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#逆噴射小説大賞2020

2020年の逆噴射小説大賞の感想とか

2020年の逆噴射小説大賞の感想とか

「へ?」

 気がつくと私法被を着て、屋台に立っていた。前にBBQセット、フライヤー、鉄板が左から順に並んでいる。私の屋台だ。でも自分はいつからここで屋台を張ったんだ?さっきまでどこで何をしてたっけ?
 うーん駄目だ。何も思い出せない。とりあえず仕事中なら仕事に専念したほうがいい。
「えーらっしぇー、世にも珍しい金魚救済システムだよー。処理に困る金魚をオーダー通りに料理しますよー」
 アナウンスし

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逆噴射聡一郎先生からコロナビールが届いたぞ

逆噴射聡一郎先生からコロナビールが届いたぞ

おれのことは摩部甲介と呼んでくれ。

クリスマスプレゼントがあった。(文庫本は個人情報隠蔽用だ)

送り主は当然、この人だ。(送り状の抜粋)

そう、大賞の品だ。
いまからこいつをボロニアソーセージとやって、祝う。
計算サイトによればコロナ一本は2時間で抜けるそうだから、外出時間までに充分間に合うはずだ。
こいつらはじっくり呑み進める予定。
小説の続きは先の記事に書いた通り、読みたい人はじっくり待

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「蘭之助、もう吠えないのか」(21話)

(発端)

妖怪には目的があった。
若侍の魂を刈り取り、肉を喰らい、己の血肉とすること。妖怪に屈服した美しき侍のはらわたを味わい、かつての能力を取り戻すこと。一人分で足りなければ二人、二人で足りなければ十人。憎い仇に届くまで、果てなく喰らい、奪い続ける。蘭之助はただの、そのひとつめの贄でしかないはずだった。

己に依存させ、己の能力なしでは立ち向かえぬ強敵と立ち合わせ、一番いいところで能力を取り上

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そしてあの子はいなくなる

そしてあの子はいなくなる

 昼過ぎに玄関のチャイムが鳴った。
 家事を終えたばかりのアリアが玄関の戸を開けると、黒いジャケットを着た大男が立ち塞がっていた。
「ダイモン……」絞り出すような声でアリアは言った。

 茶と菓子をテーブルに置く。そばには、夫が買ってきた花が花瓶に生けられている。
 ダイモンはソファに腰を静かに下ろすと、ジャケットの胸をはだけた。
 アリアはそれを見た。
 むき出しの皮膚に、窪みが14。うち2ツに

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逆噴射小説大賞2020大賞、受賞

逆噴射小説大賞2020大賞、受賞

朝起きてツイッターを見ると通知があった。
大賞おめでとうございます!だと。
記事に飛んだ。
読んだ。

勝った。
しかもダブル受賞だ。
呑みたかったが買い物の予定があるので、仕方なくボロニアソーセージを齧りレモン汁を口中に垂らす。

栄光はおれのもの。
コロナビールはおれのもの。
コメントがとても嬉しい。
いくつか問題がある。

逆噴射聡一郎先生が、続きを読みたがっている。
サイバーパンク2070

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機械不良市街大戦〈マシンヤンキーシティーウォー〉

機械不良市街大戦〈マシンヤンキーシティーウォー〉

「10年早ェんだよ!」とは言った。
 だが10年後“から”、10年早く来るとは思わなかった。

 登校途中に落ちてきたデカい金属の中から出てきたのは三日前にボコった橋本。
「三沢ァ! 言われた通り10年早く来たぜェッ!」 
 顔だけ橋本で他は橋本じゃない。全身銀色2mのメタルボディに学ラン。
「何だテメー? シルバーでキメやがってよォ?」
 凄んだダチの吉田が奴の蹴りでブッ飛ぶ。3mの距離、橋本の

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『無限大穴』

『無限大穴』

落下し始めてから30分は経っていた。俺はまだ現実を受け入れられないでいた。

コンビニに煙草を買いに行く途中だった。目の前を歩くミニスカの女に見惚れていたせいで、道すがら蓋のないマンホールで俺は足を踏みはずしてしまったんだ。こんなバカな話信じられるか?

あろうことか俺の落ちたマンホールは、都市伝説でたびたび語られてきたあの悪名高い「無限大穴」だった。

悪い夢に違

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ルースター・マン

ルースター・マン

俺はルースターマンだ。
ルース・ターマンではない。ルースター・マンだ。
人間の身体に軍鶏の脳を移植。
闘争本能と身体能力を強化した、それがルースター・マン。
俺は軍鶏に酷いことをしやがる人間を取り締まっている。早速困ってる軍鶏からヘルプが来たようだ。
もうフラフラなのにまだ闘わせようとしてるようだな。
高く高く飛び上がるとシャモ・アイで現場を発見した。一直線に降下、軍鶏をけしかけてる人間の脳天に蹴

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第三回逆噴射小説大賞ふりかえり会を行いました。(次回は最終選考発表後)

第三回逆噴射小説大賞ふりかえり会を行いました。(次回は最終選考発表後)

次回の振り返り会は最終選考発表後に開催予定です。ぜひご参加ください。

※本記事は約12,000文字あります。

2020年11月29日に「第三回逆噴射小説大賞ふりかえり会」を行いました。二次通過作品の読書会をしたり、持ち寄った作品の読書会をしたり……楽しい一夜でした。このスイングドアを抜けたら、また撃ちあうことになる。そんなインクスリンガーの小さな休日でした。今回の読書会の様子を振り返りたいと思

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ジゴクダイバー 懲役100兆キロメートル

俺は

無限に

続く穴を

落ちていく。

【通告:覚醒せよ。30秒後に『鬼』と会敵。覚醒せよ】微弱な電流で目覚める。
「……おい、いまどのあたりだ」【「落下刑」執行開始から約10億キロメートル】「くそったれ」

周囲の景色は相変わらず異常な速さで更新される。アーマー無しでは死ぬほどの速度がかかっているから、当然だ。

【3

2

1

会敵】バイザー越しに視覚情報が補正。蜘蛛のような形の『鬼

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天の光は全てカニ

天の光は全てカニ

カニだ。俺の目の前で両断されたジョンウォン――親友だった――の上半身から血肉を啜っているそれは、悪魔でも火星人でもなく、カニだ。

『こちらステーション中央本部! 何が!」
「無数のカニに襲われている! 大型犬並のサイズ! ハサミが強力で装甲服が役に立たない!」

雲霞の如く押し寄せるカニの群れに、ジョンウォンに留まらず俺たち火星開発公社警備部隊員が次々と犠牲になっていた。

始まりは突然だったと

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牙に生え変わるとき

牙に生え変わるとき

 まず通帳を、次に結婚指輪をフロントガラスに投げつけた途端、リョーコは閃光と轟音にやられた。
 耳鳴りが遠ざかると、ゆっくりと目を開けて目の前を見た。
 銀行の窓という窓は消滅し、そこから黒煙が噴き出している。路上では数人が血まみれで倒れ、身動きひとつしない。
 バン!
 びくり、と飛び上がった。見る。運転席の窓、血の手形。髪と髭がぼうぼうの大男。全身黒く汚れている。
 目が合った。
 男がさっと

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長谷川家の決闘

長谷川家の決闘

 応接室に置かれた父の生首は、決闘だと息巻いていたあの時からは考えられないすまし顔で、なんだかとてもまぬけだった。

「私との決闘に臨む長谷川君の姿は、それはもう堂々としたもので実に立派でした」

 これが彼の得物ですと、父の上司は懐から古めかしい拳銃を取り出し、父の横に置く。その物腰は穏やかで、聞いた話とずいぶん違う。生意気な若造。口だけが達者。家族相手に唾を飛ばして愚痴る父の言葉は一面的なもの

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竜とロックダウン

竜とロックダウン

 台車で運んできた金塊を交差点のド真ん中にぶちまける。山と積まれた金塊の上に腰を降ろしてライフルを構える。五十メートル先にグリッチを伴って現れるが早いか、駆けてくる略奪者に向けて弾丸を撃ち放つ。命中。略奪者はロウソクの燃え残りみたいにグズグズとくずおれて消えた。

 俺は無線機に思いっきりがなり立ててやった。

「こちらフラグメントゼロ、『悪竜』だ。どうした! せっかく目につくところにお宝を置いて

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