。

「被膜虚実」

三上晴子氏のものものしい作品が第一室に。
三上晴子氏の活動や作品を

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【なんでもない特別】「前衛」写真の精神: なんでもないものの変容 千葉市美術館

【なんでもない特別】「前衛」写真の精神: なんでもないものの変容 千葉市美術館

千葉市美すごい…としか言えない研究と展示。良かった、すごく良かった。

これを写真美術館では「ない」ところがやった事に意義があるし、東京都写真美術館でやった「アヴァンガルド勃興 近代日本の前衛写真」も良い予習になった。

あそこで、噛み砕けなかった部分(施設の広さの問題だと思う)を千葉市美に解釈してもらった感。
シュールレアリスム、ダダ、ネオダダ、の流れが一気に飲み込める。

【アジェから始まるス

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【展覧会3本立てを見る】セレンディピティ、レトロスペクティブ、古寺巡礼 東京都写真美術館

【展覧会3本立てを見る】セレンディピティ、レトロスペクティブ、古寺巡礼 東京都写真美術館

セレンディピティ 

この言葉は好きだ。
ちょうど一年前はメメント・モリというテーマで展示をしていた写真美術館。真逆に打って出た感はある。いわゆる所蔵品の中からテーマに沿った作品を魅せるコレクション展。

中でもグッと来たのは中平卓馬の作品群である。
「きわめてよいふうけい」という言葉を残した氏の視点は発見に満ちている。鳩の写真。

どこにでもいるのだけど、つい惹かれてしまうのはわかる。なんだろう

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【モネとタレルに試される目】直島・地中美術館 美術をめぐる旅5

【モネとタレルに試される目】直島・地中美術館 美術をめぐる旅5

直島・地中美術館。ここはモネとジェームズ・タレル、ウォルター・デ・マリアの3作品のみで構成されるとても贅沢な美術館である。

【沢山あるけど全部違うモネ】

モネのための部屋、って一体どうなのだろうと思っていたが、その部屋に入って安藤忠雄がこの建物を作りたかったのか腑に落ちてしまう。
展示品が変わることはないので光も壁のサイズも絵のための比率になっている。

モネの睡蓮は本当に日本に枚数がある。

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【プログレッシブなプロヴォーク】挑発関係 中平卓馬×森山大道 神奈川県立近代美術館 葉山

【プログレッシブなプロヴォーク】挑発関係 中平卓馬×森山大道 神奈川県立近代美術館 葉山

森山大道と中平卓馬。
この2人を同時に取り上げた展示はおそらく過去無いそうだ。

森山大道氏、中平卓馬氏がそれぞれがゆかりのある葉山を写した写真を、ここ神奈川近代葉山で展示する意味は深いだろう。

今回、展覧会担当学芸員さんのギャラリートークに参加をした。
展示を企画し、作家と繋がる担当者から展覧会の話を聞くのは物凄く面白い。一通りの解説だけに留まらず、熱い思い入れも垣間見えて嬉しくなる。
展示作

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【20年弱の時を超えて】本歌取り 東下り 杉本博司 松濤美術館

【20年弱の時を超えて】本歌取り 東下り 杉本博司 松濤美術館

まず「本歌取り(ほんかどり)」って何かね?と思ったところ公式HPにはこんな記載が。

ほほぅ!なるほど。
今で言うとオマージュとかリスペクト的な言葉の感じか。リミックスかな。
歴史好き小6長男に「『本歌取り』って知ってる?こういう意味でさ」と話した時に
「令和って元号もそういう感じで古い和歌からの引用だったよね。近いね」
と言われて、あ!そっか!と妙に納得。

作家 杉本博司氏の認識について

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