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痔除伝

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とある肛門疾患の発症から完治まで、10年近くの戦いのまとめ。面白おかしく描きました。ぜひお付き合いください!
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#肛門周囲膿瘍

痔除伝 第十章 eve

痔除伝 第十章 eve

5月に入り、医師、上司などと相談をした結果、7月半ばの入院と、その翌日の手術を決めた。

入院日を決める診察の日のこと。通院時は時期が時期だけに、マスクの着用と来院時の手指消毒が義務付けられているのだが、院内で突然マスクを外した老人男性がおり、すかさずスタッフが駆け寄ってマスクの着用を願い出た。

すると老人は、

「息苦しいんだよ!オレを殺す気か!」

と、怒鳴りつけ、騒ぎ始めた。

どうやら、

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痔除伝 第九章 怒りの金曜日

痔除伝 第九章 怒りの金曜日

入院の1週間前から、実際にテレワークへの移行が始まり、自宅に職場のPCを設置する。

緊急事態宣言により、通勤電車に乗らなくて良い、人と会わなくて良い、ということも公に推奨された。

人前に出なくて良いということは、その気になれば、着替えなくてもいいどころか、髪をセットする必要もない。

仕事中に暑いと思ったら、こっそり放り出したままのおキャンタマちゃんに、氷嚢を当てることだってできる。

私は塩

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痔除伝 第八章 COVID-19 Killed the Conte Star

手術日が決まった。この時点では2月半ばだったのだが、予約の空きの関係で、4月後半の入院となった。かなり先の手術になるが、こればかりは仕方がない。

手術までの間、またアヌスに不調が訪れることもあったが、解決に向けて動き出していることを思うと、気持ちは明るかった。

3月はじめ頃に入院保険や傷病手当金、限度額認定証など必要書類のほとんどを集め、後は入院手術に備えて体調を整えていく。

これまでの人生

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痔除伝 第七章 modulation

痔除伝 第七章 modulation

「要するに、前回みたいに排膿してしまえば、一時的に楽にはなるけど、繰り返す。根本的に解決するなら、ここでは出来ないけど、大きい病院で手術ですね」

正直、そうだろうなぁとは思っていた。地獄司教(北の医者)もそんなことを言っていたし、ネットで調べてもそんなようなことが書いてあった。パワーはあえて名称を口にしなかったが、どうやら痔瘻というやつになってしまったようだ。

……なんだよ、痔瘻って。知らねー

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痔除伝 第六章

Interlude

痔除伝 第六章 Interlude

裏ナプキン密売人のもえさんと袂を分かち、私はつかの間の平和な日常を満喫していた。

アヌスが痛くない日常とは、それだけで光が溢れている。花の色は鮮やかさを増し、食事では繊細な風味や香りに気付き、ブスにも優しく振る舞えるようになった。

不自由を減らす事で気付ける喜びがある。そのことに気づき、健康、体調にこれまでよりも気を使うようになり、特にお腹の不調には気を配るようになる。お酒も多少量を減らし、飲

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痔除伝 第五章 CanCamとわたし

痔除伝 第五章 CanCamとわたし

翌日。職場に着くと、抜糸後はどうなのかとか、どうしたら肛門周囲膿瘍になるのかなど、どうしたって話題になる。慣れ切った職場ではみんな新しい話題に飢えているから、オペとか、抜糸とか、聴き慣れない疾患とか、そんな話題が刺激的なのだ。

私はそれに対し、お腹下しがちな男性に多いみたいで、なるかどうかは運みたいですよ、とか、抜糸後は生理用ナプキンで対処しろとか言われましたよ、と、なるべく明るく、笑い話に変換

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痔除伝 第四章 あの日出た粘液の名前をボクはまだ知らない

痔除伝 第四章 あの日出た粘液の名前をボクはまだ知らない

その後も、発作のように、苦しみが続いた。数ヶ月おきに辛い痛みと重みがやってくるも、1週間も経たずに消える。病院へは、行かない。

発作的に起こるつらさは、回を重ねる毎に強くなっていく。しかし、どうせ病院に行っても意味が無いと思うと、行く気になれなかった。見せ損、掘られ損である。

「見られても減るもんじゃない」という言葉があるが、目には見えない何かが、間違いなく減っているという手応えがある。

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