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雑文ラジオポトフ

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2023年5月の記事一覧

口のいろちがうからこそ話しあう

口のいろちがうからこそ話しあう

シリーズ・現代川柳と短文 131
(写真でラジオポトフ川柳219)

 この世に「くちへん」に「色」と書く漢字はあるんだろうか。強引に表記すれば《口色》という一文字の漢字だ。これはむずかしい。あるような気もするが無いような気もする。「無い」とはっきり言い切れないのがやっかいだ。ひとまず読み方は《ショク》だろう。

▼これまでの「現代川柳と短文」は以下から!

われたまど全員見てる投票所

われたまど全員見てる投票所

シリーズ・現代川柳と短文 130
(写真でラジオポトフ川柳218)

 投票所は毎回ちがう場所に設定された。学校、市役所、歯医者の駐輪場、みかん畑の真ん中、ハンバーガー店の冷蔵庫の中。有権者はまず、今回の投票所がどこにあるかを探り当てることから始めねばならなかった。不思議なことに、それで投票率は著しく上がった。

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レクサスの窓で心臓手術中

レクサスの窓で心臓手術中

シリーズ・現代川柳と短文 129
(写真でラジオポトフ川柳217)

 日本製の高級車に乗ってわたしたちは会場を去った。しばらく走っていると、会場でなにが行われていたか、思い出せなくなった。そういえばお互いが相手にとってどんな存在だったのかもよくわからない。友人か、恋人か、親子か、ライバルか。燃費が悪い車種だから、そろそろ給油をしなければ。

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みんなにはひみつの水をありがとう

みんなにはひみつの水をありがとう

シリーズ・現代川柳と短文 128
(写真でラジオポトフ川柳216)

 自宅にウォーターサーバーを導入してよかったのは、どこのウォーターサーバー会社と契約しようかな〜、と頭を悩ませる時間が無くなったことだ。

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ひらがなのせいでいつものエンディング

ひらがなのせいでいつものエンディング

シリーズ・現代川柳と短文 127
(写真でラジオポトフ川柳215)

 息子の名前にはひと文字だけひらがなが入っている。カタカナにする案もあったが、結局ひらがなにした。そのひと文字が「ぬ」なのか「も」なのかはここでは書かないが、もしそれが「ヌ」か「モ」だったら、息子の人生は大きく変わっていただろう。

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進化したアルファベットにならないで

進化したアルファベットにならないで

シリーズ・現代川柳と短文 126
(写真でラジオポトフ川柳214)

 好きなアルファベットはPで、いちばん個性を出そうとしているQの直前にあるからだ。ユニークで変わり種で人気者であるQがそのポジションにいられるのは、とぼけるわけでもなく淡々としているPあってこそ、という気がする。

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欠けているところに点を打っていく

欠けているところに点を打っていく

シリーズ・現代川柳と短文 125
(写真でラジオポトフ川柳213)

 なにもない余白をそのまま受け入れること。それは、表現においてはむろんのこと、日常においても大切な考えだ。なにもない部屋の隅に観葉植物を置いてしまうようではだめだ。雑念や不安にとらわれず、あるがままを受け入れよう………あれ? 観葉植物って「葉」なの? 「用」じゃないんだ! 「観る用の植物」だと思ってた! これが雑念だ。

▼これ

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母音だけ取り出し船がこげるのか

母音だけ取り出し船がこげるのか

シリーズ・現代川柳と短文 124
(写真でラジオポトフ川柳212)

 かつて人間が天にも届く高い塔を建設しようとしたとき、言語の差異がネックとなり、計画はストップしてしまったと聞く。たしかに、「この石を向こうに運ぼう」程度なら身振り手振りでなんとか伝えられるかもしれないが、「11時から昼休憩に入ってお弁当タイムにしましょう。鰆の西京焼き弁当はクーラーボックスの中に、豚のしょうが焼き弁当は冷蔵庫の

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SUBWAYのWだよね、じゃあまたね

SUBWAYのWだよね、じゃあまたね

シリーズ・現代川柳と短文 123
(写真でラジオポトフ川柳211)

 SUBWAYを愛する者として、注文時の声の大きさには試行錯誤を重ねてきた。店員にぜったいに聴こえるように。しかしがなり立てるのは無粋。それはあたかも舞台俳優が声量を調整するような繊細さである。つまり、注文時、SUBWAYは舞台空間となっている。俳優はわたし。観客は店員。店員は同時に共演者でもある。

▼これまでの「現代川柳と短

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焦げているように見えたらおまえだよ

焦げているように見えたらおまえだよ

シリーズ・現代川柳と短文 122
(写真でラジオポトフ川柳210)

 こどもに見える店員が運んできたハンバーグは焦げていた。焦げ、というレベルを超えた、ただの黒いかたまりだった。仕方ないか、こどもだしな、と納得しようとしたが、こどもに労働をさせていいのだろうか、と、べつの疑問が頭をもたげる。あ、そうか。こどもに見えるだけで、こどもではないのかもしれない。もはや店員ですらないのかもしれない。物事は

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おれたちを絵に描いてから言いなさい

おれたちを絵に描いてから言いなさい

シリーズ・現代川柳と短文 121
(写真でラジオポトフ川柳209)

 虎はみずからを李徴と名乗った。もとは人間だったという。貧しさにあえいでいるだろう妻子をなんとかしてやってくれ、と、虎は頼んできた。え、虎の妻子を? 怖いよ。噛むだろ。わたしがそう言うと、虎は、いや、おれもとは人間だから、妻子も人間だよあたりまえだろ、と、あきれたような口ぶりで言った。こういうところが虎の、いや、李徴の嫌われる部

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流し目で起爆スイッチむっちむち

流し目で起爆スイッチむっちむち

シリーズ・現代川柳と短文 120
(写真でラジオポトフ川柳208)

 カチカチと音が聞こえる。時限爆弾だが、どこにあるかわからない。音は自分の焦りとともにどんどん大きくなっていく。カチカチ。カチカチ。むかし自分が修理したアンティークの柱時計の音によく似ていたが、あの柱時計は伯父の屋敷とともに炎に包まれたはずだ。音は鳴りやまない。

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動物を白くするのに忙しい

動物を白くするのに忙しい

シリーズ・現代川柳と短文 119
(写真でラジオポトフ川柳207)

 グリーンバックにホワイトアニマルズ。とくに英語で言う必要はない。白い動物を集めたのか、または動物を集めたあとまとめて白くしたのか。動物を集めたのはノアだ。ひょっとして、白いものが好きで、たまたまいま動物が写っているが、視線をうつしてみると大量の白い文房具があったりするのかもしれない。ホワイトステーショナリーズ。とくに英語で言う

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もうだれもいない梅林なのに、いま

もうだれもいない梅林なのに、いま

シリーズ・現代川柳と短文 118
(写真でラジオポトフ川柳206)

 梅林、梅肉、梅雨。以上が三大「ばい」であることは揺るぎようのない事実だ。しかしいま警戒すべきは四番目の「梅毒」である。いや、何番だとかはもう関係ない。急増しているのだ。決して軽く見たりせず、じゅうぶん気をつけてもらいたい。

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