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通訳ガイドのこぼれ話

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通訳案内士の経験からのエピソードや外国人案内に役立つ話をまとめてあります
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2021年10月の記事一覧

日本で盗難にあってしまった外国人

日本で盗難にあってしまった外国人

東京でアメリカ人の新婚さんをガイドしたときのことです。最終日、銀座の有名寿司店にお送りして案内の仕事を終えました。本当に幸せそうなカップルでした。

翌日、オフで自宅にいた時に一本の電話がかかってきました。私の下の名前を言ったきり無言です。でも発音から外国人であることはすぐにわかりました。英語で応対すると、きのう、お別れをした新婚さんでした。どうしたのか聞いてみると「自分たちがどこにいるのかわから

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初仕事を振り返る

初仕事を振り返る

もう何年も前の話になるけれど、初めて通訳ガイドの仕事をしたときのことを振り返ってみます。どんな仕事も同じかもしれないけれど、ガイドも準備が一番大切です。

通訳ガイドというのは、ほとんどがフリーランスで、その多くが複数のエイジェントに登録して、そこから仕事をもらいます。初仕事は、すでにコースも決まっていて、それに従って都内を一日案内するというガイド初心者向けの仕事でした。

それまでの経験は、会社

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ガイド仕事で身についた変な技

ガイド仕事で身についた変な技

一日だけのツアーを連日やるということは、毎日、はじめましての挨拶で違う人に会うということ。すると、自然に身についたことがある。「会った瞬間に人柄がわかる」だ。ガイドは、ある家族に密着して一日何時間も過ごすのである意味「家政婦は見た」状態。

夫婦仲がいいか悪いか、亭主関白かかかあ天下か、子どもといい関係を築いているか、わがままな子どもに振り回されているか、ガイドをしながら、そんなことを観察するのが

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ガイドと神社

ガイドと神社

通訳案内士のぶんちょうです。ガイドが一番行く場所はどこでしょうか。おそらく神社ではないでしょうか。ほとんどの一般的なツアーには、少なくとも一カ所は立ち寄り場所として神社が入っています。

ガイドになってすぐに研修で行くのも神社。そこで参拝方法の説明の仕方について実践練習をします。ですので、ガイドと名乗る人は誰でも神社について、その人専門の外国語で、それなりに説明できるはずです。

でも、神社の説明

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混浴温泉

混浴温泉

通訳ガイドのぶんちょうです。温泉が大好きで日本各地の温泉を巡ってきました。そのなかでも一番インパクトのあったのが青森県の酸ヶ湯温泉です。ここはヒバ千人風呂と言って、体育館のようなスペースに、プールのような巨大な総ヒバ造りの浴槽があります。160畳もの大きさがあるそうです。大きさだけでも圧倒されますが、さらにここは混浴です。

混浴と言っても脱衣所は別で、湯殿への入り口も別。要は、浴槽に男風呂と女風

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外国人の疑問

外国人の疑問

通訳ガイドのぶんちょうです。コロナの前はバリバリにツアーをしていました。その頃、ほぼ毎回受けていた質問です。「なんでみんなマスクしてるの?」確かにパンデミックでもないのに、冬から春先にかけて特に、街を歩いても電車に乗っても、多くの人がマスクしてましたね。日本の風物詩かも。

日本では当たり前のその光景でしたが、マスクは病気の重い人がするものと考える訪日外国人(特に欧米の人)には不思議なんでしょう。

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妥協しない人

妥協しない人

通訳ガイドのぶんちょうです。通訳案内士の仕事は普通、海外のゲストの観光案内するのですが、時々変わりダネの仕事が来ることもあります。その仕事はエイジェントから「ガイドしなくていいよ」と言われていました。「ガイドにガイドしなくていいよ、って一体何をすればいいんだろう」と思いながら、いつものように都内のホテルでゲストを待ちました。

そのゲストはある企業の有名人(アメリカ人女性)とご家族だったので、ちょ

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通訳ガイドのかばんの中身

通訳ガイドのかばんの中身

一日だけで完結するツアーの時の、通訳案内士のカバンの中身についてです。案内士の悩みのひとつは肉体的な疲労です。特に、歩き過ぎによる弊害が足へ、腰へ、肩へ、来ます。

だから、カバンは軽さにこだわっています。一番、軽いカバンを選んで使っています。毎日、同じカバンだと同じ身体の箇所が痛くなるので、リュック型にしたり、手提げ型にしたりと日によって変えます。

折りたたみ傘を買うときも重さ表示をチェックし

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日本文化 箸

日本文化 箸

なんとなく通訳案内士の試験を受けてガイドになりましたが、自分の生活と切り離せない日本文化は勉強していて本当に面白いものです。日常生活で使う食器や道具、自分の住んでいる家の造り、自分の好みの形、考え方。これらのルーツを知ると、多くのものが何千年、何万年も前の縄文時代にさかのぼり、時とともに変化してきたものだということがよくわかります。

例えば、私たちが毎日使っている箸、これは弥生時代に大陸から伝わ

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日本文化 箸置き

日本文化 箸置き

通訳ガイドのぶんちょうです。きのうの箸の話に続き、今日のテーマは箸置きです。英語でも、そのまま 箸+休みで chopstick rest と表します。可愛いらしい形や色の陶器の箸置きを見つけると、つい買ってみたくなりなす。外国人観光客にも人気のお土産のひとつです。

箸置きの歴史について少し調べてみました。きのうの箸の話に出てきましたが、箸は神様に食べ物をお供えする神事の時に使われたのが起源でした

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東京の変貌

東京の変貌

通訳ガイドのぶんちょうです。今日は東京の街についてです。コロナによるパンデミック(世界的流行)が起きるなんて露ほども思っていなかった頃、東京の街のあちこちをツアーで歩き回って感じていたのは、「東京再開発まっしぐら」。とにかく、どこへ行っても工事中ばかりでした。

駅では長いこと覆いが被せられ、駅の喧噪がかき消されそうなほどのけたたましいドリルの音が続きました。ある日、その覆いが取れると真新しい壁や

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ガイドの私のおすすめ場所 江戸東京博物館

ガイドの私のおすすめ場所 江戸東京博物館

通訳ガイドのぶんちょうです。通訳案内士として外国人観光客と一緒に行く場所のひとつ、江戸東京博物館(通称、江戸博)は個人的にも好きな場所です。場所は東京、両国駅からすぐ。JRでも都営地下鉄でも行ける便利な所にあります。

JRのホームからも建物が見えます。設計は有名な建築家、菊竹清訓で1993年に完成。この建築の好き嫌いは別として、とにかく圧倒されるのはその外観の巨大さでしょう。

ガイド目線で言う

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日本文化 ラッシュアワー

日本文化 ラッシュアワー

通訳ガイドのぶんちょうです。外国人観光客と一緒に行動を共にするのがガイドである私の仕事ですが、ラッシュ時の東京の電車に乗らざるを得ないことがあります。普段あまり電車に乗らない、特に欧米の方々は見知らぬ人と身体が接触するのを嫌がるのでラッシュはなるべく避けるのですが、その日は「それは是非乗ってみたい!」という反応でした。

そもそも、ラッシュ時の他人との接触はすごいレベルですよね。身内でもほとんどな

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伝統文化① なぜ歌舞伎役者は男だけなの?

こんにちは。通訳ガイドのぶんちょうです。

ガイド中に歌舞伎座の建物が目に入ると、必ず外国人観光客に説明するのが歌舞伎についてです。現存の建物は銀座・大阪、共に建築家、隈研吾氏の手がけたものでインパクトがあります。

歌舞伎ファンの方は結構たくさんいらっしゃる一方で、一度も歌舞伎を見たことがない方も多いと思います。外国人に聞かれるかもしれない歌舞伎のこと。一度は見ておくことをおすすめします。

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