マガジンのカバー画像

これからの、小売の話をしよう。

157
ショップは、ただモノを"売る"だけの場所ではなくて。そしてお客様は"買ってくれる"だけの相手でもなくて。明日がくるのが楽しみになるような、そんなショップがそこら中にある世界につい… もっと読む
運営しているクリエイター

#ビジネス

「もっと、もっと」ではなく「ちょうどよさ」の時代へ

「もっと、もっと」ではなく「ちょうどよさ」の時代へ

「僕は『エレガンス』という言葉を "人に迷惑がかからない範囲の『ちょうどよさ』"と解釈している」。

この定義を聞いたとき、これまでエルメスに感じてきた心地よさの一端が理解できたような気がした。エルメスのアイテムは、主張しすぎることなく持ち主に寄り添う。声高にブランドを叫ぶことなく、モノの上質さによって見る側の心を爽やかにさせる。

中原淳一は、装いの意味は他人への配慮が大前提だと言った。

「身

もっとみる
「文章が苦手」派のお店に試してみてほしいnote活用法

「文章が苦手」派のお店に試してみてほしいnote活用法

「お店の発信にぜひnoteを活用してほしい!」
と話すと必ずと言っていいほど相談されるのが

「文章を書くのが苦手なんです…」

という悩み。

noteは文章のイメージが強いのか、文章を書き慣れていないことによって一歩が踏み出せない人も多いように感じています。

しかしnoteは「書く」だけでなく「まとめる」にも適したプラットフォームで、noteにまとめることによって他のSNSとの相乗効果も見込

もっとみる
大企業の挑戦が難しい理由

大企業の挑戦が難しい理由

ローソンのPBデザインについて、いまだにSNSで賛否両論が飛び交っています。
先月PBについてこんな記事を書いたところ思いがけず多くの方に読んでいただき、私の記事に対しても様々な感想をいただきました。

なかでも多かった反応は、やはりその視認性の悪さへの言及でした。

大企業の「挑戦」は顧客の不便を生む私自身はそこまで見づらさを感じていなかったのですが、これだけの人が見づらさを訴えるということは、

もっとみる
ローソンのPBデザインリニューアルは「これでいい」から「これがいい」への第一歩

ローソンのPBデザインリニューアルは「これでいい」から「これがいい」への第一歩

先月から徐々にローソンのPBパッケージが新デザインに切り替えられ、その変化の大きさにSNSでも賛否両論が飛び交っている。

▼リニューアル後のパッケージ例。ベージュで統一され、ひと目見ただけでは中身がわかりづらい。

若い女性を中心としたデザインに敏感な層からは「かわいい」「そのままでも暮らしに馴染む」と高評価を受ける一方、「視認性が低い」「シズル感が足りない」といった否定的な意見も多い。

ちな

もっとみる
「緊急事態」の今、お店の発信で取り組んで欲しいこと

「緊急事態」の今、お店の発信で取り組んで欲しいこと

昨日「緊急事態宣言」が出され、これまで以上に実店舗の運営が厳しくなってきました。
大手百貨店や駅ビルなどの商業施設も次々に臨時休館を発表しています。

アメリカではニーマン・マーカスの倒産を筆頭に、どの百貨店も支払いサイトの引き延ばしや買い付けのキャンセルを行うなど混乱を極めていますが、おそらく同じことがこれから日本でも起きていくはずです。

また商業施設が休業することによって、テナントとして入っ

もっとみる
それでも、ファッションの楽しみを絶やさないために

それでも、ファッションの楽しみを絶やさないために

昨日のnoteでファッション誌に求められる今後のコンテンツとして、おうち時間の楽しみ方がキーになるのではないか、という話を書いた。

3年以上前から書いている通り、私はファッションと外出には深い結びつきがあると考えている。
逆に言えば、出かけることが禁止されれば洋服が売れなくなるのは当然のこと。
すでに海外の小売系メディアはこうしたアパレル需要のダウントレンドにまつわる記事ばかりが並んでいるけれど

もっとみる
ブランドに「急成長」は必要なのか

ブランドに「急成長」は必要なのか

アメリカのD2Cバブルが、いよいよ終わりに近づいている。
昨年から一部のメディアでD2Cの失速が囁かれてきたが、Casperの上場時の株価が想像以上に低かったことが最後の一撃となったようだ。

今後、アメリカで「D2C」というワードで資金調達するのは難しくなるだろう。

「海外記事の雑感」でも書いたけれど、これは単に今まで必要以上にかけられていた期待が正常な状態に戻っただけとも言える。

この先2

もっとみる
外出自粛の時期に「店舗」ができること

外出自粛の時期に「店舗」ができること

※noteに関する言及箇所以外はすべてnoteプロデューサーとしてではなく、リテールフューチャリストとしての個人の見解です。

先週、政府から不要不急の外出を控えるよう声明が発表され、企業もリモートワークを推奨する動きが出てきました。

出張や旅行もキャンセルが相次ぎ、小売店、飲食店、ホテルなどリアルの場所を起点にサービスを行う企業は軒並み打撃を受け始めています。

特にこの2、3年はリアル店舗で

もっとみる
「チーム感」というブランド価値

「チーム感」というブランド価値

SNSへの反応はその投稿単体への反応なわけではない。
顧客の体験価値への満足度やブランドへの信頼が表出した通信簿なのだ──。

ファンコミュニティやSNSの話をする際、最近は『SNS以外』での振る舞いの話も含めた全体設計の話をすることが増えました。

そんな私の考えをまとめたnoteを書いたのがちょうど一ヶ月前のこと。

このnoteの中で成功事例として出したのがアンダーアーマーさんの取り組みです

もっとみる
店舗というメディアにしかできないこと

店舗というメディアにしかできないこと

店舗はメディアになる。
これは「小売再生」の中でダグ・スティーブンスも語っていたことだ。

私も百貨店で働いていたとき、ずっと「これから百貨店のライバルは雑誌になる」と考えていた。

「売る」という機能も「新しいものを紹介する」という機能も店舗の専売特許ではなくなった今、店舗に求められる役割は何なのか。

この数年、そのことをずっと考えてきた。

先週月刊koeの創刊イベントとして月刊koe編集長

もっとみる
@cosme TOKYOという「メディア」の本質

@cosme TOKYOという「メディア」の本質

1月10日、原宿駅目の前のGAP跡地に@cosme TOKTOがオープンした。店舗はその名の通り、@cosmeが運営している。

遅まきながら先日店舗に足を運んだところ、『これこそがまさにメディアとしての店舗である』と感銘を受けたのでそのポイントについて整理しておきたい。

「とりあえずここに行けばいい」という第一想起としての店舗@cosme TOKYOの売りは、通称「デパコス」「ドラコス」と呼ば

もっとみる
「美容誌化するファッション誌」の裏で起きていること

「美容誌化するファッション誌」の裏で起きていること

最近、女性ファッション誌が急激に『美容誌化』している。
もともと、ファッション誌と美容誌は完全に住み分けられてきた。

美容誌といえば、MAQUIA、VOCE、美的の御三家に加え、『美魔女』という言葉を生み出した美STや&ROSYなどアラフォー世代向けの美容誌も元気がいい。
書店の雑誌コーナーにいくと5、6年前には考えられなかったほど美容誌の面積が大きくなり、いい位置に棚が移動してきている。

もっとみる
ブランドの発信は「アシスト」を意識しなければならない

ブランドの発信は「アシスト」を意識しなければならない

『個人アカウントと公式アカウントをどのように使い分けるべきでしょうか』

誰もがメディアやブランドを簡単に立ち上げられるようになったことで、自分のアカウントとブランドの公式アカウントをどう使い分けるか悩む人も増えた。

そもそもどのタイミングで公式アカウントを立ち上げるべきなのか。
自分にフォロワーさえついていれば、公式アカウントは不要なのではないか。
アカウントを2つ運用するには、コンテンツが足

もっとみる
百貨店は出版社化する

百貨店は出版社化する

店舗はメディアになる。
これは約10年前、百貨店に勤務しながら自分の肌で感じたことだった。

『買う』だけなら検索から決済までオンラインで完結する時代、人がわざわざ店舗に足を運ぶ理由はそのキュレーションとコミュニケーションから生じる新たな学びに集約されると考えたからだった。

だからこそ、当時から私は『なぜモノを"売る"ことに固執しなければならないのだろう』と疑問を持っていた。

モノを売ってその

もっとみる