見出し画像

焦げているように見えたらおまえだよ

シリーズ・現代川柳と短文 122
(写真でラジオポトフ川柳210)

 こどもに見える店員が運んできたハンバーグは焦げていた。焦げ、というレベルを超えた、ただの黒いかたまりだった。仕方ないか、こどもだしな、と納得しようとしたが、こどもに労働をさせていいのだろうか、と、べつの疑問が頭をもたげる。あ、そうか。こどもに見えるだけで、こどもではないのかもしれない。もはや店員ですらないのかもしれない。物事は自分の見たいようにしか見えないのだ。じゃあ目の前のこいつはいったいだれだ。いまたしかなのは、焦げたハンバーグがそこにあることだけだ。やがて、こどもや店員のように見えるそいつが「焦げているように見えたらおまえだよ」と言った。その店は半月後に食中毒を出し、つぶれた。

▼これまでの「現代川柳と短文」は以下から!


この記事が参加している募集

#朝のルーティーン

16,256件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?