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記事一覧

筒井康隆論(序)

筒井康隆論(序)


はじめに
このテキストは「筒井康隆論」の序章にあたる部分です。
ミステリーのネタバレなど、ストーリーに触れている部分が数多くあります。その点諒解の上、ご覧ください。
※ストーリーに触れた部分があまりに多いので全体はkindle版として公開中です。
「筒井康隆論」

諜報
「コレラ」と『家族八景』自分の意志でやっていると思っていることが実は操られているだけなのではないかという感覚が筒井作品を貫いて

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表象としてのエッフェル塔

表象としてのエッフェル塔

表象としてのエッフェル塔を考える
19世紀の最期、当時の万国博覧会は、産業革命以降、国力の指標でもあった。
1889年のパリ万博時に、醜いと言われたエッフェル塔は、いずれ、取り壊す予定で建設された。
だが、電波の発見と放送技術の展開から、ラジオ放送ができ、そして、テレビ放送が確立され、それはパリ市民に不可欠な電波塔となり、その設計者ギュスターヴ・エッフェル(橋梁技術者)のモダーンな設計が理解され、

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アルフレッド・ヒッチコック試論

※初出/『文學界』(2021年9月号)

  イントロダクション

 この映画評論を筆者が書いたのはデビュー以前、およそ二八年前のことである。執筆時期や期間の詳細についてはもはやうろおぼえだが、テキストデータの末尾に「1993/1/13脱稿」と明記されていることは判断の頼りになる。
 おそらくは、一九九二年一一月ないしは一二月から当の脱稿日までのあいだの日々に書きすすめたのではないかと思われる。ち

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映画「タクシードライバー」の映像表現の研究 その1

映画「タクシードライバー」の映像表現の研究 その1

はじめに 1976年公開された『タクシードライバー』の映像表現を研究しています。『タクシードライバー』は、1976年公開のアメリカ映画です。監督はマーティン・スコセッシ。脚本はポール・シュレイダー。主演はロバート・デ・ニーロ。
 この映画の脚本家ポール・シュレイダーは、アラバマ州知事暗殺未遂を行ったアーサー・ブレマーが描いた日記「暗殺者の日記」に感銘を受けて、脚本を書き上げたといいます。
ブレマー

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【映画評】 エドワード・ヤン(楊德昌)『ヤンヤン 夏の想い出』『恐怖分子』『指望』。「白」と「赤」

【映画評】 エドワード・ヤン(楊德昌)『ヤンヤン 夏の想い出』『恐怖分子』『指望』。「白」と「赤」

     (冒頭の写真『ヤンヤン 夏の想い出』bunkamuraより)

エドワード・ヤン(楊德昌)『ヤンヤン 夏の想い出』(2000)(英題)YiYi a one and a two
英題のoneとは、とりあえずはヤンヤンの祖母、twoとはそれに続く世代のカップル、そしてやがてカップルとなるであろう次の世代のこととしておこう。

8歳の少年ヤンヤンの母親の弟の結婚式を境に、twoたちの歯車が狂い

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