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【優勝】圧倒的なプレゼンはどこから生まれるのか?~構成編~

――聴き手の心を動かさなきゃ「読みたい!」をつくりにいけません。聴き手の心のなかを想像して、プレゼンの構成を考えないとビブリオバトルでは勝てないのです。


人生は物語。
どうも横山黎です。

大学生作家として本を書いたり、本を届けたり、本を届けるためにイベントを開催したりしています。

今回は「圧倒的なプレゼンはどこから生まれるのか?~構成編~」というテーマで話していこうと思います。





📚地区大会で優勝したプレゼン

先日開催された全国大学ビブリオバトル茨城決選大会で、僕の紹介した本がチャンプ本に選ばれました。優勝を果たし、全国大会への切符を手に入れることができたのです。

ビブリオバトルとは、自分のお気に入りの本を5分間で紹介するプレゼンバトルのことで、リスナーはバトラーの発表を聴いていちばん読みたくなった本に票を入れます。最も多く票を集めた本がチャンプ本になるというわけです。

高校生の頃から公式戦に参加している僕は、今までに2度全国大会に出場することができていました。しかし、そのどちらも惜しい結果で終わってしまったんです。

大学4年生の僕にとって、泣いても笑っても今年が最後。ラストイヤーを有終の美で飾りたいという思いが強くあるのです。そんな情熱を握って、ビブリオバトルに挑んでいるわけですが、晴れて、大学大会、地区大会で優勝することができました。

3度目の全国の舞台へ駒を進められるのです。



地区大会での発表を見て、ありがたい言葉の数々をいただきました。YouTubeで配信もされていたしアーカイブも残っているので、見てくれる知り合いが少なくないのです。

「おめでとうございます!」
「あっという間に時間が経過していました」
「読んでみたくなりました」
「魅力的で圧倒的なプレゼンでした」

……嬉しい限りですね。

さて、優勝することができたわけだし、聞き手に読みたいと思ってもらえるような、魅力的で圧倒的なプレゼンをすることができたことに間違いはないといえるわけですが、情熱だけでそんなプレゼンはできないわけで、今回はそのからくりについて話していこうと思います。

圧倒的なプレゼンはどこから生まれるのか。

結論からいうと、「準備」です。


📚圧倒的なプレゼンの構成

以前にも、プレゼンは準備が9割みたいな記事を書きましたが、今回もそれを繰り返すような内容になります。ただ、僕がどんな風にプレゼンを組み立てていったのか、地区大会に対してどう向き合っていったのか、その体験をもとに語っていくので実践の伴った熱い話を展開していきます。

地区大会を優勝するくらいに圧倒的なプレゼンはどこから生まれるのか。まずはプレゼンの構成について語っていきますね。

ビブリオバトルは5分間で本を紹介する勝負ですから、基本的にはその5分間を上手く使った人が勝てるというゲームです。個人的な考えにはなりますが、その5分間のなかに山をふたつ、つくるべきです。つまり、聞き手の心が大きく動く瞬間を2回つくれ!ということですね。

地区大会で紹介したのは、似鳥鶏さんの『小説の小説』という本です。小説の常識を壊すような実験的な小説が4つ収録されています。この本を5分間で魅力的に伝えるにはどんな構成がいいのか、出した結論は次の通りです。

【オープニング】0秒~50秒
・夏目漱石『坊ちゃん』の書き出し
・『坊ちゃん』と全く同じ書き出しから始まる物語
・本の紹介

【山①】50秒~4分
・「無小説」
・既存の作品から文章や言葉を引用されてつくられた小説
・361回の引用
・作者が1文字も書いていない
・物語としても面白い

【山②】4分~4分50秒
・カバーのしかけ
・カバーを閉じたときの物語と開いたときの物語が全く違う
・途中は同じ文章なのに、最初と最後が違うだけで全く別の物語になっている。

【エンディング】4分50秒~5分
・紙の本ならではの体験
・感動と驚愕の実験的エンターテインメント小説


📚聴き手の心のなかを想像する

僕は基本的にしゃべって練習する人で原稿を書かないので、今初めて文章化してみました。こう整理すると、結構分かりやすいですね。

大学大会でのプレゼンもそうでしたが、本の紹介に入るまで1分程度つかみになるような内容を語ります。今回でいえば、夏目漱石の『坊ちゃん』の書き出しを口にするところから始まり、僕の紹介する物語の書き出しが、『坊ちゃん』と全く同じ書き出しであるという謎を伝えています。ミステリー小説のように、冒頭に謎を置いておくのです。それによって、聞き手は少なからず興味を持ってくれるし、謎を提示されたら解かれるまで気になって仕方がないので前のめりになって聴いてくれるのです。



謎の答え合わせをするように、【山①】では『坊ちゃん』と全く同じ書き出しから始まる「無小説」という作品を紹介していきました。『坊ちゃん』の他にも、芥川龍之介の『羅生門』、太宰治の『走れメロス』など、他の作品に見られる文章が登場することを伝え、謎解きの瞬間まで謎をつくりにいきました。しばしの沈黙を前置きに、僕は探偵のように謎解きを始めます。そこからは「無小説」の魅力をひたすら掘り下げていったのです。

そのときに大事なのが、いくつかある魅力をどのような順番で伝えにいくか。聞き手がそのときに気になっていることに答えてあげられるように、魅力を伝える順番も考えました。

分かりやすい例でいうと、僕が謎解きをして「無小説」の実験性が判明したあと、聴き手は物語の面白さについて気になるはずです。奇をてらったけど中身はまるでダメですでは読みたいとは思わないわけですから、全ての文章が引用されてつくられた小説も、物語としてちゃんと面白いんだよってことを最後に伝えたのです。



聴き手の心のなかを想像することが必要で、それを疎かにすると聴き手を疲れさせてしまう。本に対する興味や愛着も湧きにくくなってしまうんですよね。

ジェットコースターのようなものです。はじめに昇る時間があって、そこから急降下して、いくつかの山があって、最後に大きな山があって急降下して、もとの場所に帰ってくる。この順番の通りだから、乗っている人は十分に満足できるわけで、はじめから急降下したら恐怖だし、最後に大きな山と急降下がなければ楽しみきれないのです。

僕のプレゼンでいえば、最後の大きな山と急降下は【山②】のカバーのくだりですね。ほとんどの本、カバーにしかけなんてないわけですから、これに触れれば嫌でも気になってしまうものです。この記事の最後に僕のプレゼンの様子を収めた動画を貼り付けておくので、見てみてください。ジェットコースターの最後の大きな山と急降下の意味が分かると思います。



ビブリオバトルも、ジェットコースターと同じようにひとつのエンタメで、「謎」とか「わくわく」とか「面白い」が必要だと考えています。審査員が聴きにきてくれたお客さんであることからも、審査基準が「読みたいかどうか」であることからも、それはいえますよね。

聴き手の心を動かさなきゃ「読みたい!」をつくりにいけません。聴き手の心のなかを想像して、プレゼンの構成を考えないとビブリオバトルでは勝てないのです。逆をいえば、聴き手の感情に配慮することで、圧倒的なプレゼンを生むことができるのです。

長くなってしまうので、次回も同じく「圧倒的なプレゼンはどこから生まれるのか?」というテーマで話していきますね。次回は「練習編」です。当日までどんな風に練習を重ねていったのか、惜しみもなく語っていきます。最後まで読んで下さり、ありがとうございました。

20231108 横山黎



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